ケンガンアシュラ、アニメきましたね!
よく動くし、リアルな描写も良い感じ!
そしてケンガンアシュラの小説がもっともっと増えて欲しいのだ
「…っはぁ!」
「涼君、結構出来るようになってきたね」
「ハァ…ハァ…照に比べたら、…まだまだだ!せめて…今より一分、以上…潜って、ハァ…!られ…ないと!」
「良い心意気だ、じゃあもう一回やるか」
「おうよ…!」
二人が二虎の知り合いの
照は現在、海中を利用し奥義体得前に二虎から教わった、肺活量と全身の筋肉強化を行う訓練を、氷室に対して教えている。
《沖縄は晴れてる事が多いし、海も近いから此の訓練を活かしやすい。何より地上で鍛えた縦拳も、水中で行ってもっと速度が上がれば、必然的に威力も上がる。
…俺も
水中組手の交錯の中で照は更なる飛躍を誓い、氷室との戦いを続けていく…。
* * * * * * * * * * * * * * *
「ハァ…ハァ…ハァ…!」
「お、お疲れ…さん…」
砂浜に打ち上げられた
一戦あたりの平均潜水時間は三分程度。休憩を一分挟み、二時間近く戦っていた事になる。
「腹減った…」
「だなぁ…一応釣りで作った資金を削って、何か食べに行くか?」
「うん…塩辛い物が食べたいな」
「塩たっぷりの巨大握り飯、刺身丼、あとは…塩らぁめんという、奇っ怪な物…くらいだろうか」
「麺を奇っ怪って…言ってるの照くらいだぞ…?あれ、ツルツルしてて旨いんだぞ?」
「箸で掴めないから、俺は苦……手……」
ある程度、疲労が抜けたため起き上がり、海とは真逆の車道を見た照が硬直し、言葉を無くしていた。
「…どうしたんだ?照」
「涼君。今さっき何だけどね…『大きくて』、『変な緑の二足歩行獣』が、道路を全速力で走っていたんだ…。
何を言ってるか分からないとは思うけど、俺も自分自身の眼を疑ってる。頼むから、一発平手をしてくれないか?
夢か現か其れで分か」
言葉を言い終わる前に「せい!」と右から強烈な平手打ちが飛んできて、頬を抉るように突き抜ける痛みが脳に響く。
「えっと、どうだった照?」
「うん、痛いね。夢じゃ痛くないし、現なのが分かった」
「………………………」
「………………………」
『捕まえるか』。
彼等が其の判断に至るまで、十秒とて掛かりはしなかった。
* * * * * * * * * * * * * * *
「此方で合ってる!?」
「間違いないよ!走って行ったのは此処の方角で大丈夫!そして蝗跳は慣れない内はゆっくり、一回一回を意識しつつやっていこう」
蝗跳のやり方を涼君に教えながら、俺達は奇っ怪な動物の後を追い掛ける。ピョンピョンと歩道を跳ねながら、進み続けていると、遠くにあの生物の姿が見えてきた。
「いぃぃぃぃたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ナニあれ!?え、ナニ!?あれ本当に生き物!?」
興奮と驚きで騒いでいた矢先、此方の声を気付いたのか、緑色の生き物はスタコラサッサと逃げ出した。
それはそれは、とんでもない速度で。
「逃げた!しかも速いぞ!」
「ただ追い掛けるのもつまんねーし、烈火で競争しようぜ照!」
「お、それいただき!じゃあ…ドン!」
同時に駆け出した。二虎流 火天ノ型・烈火…お馴染みになりつつある高速移動の技で、離された距離を着実に積めてゆく…筈だったのだが、いつの間にか氷室に烈火で抜かされて、徐々に距離が開いていっていた事に照は気付く。
《涼君は速いな。火天ノ型は彼の得意分野になっちゃったか…》
ライバルの成長を嬉しく思える。其の反面、少なからず積もる寂しさも彼にはあった。
『つーかまえーたぁ!』
そんな折、氷室が緑色の生き物まで追い付き、飛び掛かって押し倒す姿が見えた。感傷に浸るのもこれまでに、照も足の回転率を高めて漸く追い付く。
「照、照!こいつ、へんてこな感触してるぜ!」
氷室を振り落とそうと抵抗し、暴れる奇っ怪な生き物を相手に重心を崩さず中心を保持し続ける。その時…生き物の首根っこが、栓を抜いたように胴体から外れたのを二人は見てしまった。
『『ゑ!?』』
そして其の中から、三十代程度の年齢であろう金髪の髭男の顔が出てきたのを。
「うっへぇ…着ぐるみ着けたまんま走ったのは間違いだったかぁこりゃ。ん?お前らどした?」
『『エエエエエエエエエエエエエ!!!?』』
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「…つまり、お前さん達は俺を新種生物と間違えたっう訳かい」
「はい、まさか役者さんだとは思いませんでした」
「いやいや、謝る必要はねぇ。俺は『演技』の為に好きでやってるだけさ。端から見りゃ不審者扱いされても、何も言えねぇ」
謝罪の言葉を述べる照を静止させながら、器用に着ぐるみと呼ばれる着用物を外して身軽になってゆく男。上は白地の薄手の服装一枚で、下はかなりブカブカした物を履いている。
しかし全身は、かなり鍛え抜かれている事が照には一発で分かった。そしてあちこちに細かな傷痕や、拳に痣が有る事から、徒手格闘の経験者である事が伺える。
其れも『かなり強い』。黒木 玄斎には及ばないだろうが、十分な強さが此の男にはある。
「照、役者って何なんだ?」
「涼君。役者って言うのは劇なんかで演じる人達を言うんだ。鼓を叩く人、獅子舞を被る人、舞いを踊る人…。一言で役者と言っても、沢山役目があるから一概には言えないかな」
へぇ~…と言った具合に納得した氷室。中々物知りじゃねぇかと誉められ、男に頭をぐしゃぐしゃに撫で回された照。
「しっかし…着ぐるみを着けた状態だったとは言え、俺に追い付くとはな。やるじゃねぇか…んと、涼坊。そして、照坊」
「涼坊?俺の事?」
「おう、良いだろ?」
ニッと白く磨かれた歯で笑みを見せる男だが、氷室は不機嫌そうに頬を膨らませて、「涼坊じゃないやい!氷室 涼だ!オッサン!!」と反論。
彼は驚きの表情を浮かべたが、直ぐニンマリと笑いガッハッハッハ!と高らかに上機嫌に笑う。
「そうか、そうか!坊呼ばわりは気に入らねぇか!コイツはうっかりしたぜ!」
おおらかに、そして朗らかに、人生を謳歌するかのような笑い声。聞いてるだけで、何故か身体を奥底から力が湧いてくる。
と、彼は自分の腕に巻いた金属らしき物を見て言った。
「おっと!そろそろ撮影の時間だ、すまねぇな二人共!」
脱いでいた着ぐるみを脇に抱え、彼が立ち上がる。
「あ、オッサン!名前は!?名前、何て言うんだ!?」
別れ際に彼の名を問う照。男は振り返り、ニッと笑うとこう告げて炎天下の中を走り出した。
「俺は
じゃあな!と走り去る其の大きな背中からは、凄まじい自信と、誇り高い気質が放たれていた。
そして俺達は彼と、意外な形で再会する事になる…。