「あーあ…退屈ね。」
そう言うのは本居小鈴。鈴奈庵の店番で、今は客が居ないため竹箒を持って掃除をしている。
「退屈なら宣伝とか呼び込みしたらどう?」
「やってるけど来ないんだよー。そういう阿求こそ、こんな所で時間潰しをしていいの?」
「幻想郷縁起が一段落ついたからね。天狗じゃあないけど、新しいネタを探してるのよ。」
私、稗田阿求はここにある本の一冊を拡げ読んでいる。さっきも言った通り、私の仕事である幻想郷縁起が一段落ついたので何か書くものはないか調べるためにここにやってきたのだ。
しかし、ここにある本は大方読破しており、内容を読むと言うよりは見落としているところがないかを探しているのが正しい。
「見た所でもう無いでしょ。ここよりは自分の目で探しに行ったら?」
「今日はその気分じゃないのよ。護衛もいないんだし。」
「阿求の場合、脅せば問題ないんじゃない?」
「別にそれでもいいけど、後で恨まれるからあんまやりたくないのよ。」
いくら顔が広いとはいえ、そういう行動は慎むべきだ。
戦えるかと言われたら戦えないのだ。力で来られたらどうしようもない。
「暇ならば、少し手伝ってくれはしません?」
突然後ろから声をかけられた。
「…紫様。何をお手伝いすればよろしいので?」
「そう構えないで…いえ、構えた方がいいかしら?」
八雲紫。幻想郷の賢者。尊敬すべき相手ではあるのだが、何を考えてるかわからないため信用出来ない。
「賢者の貴女が何故ここに?」
「貴女に用事があったのよ。…この本を知ってるかどうかを。」
そう言って取り出したのは一冊の本。
見た目は年代物のようで、何やら表紙に5つの宝石だったものが埋め込まれている。タイトルは「5つの歴史」と書かれてる。
「珍しい本ですね。宝石のようなものが埋め込まれていますが時間が経ってるのかただの石になってます。」
「でも、肝心の内容は……何も書いてない…?」
「そう、何も書いていないのよ。年季で文字が消えたようでもない。完全の白紙…ですが。」
1ページ目を開いて、一部を指す。
そこには…
「『 異』?何故これだけ…。」
「小鈴にはわからないかもしれないけど、阿求なら分かるんじゃないかしら?この文字に何らかの力を感じません?」
言われてみると、確かに不思議なものを感じる。
「魔本的なものかしら。これはどこで…?」
「幻想入りしたものよ。初めはうちの式が見つけてくれて回収しました。」
幻想入りした謎の本。変な力を持ち、もし妖怪がこれを手にして力を得てしまったら大変なことになる。(見つけ、現在持ってるのは妖怪ではあるのだが。)
「貰ってもいいでしょうか?危険なものかもしれませんし、妖怪の手に渡るのは問題になります。」
「あら、私が持ってても問題になるのですね。」
紫はちょっとしゅんとしたが、すぐに元の表情に戻って私に本を渡した。
その時だった。
本が勝手に開き、本を中心にして風。それと共に霊力のようなものが発生した。
「なっ…!?これは…」
風があまりにも強く、目をうっすらとしか開ける事が出来ない。逃げようにもなぜか動くことが出来ず、そのまま意識を失ってしまった。
うっすらと開けた目で見れたのは、淡く緑に光る本だった。