世界を征する覇堺の拳   作:ガリアムス

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新たなオリキャラ登場。其の者の職業・スーツアクター

ケンガンアシュラ、アニメきましたね!

よく動くし、リアルな描写も良い感じ!

そしてケンガンアシュラの小説がもっともっと増えて欲しいのだ


第十七話 穴熊(あなぐま)

「…っはぁ!」

 

「涼君、結構出来るようになってきたね」

 

「ハァ…ハァ…照に比べたら、…まだまだだ!せめて…今より一分、以上…潜って、ハァ…!られ…ないと!」

 

「良い心意気だ、じゃあもう一回やるか」

 

「おうよ…!」

 

二人が二虎の知り合いの黒木(くろき) 玄齋(げんさい)の元に預けられてから、四十日の時間が過ぎた。

照は現在、海中を利用し奥義体得前に二虎から教わった、肺活量と全身の筋肉強化を行う訓練を、氷室に対して教えている。

 

《沖縄は晴れてる事が多いし、海も近いから此の訓練を活かしやすい。何より地上で鍛えた縦拳も、水中で行ってもっと速度が上がれば、必然的に威力も上がる。

 

…俺も浮々(うかうか)してはいられない。もっともっと強くなるぞ!》

 

水中組手の交錯の中で照は更なる飛躍を誓い、氷室との戦いを続けていく…。

 

* * * * * * * * * * * * * * *

 

「ハァ…ハァ…ハァ…!」

 

「お、お疲れ…さん…」

 

砂浜に打ち上げられた座頭鯨(ザトウクジラ)のように、砂浜に伏せた氷室と大文字型に身を投げる照。あれから二人は、体力が底を尽きるまで水中組手を繰り返した。其れもざっと三十戦ほど。

 

一戦あたりの平均潜水時間は三分程度。休憩を一分挟み、二時間近く戦っていた事になる。

 

「腹減った…」

 

「だなぁ…一応釣りで作った資金を削って、何か食べに行くか?」

 

「うん…塩辛い物が食べたいな」

 

「塩たっぷりの巨大握り飯、刺身丼、あとは…塩らぁめんという、奇っ怪な物…くらいだろうか」

 

「麺を奇っ怪って…言ってるの照くらいだぞ…?あれ、ツルツルしてて旨いんだぞ?」

 

「箸で掴めないから、俺は苦……手……」

 

ある程度、疲労が抜けたため起き上がり、海とは真逆の車道を見た照が硬直し、言葉を無くしていた。

 

「…どうしたんだ?照」

 

「涼君。今さっき何だけどね…『大きくて』、『変な緑の二足歩行獣』が、道路を全速力で走っていたんだ…。

 

何を言ってるか分からないとは思うけど、俺も自分自身の眼を疑ってる。頼むから、一発平手をしてくれないか?

 

夢か現か其れで分か」

 

言葉を言い終わる前に「せい!」と右から強烈な平手打ちが飛んできて、頬を抉るように突き抜ける痛みが脳に響く。

 

「えっと、どうだった照?」

 

「うん、痛いね。夢じゃ痛くないし、現なのが分かった」

 

「………………………」

 

「………………………」

 

『捕まえるか』。

 

彼等が其の判断に至るまで、十秒とて掛かりはしなかった。

 

* * * * * * * * * * * * * * *

 

「此方で合ってる!?」

 

「間違いないよ!走って行ったのは此処の方角で大丈夫!そして蝗跳は慣れない内はゆっくり、一回一回を意識しつつやっていこう」

 

蝗跳のやり方を涼君に教えながら、俺達は奇っ怪な動物の後を追い掛ける。ピョンピョンと歩道を跳ねながら、進み続けていると、遠くにあの生物の姿が見えてきた。

 

「いぃぃぃぃたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「ナニあれ!?え、ナニ!?あれ本当に生き物!?」

 

興奮と驚きで騒いでいた矢先、此方の声を気付いたのか、緑色の生き物はスタコラサッサと逃げ出した。

それはそれは、とんでもない速度で。

 

「逃げた!しかも速いぞ!」

 

「ただ追い掛けるのもつまんねーし、烈火で競争しようぜ照!」

 

「お、それいただき!じゃあ…ドン!」

 

同時に駆け出した。二虎流 火天ノ型・烈火…お馴染みになりつつある高速移動の技で、離された距離を着実に積めてゆく…筈だったのだが、いつの間にか氷室に烈火で抜かされて、徐々に距離が開いていっていた事に照は気付く。

 

《涼君は速いな。火天ノ型は彼の得意分野になっちゃったか…》

 

ライバルの成長を嬉しく思える。其の反面、少なからず積もる寂しさも彼にはあった。

 

『つーかまえーたぁ!』

 

そんな折、氷室が緑色の生き物まで追い付き、飛び掛かって押し倒す姿が見えた。感傷に浸るのもこれまでに、照も足の回転率を高めて漸く追い付く。

 

「照、照!こいつ、へんてこな感触してるぜ!」

 

氷室を振り落とそうと抵抗し、暴れる奇っ怪な生き物を相手に重心を崩さず中心を保持し続ける。その時…生き物の首根っこが、栓を抜いたように胴体から外れたのを二人は見てしまった。

 

『『ゑ!?』』

 

そして其の中から、三十代程度の年齢であろう金髪の髭男の顔が出てきたのを。

 

「うっへぇ…着ぐるみ着けたまんま走ったのは間違いだったかぁこりゃ。ん?お前らどした?」

 

『『エエエエエエエエエエエエエ!!!?』』

 

* * * * * * * * * * * * * * *

 

「…つまり、お前さん達は俺を新種生物と間違えたっう訳かい」

 

「はい、まさか役者さんだとは思いませんでした」

 

「いやいや、謝る必要はねぇ。俺は『演技』の為に好きでやってるだけさ。端から見りゃ不審者扱いされても、何も言えねぇ」

 

謝罪の言葉を述べる照を静止させながら、器用に着ぐるみと呼ばれる着用物を外して身軽になってゆく男。上は白地の薄手の服装一枚で、下はかなりブカブカした物を履いている。

 

しかし全身は、かなり鍛え抜かれている事が照には一発で分かった。そしてあちこちに細かな傷痕や、拳に痣が有る事から、徒手格闘の経験者である事が伺える。

其れも『かなり強い』。黒木 玄斎には及ばないだろうが、十分な強さが此の男にはある。

 

「照、役者って何なんだ?」

 

「涼君。役者って言うのは劇なんかで演じる人達を言うんだ。鼓を叩く人、獅子舞を被る人、舞いを踊る人…。一言で役者と言っても、沢山役目があるから一概には言えないかな」

 

へぇ~…と言った具合に納得した氷室。中々物知りじゃねぇかと誉められ、男に頭をぐしゃぐしゃに撫で回された照。

 

「しっかし…着ぐるみを着けた状態だったとは言え、俺に追い付くとはな。やるじゃねぇか…んと、涼坊。そして、照坊」

 

「涼坊?俺の事?」

 

「おう、良いだろ?」

 

ニッと白く磨かれた歯で笑みを見せる男だが、氷室は不機嫌そうに頬を膨らませて、「涼坊じゃないやい!氷室 涼だ!オッサン!!」と反論。

彼は驚きの表情を浮かべたが、直ぐニンマリと笑いガッハッハッハ!と高らかに上機嫌に笑う。

 

「そうか、そうか!坊呼ばわりは気に入らねぇか!コイツはうっかりしたぜ!」

 

おおらかに、そして朗らかに、人生を謳歌するかのような笑い声。聞いてるだけで、何故か身体を奥底から力が湧いてくる。

 

と、彼は自分の腕に巻いた金属らしき物を見て言った。

 

「おっと!そろそろ撮影の時間だ、すまねぇな二人共!」

 

脱いでいた着ぐるみを脇に抱え、彼が立ち上がる。

 

「あ、オッサン!名前は!?名前、何て言うんだ!?」

 

別れ際に彼の名を問う照。男は振り返り、ニッと笑うとこう告げて炎天下の中を走り出した。

 

「俺は倉穴(くらあな) 熊五郎(くまごろう)!他の奴等からは『穴熊(あなぐま)』って呼ばれてんだ!」

 

じゃあな!と走り去る其の大きな背中からは、凄まじい自信と、誇り高い気質が放たれていた。

そして俺達は彼と、意外な形で再会する事になる…。

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