世界を征する覇堺の拳   作:ガリアムス

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鬼灯 照&氷室 涼、師と二年振りの再会を果たす

・待たせてごめんなさい。

・後4話か5話で『彼』が登場します


第二十九話 再会(さいかい)

沖縄、黒木邸付近…波音が響き、熱くとも心地好い風が吹く中を、一人の男が歩いて行く。

 

「アイツ等、元気にやってるかねぇ」

 

男の名は十鬼蛇(ときた) 二虎(にこ)。彼が此の場所を訪れた理由は、ある約束を果たすためだ。

屋敷の入口に立ち、深呼吸一拍。そして━━━━

 

『頼もう!』

 

一声。暫しの静寂を起き、屋敷の方からドタドタと駆け足で此方に向かってくる。

 

「二虎さん!!」

 

入口の横式扉を思い切り開いて、少年が顔を出した。歳は十か十一程の初々しさを含みながら、身長165cm近い背丈はゆっくりと青年になっていよう事を実感させる。

 

だが、それでいて纏う黒の着物と灰色の袴の合間から覗く鍛え、引き締まった肉体が、確かに男としての成長をしっかりと見せていた。

 

「……二年振りだな、(てる)。」

 

「はい!」

 

鬼灯(ほおずき) (てる)。此の物語の主人公にして、十鬼蛇 二虎の一番弟子にあたる彼は、沖縄の海と自然の中で修行し、二年前に一度別れた時よりも更に力強く成長した。

 

「二虎!!」

 

照より数瞬遅れ、もう一人の少年が屋敷から姿を現した。照よりも肌色は少し茶がかり、髪は銀に近い白。青の着物を着付けた彼もまた、照に負けず劣らずの鍛えられた肉体を、二虎の前に修行の成果として提示したのだ。

 

(りょう)。お前もな」

 

「おう!」

 

氷室(ひむろ) (りょう)。照と同じく、彼も十鬼蛇 二虎を師とし、修行を重ねた少年である。

照が二虎の一番弟子、涼は二番目だ。

 

「来たか」

 

最後に現れたのは、黒い柔道着に身を包む三十台後半の男。闘気を纏い、どっしりとした身体で二虎に視線を送るのは、屋敷の主にして怪腕流(かいわんりゅう)の使い手、黒木(くろき) 玄斎(げんさい)。二年前、二虎が個人的な用事で動く際に、弟子二人の身の安全を考え、彼の元に預けていたのである。

 

そして照と涼にとって、彼の流派の源流である琉球空手の技を絶妙な距離感を保ちながら教えて、また怪腕流の真髄を見せた恩師である。

 

「黒木。二年間、二人の事をありがとう」

 

「気にするな。二虎、二人は『強く』なったぞ」

 

「そうか」と二虎は照と涼を見た。佇まいや姿勢、身体付き、自分が予測していたものよりも、遥かに成長している。

 

「……帰るか」

 

「おう!」

 

在るべき者は在るべき場所に。自分達の居場所にして故郷である『中』へと帰るため、黒木邸を後にしようとした時だった。

 

「ちょっと待ってください!」と照が二虎達を静止させたのである。

 

「どうした、照?」

 

スッと黒木の方へ向き直り、彼は地面へと正座する。

 

そして。

 

「黒木 玄斎さん!」

 

大きな声で、ハッキリと。

 

「二年間!私達二人に稽古を付けて頂き、ありがとうございました!」

 

敬意と、感謝を込めて。

 

「此の御恩と教授!此の先の生で無駄にせぬよう、精進して参ります!」

 

額を地面に着け、そう述べきったのだった。

 

 

* * * * * * * * * * * * * * *

 

 

沖縄港にタクシーで移動し、港で旅客船を待つ間…。

 

「…………」

 

「いやぁ~。良いもん見せて貰ったぜ」

 

「まさか照が、あんな行動取るなんてな」

 

照は其の時の行動に対する二人からの追求…もとい弄りを受けていた。

 

「忘れてくださいよ…いや本当に、真面目に、お願いします…」

 

ニヤニヤと温かい目で見る涼と二虎に、照は赤面しつつ自分の行動を悔いた。どうやら前世の時に行っていた事は、此の時代では価値観が大いに違うらしい。

 

しかし━━━━

 

「でも…照、あの時はすっごくかっこ良かったぜ」

 

弄った後に涼は素直な感想を述べ。

 

「だが、まぁ…ああゆう事が出来る奴は、そうは居ねぇ。俺が照と同じ行動取ったら、先ず恥ずかしすぎて死ねるね。

 

要するに、他人じゃぜってー出来ねぇ事を恥ずかし気もなく実行した照は、すげぇ奴だってこった」

 

二虎もまた称賛し、照の頭をわしゃわしゃと乱暴に撫で、悪戯に笑ったのだった。

 

「むぅ…貶してるのか、褒めてるのか、分からないですよ…」

 

少し膨れっ面になり、照が拗ねた。人間には突っつかれると困る事や、拗ねたりする事に繋がる所謂『地雷』の様なものがある。今回の場合、照の誠意の行動を言ったりした事が原因となり、彼は気分を悪くしたのである。

 

と━━━━

 

「賑やかそうだな」

 

照と涼の耳に、聞き覚えがある声が届き、その方へと視線を向けた。着物と袴を着付け、白髪交じりの黒髪の男性が、ゆっくりと此方に向かって歩いて来ている。

 

「あ!厳山(げんざん)さーん!」

 

彼の名は平良(たいら) 厳山(げんざん)…裏世界で狐影流(こえいりゅう)を用い、暗殺稼業に身を置く者。また、照が此の沖縄で学び、会得したもう一つの流派・狐影流の現当主でもある。

 

何故、彼が此処に居るのかというと、三日前の修行中に照自身の口から「三日後に、俺と涼は故郷へ帰えります。我儘になるかも知れないんですが、俺の師匠の二虎さんと会ってくれませんか?」と伝えていたからだ。

 

「君が、照の言っていた師匠の十鬼蛇 二虎か…」

 

「照がタクシーの中で話してた、平良厳山だな」

 

初対面にも関わらず、空気が張り積める。死闘特有の空気と匂いがし、照も涼も自然の内に構えていた。

 

だが━━━━

 

「ふっ…成程。照が君の事をよく話す理由が分かったよ。……良い師のようだな」

 

「弟子想いの奴だって言ってたが、わざわざ見送りに来るあたり、本物みてぇだ」

 

ハッハッハッハッハ!と高笑いし、一拍。

 

「…改めて。十鬼蛇 二虎だ」

 

「平良 厳山という。見知り置きを」

 

自己紹介と共に、堅い握手が交わされた。

それから二虎と厳山は、船が来るまでの時間が許す限り、弟子として育て、見てきた照の戦い方を語り合った。本島行きの船が到着し、出航ギリギリまで照は厳山に礼を述べ続け、厳山もまた「達者でな」と言い、更に「これからも、たゆまぬ努力と共に精進せよ!鬼灯 照!」と、激励を送った。

 

こうして照と涼にとって、長いようで短い、沖縄での二年間の生活は幕を閉じた。

 

舞台は再び中の世界へと戻る。そして其処で二人は、新たな『出会い』と苦しき『別れ』を経験する事となる………。

 

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