幻想綴ノ験   作:吹花

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緑火の閃光と蒼き意志 四節「戦争を知る阿礼乙女」

「ラシル傭兵団と共に帰る方法を探す」

魔本に綴られていた一文はそれだった。

「……まぁ、それしか選択肢はないわよね。」

本を覗いた八雲紫も、拍子抜けしたと呆れたように言葉にした。

確かに事情を説明したガルム達と共に行動した方が、こちらとしても楽ではあるし傭兵という事もあって多くの情報が手に入りやすい。

「それにしても、帰る方法か…どうやって帰ればいいのかしら。」

八雲紫の言うことが正しければ、世界を救うまで帰ることはできないが、そもそも世界を救うなんて大袈裟な事あるのだろうか。

それに、勇者ものと言えば、そういう血筋の人間が魔王と呼ばれる強敵と闘うものだと勝手に思っているので、彼らに着いて行ってほんとに正しいのか不安でもある。

「……というか、この本、先の事を綴らなかった?」

「そうねぇ…当たり前のことは先に綴られたりするのかしら?」

質問に質問で返されても…とはいえ、私の行動が綴られるというのは正しいらしい。

 

「うわああああああ!!!」

 

外の絶叫で現実に戻される。そういえば、今この村は賊に襲われているのだった。

「大丈夫かしら…」

「懲りずにやってきたとか言ってたし、平気だと思うけれど。」

「…少しだけ。」

ほんの少しだけチラ見しようと、小屋の扉を開ける。

 

そこに広がっていたのは、幻想郷では見ることの出来ない惨憺たる景色だった。

野盗は己の欲を満たそうと、なんの躊躇無く村民を殺し、目をつけた女性を攫う。傭兵団も傭兵団で容赦ない剣撃を野盗に放つ。

中には木剣等で応戦している者もいたが、ガルムらは人を容易く殺せる武器を用いていた。

「なに…これ…」

幻想郷では他種族に殺されるということはあったが、同じ種族同士、しかも自分と同じ人間同士がこんなにも死に物狂い(文字通り)で人の命を奪っている。あまりにも現実離れしたこの世界に目眩を覚え、頭がぼーっとした時だった。

「っ!しまった…」

野盗らしき大男が自分の目の前に吹き飛ばされてきた。

体のあちこちを怪我してる男は、痛みに耐えながらも起き上がり…

「きゃっ!」

素早い動きで私の背後に回り、腕を後ろに回され、短刀を喉に突きつけられた。

「聞けえ!お前らァ!」

村全体に響く声で叫ぶ。傭兵団も村民も野盗も動きを止めてこっちを見る。

「一歩でも動いてみろ、こいつを殺す…」

「お前、卑怯だぞ!」

リクアが言葉を返す。どうやら、この男と相手してたのはリクアだったようだ。

「盗人が卑怯で何が悪い!いいか、こっちに来てみろ、こいつを盾にして殺してやる!!」

激して我を忘れているのか、私を殺さず盾にすることにしたらしい。とはいえ、絶体絶命な状況なのは変わること無く、頼みの綱である紫も何故かいない。

「(…あぁ、これ、死んじゃうのかな…)」なんて諦めていたところ。

「…ったく、なんで村の奴らがいる方向にぶっ飛ばすかねぇ?」

声のする方向を見上げると、屋根の上に弓を持った赤髪の男がいた。

「なんだお前!」

「俺がいたから良かったものの…っと。」

確か、ハング、と呼ばれていた男。背中から矢を取りだし、弓を引き絞る。

「待て!阿求が人質に…」

「んな事は分かってる!元はと言えばお前が招いたことだろうが、黙って見てろ。」

そう言われると、リクアはぐっと口をつぐんだ。

 

矢が放たれる。男は自分を盾にして、しゃがんだ。

終わりだ、矢に貫かれて死ぬんだ。と覚悟し、目を瞑った。

「ぐああああ!!」

突如後ろから叫び声が聞こえ、思わず目を開ける。

矢は私の体を貫いていない、足元の地面に突き刺さった。

地面を抉るほどの威力だったようで、周りに抉られた岩土が飛び散っている。

すぐさま私はその場を離れる。

「あばよ。」

ハングは二の矢を放つ、目を抑えて悶えている大男の眉間に矢が吸い込まれ、そのまま絶命した。

「眉間に一発命中、まっ、こんなもんだろ。」

神業とも言うべきハングの弓に恐れをなしたのか、他の野盗等が散り散りになって逃げ出す。

野盗の襲撃は終わったのだ。

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