どのくらい意識を失っていたのだろう?
八雲紫が持ってきた本が暴走し、その強い風に私は意識を失った。
風で意識を失うというのもおかしな話ではあるが。
「…どこかに飛ばされたのかしら?」
立ち上がり、辺りを見る。足元には美しい花々が咲いており、少し地面が盛り上がっている。周辺には大きな木が立派に育っており、森林の中というイメージが出てくる。
「風見幽香…の畑ではなさそうね。そもそも幻想郷…?」
自然豊かな場所で作られるここの空気は幻想郷とさほど変わらないのだが、なにか不純物が混じってるように思える。
「あっ!目が覚めたみたいだよ!リクアさん!」
子供のような声が聞こえる。その声がする方へ顔を向けると、金髪の女の子が私の元に近寄ってきた。
「大丈夫?森の中で倒れていたんだけど…」
「えーっと…ごめんなさい。私、それまでの記憶が曖昧で…」
「記憶喪失…って訳じゃなさそうだよね。着てる服もここの大陸のものじゃあ無さそうだし…外人さん?」
「ミウル、そこまでにしておけ。あまり混乱させても良くない。」
女の子の後ろから男の子の声がした。青く長い髪に、焦げ茶色の服を着た男が森から姿を現しこちらに向かって歩いてきた。
「俺はリクア。ラシル傭兵団に属している。お前の名前は?」
「稗田阿求。阿求、でいいわ。」
「分かった。しかし、聞いたことない名前だったな。」
「うーん…どこかのお姫様かな?って思ったんだけど。」
「申し訳ないのだけれど、ここがどこなのか教えてくれないかしら?」
「ここは、アガラシア大陸。国王キセル様が治める国だよ。」
聞いたことの無い場所と名前だ。やはり、どこか別の世界に飛ばされたとでもいうのだろうか。
「そうだ。阿求の持っていた本だが、今は親父が持っている。
お前の素性を知る手がかりになると調べているが…返すか?」
「本…?まさか。」
あの時、本を手に持っていた記憶はない。とすれば、あの魔本かもしれない。
「返して欲しいわ。私自身、あの本について知りたいし。」
「分かった。じゃあ一緒に村に戻ろう。」
そう言って、リクアは歩いていく。
「自己紹介が遅れたね。私はミウル!今から向かう村に住んでるんだ。
村に残るなら教えてね。もっと貴女のこと知りたいし。」
「えぇ、暫くはその村に残ると思うし、よろしくね。」
小さな女の子はにこやかに笑い、私の手を引いてリクアを追いかけた。
別世界に迷い込むという不可思議な現象。あの本が関わっていることは間違いない、と思う私はリクアのお父さんに会いに行った。