ケンガンオメガ、第179話にて判明した黒幕の真の目的……作者はゾッとしました。
此の小説を読んでいる皆様ならば、其れが解ると思います…
*作者が職場で受けたパワハラによって、ストレス性のうつ状態になって療養していたのと、コロナワクチン注射射ったのにコロナ感染して寝込んでしまい、結果として投稿が遅れました。
━━━━強いね、アンタ。名前は何て言うんだい?
久しぶりに夢を見た。
話をしているのは……『女』。女特有の円みを帯びた肉質に、鍛えられた筋肉が衣服の間より覗いていて。
そして一番目を惹かれたのは…彼女の『黒い瞳』。
━━━━俺は** *。さっき見せた技は***だ。
俺は彼女と話をした、色々な事を。
━━━━***…破壊?
━━━━違う。破壊じゃなくて、**。意味は…そう。
世界を征する━━━━
ガンガンガン!!!と金属音が耳元で鳴り響き、夢は其処で断裂し、俺は目を覚ました。
「おう、チビ助共。早く起きて朝飯食いな。今日も修行だぜ?」
二虎さんがフライパンと呼ばれる金属で出来た、焼きにも鍋にも使える道具を叩いて、俺達四人を眠りから呼び起こす。
「ふぁ…はぁい……」
「…おはよう、です」
「………ん」
「…ああ……ねんみぃ」
四者四葉の寝起き言葉を溢し、寝床を立って分けられた朝食の前に座る。そして「いただきます」と手を合わせてから食べる照と刹那、片手を添えてから食べ始めた二虎、我先に食べ終わらせんとガツガツと食べる王馬と涼。
「んぐんぐ…そいや照、前々から気になったんだけどさ」
「ん?何だ、涼君?」
「……何となく、照と王馬の顔立ちが『ちょっと似てる』って思った。多分、俺の気のせいだと思う」
そう言って涼は朝食を一足先に食い終わり、個人の修行を行うべく外に出て行く。照は王馬の顔を見るが、数秒しない内に、王馬が食事を終えて席を立ってしまい、観察するには至らなかった。
此の時の涼の言葉が、後に照や王馬に深く関わる出来事に繋がるが……其れはまだ先の話である。
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「お前ら、修行をする前に俺から一つ言うことがある」
朝食を終え、今日もまた修行が始まる其の前に、四人の弟子達を前にして二虎は真剣な眼差しで言った。
「始めに……涼。今日からお前には、俺の持つ二虎流の技を本格的に教えていく。照との組手で見せた『あの技』。使いこなすには、二虎流の全系統を極めていく必要があると判断した」
二虎さんの言葉を聞いて、涼は驚きと共に目を丸くする。其れも其の筈、二虎流の全系統を学ぶ事は即ち、二虎の奥義を会得する為の下準備と言っても過言では無い。
更に言うなれば、涼が照に繰り出し、結果としては失敗に終わった『あの技』。『アレ』は形に成れば確実に、二虎流の『新しい奥義』として機能すると確信した為だ。
「んでだ、照。お前には王馬と刹那に、戦いの基礎を徹底的に叩き込め。やり方は一先ず、お前の思うようにやってみて、壁にぶち当たったら俺を頼れ」
「じゃ、始めるぞ」と言い、二虎は涼を連れて修行に入り、俺は王馬と刹那に視線を移す。
「よし…王馬、刹那。二虎さんから頼まれたから、よろしくな」
「はいっ!」と元気な声で返事をした刹那と、返事は返さずとも小さく「……ん」と呟いた王馬。特に刹那は初めて出会った時の暗い雰囲気や、人に対する恐怖の顔色が薄らぎ、笑顔が見えるようになってきた。
「先ず始めに正拳突きを、其の後に足周りの鍛練を行う。休息を挟んで、構えの型作りをやるよ二人共。
俺の身体の型を見ながら、自分の身体を俺の形に合わせてみてくれ」
少年二人に見せるように脚を開き、腰を落として、肩と腕と重心地点の位置を調節し、照は己の身体を以て打撃の型を形成していく。
心と精神を研ぎ澄まし。眼前にイメージするは、鋼鐵の硬度を誇る巌。足首と腰の回転を、背骨と背筋に、肩と腕に在る筋肉へポンプの様に伝導して。
『覇ァッ!』と言霊を込め、一撃を放った。放たれた拳先から、まるで風が走るように。彼の周りに漂う空気が、拳の前に押し出された様な気を、二人は感じた。
「……と、こんな感じ。声を出すのは二人の自由で構わない。俺もやるから、足腰の位置を常に確認して、正拳突きの型を作っていこう」
「は、はい!」
「ん」
そうして刹那と王馬は拳を握り、足腰の重心を意識しつつ、打撃の基礎中の基礎を身に付け始める。
千里の道も一歩より、蒼茫なる大海も一滴の水より始まるように、二人の少年の道は此処からだ。
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十鬼蛇区内某所……
「シッ!シッ!シャア!」
草木を苅り切る様な鋭く、鋭利な涼の拳が空に迸る。
「うん…うん…。よし涼君、鉄砕はもう少し肩の力をフッと抜いて拳をグッ!と握って、相手をドガン!って殴るつもりでやってみると良いぞ」
「やっぱ二虎さん、口で教えるの苦手でしょ」
二虎の擬音ばかりの教えに、至極最もなツッコミを入れる涼。彼は現在、二虎流・金剛ノ型の鉄砕を教わっているところだ。
「ん~……だけど、照の鉄砕は滅茶苦茶カテェんだよな~…。マジであの拳、釘撃と同じで、まともに受けたら意識飛ばされそうになる」
「お、よく言うじゃねぇか。涼君」
照との千を超え、三千に迫る組手で涼が思考に置いたのは、今まさに自分が鍛練している鉄砕。筋肉を引き締め、硬化した拳を対象に叩き付ける其の技は、高い練度に至った者が放ったならば文字通り鉄をも砕く威力と成る。
「鉄砕もそうだが、金剛ノ型は基本的には受ける時や、攻撃する時に其の部位だけを硬めて、相手にぶつける事が大切だ。同じ金剛ノ型や肉体硬化同士でぶつかり合えば、当然より硬い方が勝つ」
「だがまァ」と二虎は、攻略法に迷う涼へ一つ教えを授ける。
「相手の金剛が勝ってたり、そもそも硬すぎて打撃が通らねぇなら、別の方法で切り崩しゃ良いだけの話だ」
「つまり…?」と聞く涼に、二虎は一言「『持ち味』だよ」と述べた後、少年の額の中心に指を当てて言った。
「涼、お前の持ち味は『速さ』だ。拳速や蹴りのスピードは四人の中でダントツ…見方を変えりゃソイツは、金剛ノ型で筋肉の硬化されない部位、例えば頭や額、脛に足首、後は股間なんかを誰より『素早く』ブッ叩ける。
筋肉や関節は鍛えられても、人体の急所ばっかりはどうやったって鍛えられねぇ。其所を相手の意識より速く叩かれる…相手からしたら、そんだけでも驚異だ。
機動力を潰され、急所を痛め付けられる。其れだけでも戦いじゃ、十分命取りの要因になる」
自身の強さと武器、そういう考え方も在るのかと、涼はハッとさせられた。黒木の元、照と共に学んだ二年間、鍛える度に唯でさえ格上であった彼との、絶対的な実力差を痛感した日々。
僅かながら、光明が射したような気がした。
「ま、つまり持ち味って奴は、自分の経験や修練の中で産まれる『武器』だ。武器を沢山持ってるってのは、確かに強い。だが、そんな武器を沢山持ってる奴でも、唯一つ抜きん出た武器に勝てない事だって在る。
ソイツは既に『
さ、金剛ノ型の修行の続きだ。そう言い、二虎は自身の右拳を硬め、近くのコンクリートに鉄砕を放って破壊する。
其れを辿るように、涼もまた不壊で固めた拳を手頃な岩へぶつけ、拳を伝う痛みや砕岩の感覚を脳に刻み、鉄砕を覚えていくのであった。
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其の日の夜…━━━━━━
「………」
涼と刹那、二虎が眠る中で、一人静かに目を覚ました王馬は、寝床から出て、住居としている小屋から外に出る。
無法地帯・中における苛酷な環境下で生き残る為、身辺の異常を察知する能力が、誰よりも飛躍的に向上していた王馬。
其の彼が、夜中に浅い眠りから醒めたのも、単に自身の身に付けた感覚が衰えていないか、確かめただけではない。
『今日は何かが起きる』━━━そんな予感がしていたのだ。
「む、王馬。眠れないのか?」と、入口付近で胡座座りで声を掛けてきたのは、二虎の弟子の一人である鬼灯 照。戦う時の激情に似た獰猛な表情と真逆の、落ち着き保った表情は、何を考えているのか王馬には検討が付かない。
「ホオヅキ テル……目が覚めただけだ」
名前を呼んでドカッと座る王馬に対し、照は「そうか」とだけ言って、其れ以上の事は聞かなかった。
ふと王馬が横目で照を見ると、彼は左手に小石を取って、掌の上で転がしている。かと思えば、其の小石を地面に置いては指先で突いたり、輪郭をなぞってみたりと、不可思議な行動を取っていた。
「ん?気になる?」
そんな視線を感付いたか、照が王馬の方へと向く。
「石ころ遊びか」
「……まぁ、そうかもね。王馬の言うとおり『半分』当たってる」
照の答えに、王馬が抱いた疑問は『半分』という言葉。今、近くに座っている青年は確かに『石を使って遊んでいる』ように見える。
しかし王馬は此処で、照から言われた事を思い出す。『強くなるには先ずは見る事からだ』……其の一言を念頭に入れ、彼の手や指の動きを見始めた。
王馬の視線に照は微笑むと、彼に向けて言葉を紡ぐ。
「俺が使っている覇堺流。其の根幹には、あらゆる物体の『
「…感触?」
「そう、感触」
王馬が僅かながら興味を示したのを、照は見逃さない。彼は少年へ、
「地面には地面の、石には石の、木材には木材の。様々の物体が持っている『感触』を、指や掌、拳に爪先、額や頬、他にも目や耳とか諸々含めた、自分の『全て』で感じ取る。
感触から、其の物体へ『最も徹る衝撃を叩き付け、表面から内側へ流し込める』ようになった時。覇堺流の基礎は完成する」
「そして」と述べ、小石に指先を当て、自分の力を流し込む。其の数秒後、石の内側からビキリと異音が響き、表面には皹が走って、バラバラに砕け割れたのだ。
「覇堺流の基礎を突き詰めた先にある物が、俺や二虎さんが使っている『
『基礎の先に奥義が在り、奥義の根幹に基礎が在る』……俺の格言だ」
フッと笑いながら、近くに在った小石を拾って王馬の傍へと転がす。彼は辺りを気にしながら其れを拾い、始めは人差し指で突付いて、次に親指と人差し指、中指で摘まみ上げて、掌で転がした。
だが、其れも数秒。二人は直ぐ様立ち上がるや、王馬は腰に納めていたナイフを引き抜き、逆手持ちで構え。照もまた、左腕左足の左構えで臨戦態勢に切り替えた。
「……居るな、大勢」
「あぁ…多分なんだけど━━━━」
日本の裏側に生きる者達、呉一族。鼠一匹たりとて逃がさぬ意志が、固い決意の包囲陣を作り上げた。
照達の運命はゆっくりと、確実に定められた道に進もうとしている。
呉が迫り来る