世界を征する覇堺の拳   作:ガリアムス

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・其の打撃は時に鞭の如くしなやかに。時に鋼鉄の如く強靭。

・氷室 涼のネタと言えば?………そう、『アレ』です。

・2020年1月より、ケンガンアシュラがNetflixの枠を越えて、一般放送開始!!
己の強さを証明する為、裏の世界で生きる闘技者達の戦いを刮目せよ!!(ダイマ)


第二十三話 鋼打(はがねうち)

二虎流(にこりゅう)金剛ノ型(こんごうのかた)操流ノ型(そうりゅうのかた)は『併用する事は出来ない』━━そう、ニコさんと照から、俺はそう教わった。

 

力の流れを操る為に、繊細な動作を必要とする体系の『操流』。

攻防一体を成し、硬化し、一撃を叩き込み、破壊する体系の『金剛』。

 

他の型は併用して使えるのに、どうしてこの二つだけは複合で使えないのか…と。

 

必死に考えた。寝てる時も。食事の時も。

 

考えて、考えて、考えて、考えて。

何度も、何度も、頭の中で考えて。

 

そして、ある時。俺は気が付いた。

 

そうか━━━━。

 

『打ち込む瞬間に、硬化すれば良いんだ』……と。

 

 

* * * * * * * * * * * * * * *

 

 

「…全く。俺の予測を超えてくるなんて、本当に凄いな。━━涼」

 

左脇腹を擦りつつ、照は素早く体勢を立て直し、改めて構えを取る。

 

「…二虎流 金剛・操流ノ型。名前は鋼打(はがねうち)。名前は組手の前に思い付いた。水燕(すいえん)を軸に、不壊(ふえ)の原理を合わせて作ったら、此の技が出来たんだ」

 

軽く、小刻みにステップを踏みつつ、自慢気にそう言った涼。

 

照は思う……此の鋼打という技は、氷室 涼が自らの手で編み出した、『氷室 涼(かれ)だけの二虎流の体系』なのだと。

 

「いくぞ、照!」

 

「…こいっ!」

 

涼が二虎流(にこりゅう)火天ノ型(かてんのかた) 烈火(れっか)で突っ込んでくる。

 

先程受けた鋼打、驚異に成るのは『腕の軌道』……操流の流転の如き、動き回る腕の挙動は、かなりの驚異となる。言うなれば『無形』の技━━━『武』の理の外に在るが故に、判断を誤れば敗北は必至。

 

「シャア!」

 

涼の両腕が大きく、不規則な軌道を幾度と無く描いてくる。狙いは先程、不意打ちに等しい一撃を貰った左脇腹を中心に、左肩・右胸肉・段中・鳩尾…その他。

 

複数箇所を狙った波状攻撃。

照もまた、其の連撃に対して、構えを変える。

 

取ったのは、肘と膝を内側に置き、足で八の字を、腕で逆八の字を作り、延長線上の鳩尾部分で×の字になるようにし、肉体を筋肉を締める。

 

直後バチバチバチチチチィィィィ!と、鞭の先端がぶつかったかのような高音が、複数に渡り響いた。

 

「……『堅い』━━!」

 

不壊で固めた両掌は確かに当たった。手応えも有る。しかし、結果はどうだ?攻撃は弾かれ、逆に反動で痺れている。

 

「あの構え…黒木のオッサンがやってるヤツか!」

 

「正解。名前は『三戦(さんちん)』…黒木さんが、そう言っていた」

 

三戦(さんちん)━━其れは空手(からて)に伝わる、伝統的な受けの型であると同時に、防御に置いて重要とされている型である。

 

其の構えは下半身を固め、しっかりと構える事により、単純なれども、極めた者が使えば、あらゆる打撃に耐えられるという、究極の防御とも呼ばれる。

 

照はこれに、自身の流派である覇堺流(はかいりゅう) 凱甲(がいこう)二虎流(にこりゅう)金剛ノ型(こんごうのかた) 不壊(ふえ)を更に重ね掛ける事で、鍛冶職人が洗練し、丹精込めて鍛え上げた、剛鋼に等しい防御力を得たのだ。

 

構えを解き、照は反撃へ転じる。

 

「させるか!」

 

涼の十八番、縦拳が飛来。

首を傾け、紙一重で躱わして、間合に入る。

 

だが━━━!

 

「━━━ッ!?」

 

悪寒を感じ、右に体勢をずらした直後、照の頭左部分、眉毛の辺りの皮膚が斜めに切れ、出血。

 

涼の左腕で繰り出した鋼打が、彼の皮膚を切ったのだ。

そして、涼の左手の親指を除いた、指の第二関節全てに血が付いている事から、縦拳の握り方を応用して皮膚を裂いたのだと予測出来る。

 

《参ったな、こりゃ……》

 

接近すれば縦拳が、距離を取れば鋼打が、とんでもない速さで飛んでくる。

 

速く、鋭く、連続で襲い掛かる斬と打と突。

 

照は思う。自分は今、鎖鎌の使い手と棍棒の使い手を同時に相手取って居る感覚を。

 

辛うじて致命傷は避けているが、何れは其れを貰いかねないだろう。

 

《……たまんねぇな》

 

衣服を、皮膚を裂かれ、出血する度に。

 

叩かれ、痣が出来、傷付く度に。

 

身体の内側で疼く感覚が、火山で渦巻く溶岩の如く、沸々と湧き出し、五臓六腑を満たして行く。

 

《……嗚呼、本当に━━━良い》

 

変人だと思われるだろう。気持ち悪いと思われるだろう。だが、それでも良い。漸く分かったのだ。

 

自分はこうして、強い奴との戦い。逆境に追い込まれ。

其処から這い上がり、全てを乗り越えて逆転するのが。

 

どうしようもなく、自分でもどうする事さえ出来ない程、好きなのだと。

 

気付いたのだから━━━━。

 

「ハァッ!!!!!」

 

涼の鋼打の一撃が、照の顔面に迫りくる。直後まで数秒も掛からない。貰った!と、そう涼本人は確信していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドンッッッッッッッッッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう…此の瞬間迄は。

 

 

『!!!!?????』

 

 

『右手首』及び『右肘』が、普通ならば『在らぬ方向』に、ボッキリと、完全に曲がっている。

 

「う"…ああ"…ッッ"ッ"ッ"…!!!!」

 

関節の感覚がない。肘先以降に力が入らない。

初めて味わう、釘撃とは別物の筆舌し難い痛みに、涼は悶え苦しみ、悲鳴を上げない嗚咽に近い苦痛を漏らした。

 

二虎流(にこりゅう)操流ノ型(そうりゅうのかた) (がらみ)。加えて、狐影流(こえいりゅう) 羅刹掌(らせつしょう)の捻りの原理を用いて形成した、新しい技だ。

 

そうだな━━━━渦喰(うずばみ)…とでも名付けようかな」

 

顔に付いた血を手で拭い取り、自身の髪を掻き上げる。

其の目は鋭く、強く在りながらも、落ち着きを保ち、膝を付いた涼に向けられる。

 

「こんなもんじゃないだろう?俺はまだ戦えるぜ、涼」

 

左手左構えの体勢に構え直し。

 

鬼灯 照は、不敵に笑い、そう言った。

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