愛すべからざる光 -Mephistopheles-   作:無慙さますきbot

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穏やかと言ったら穏やかです(念押し)


穏やかな昼食

率直に言って、ロイヤルの料理はまずい。それが指揮官の大体の感想だった。

 

 

具体的に何がまずいのかと聞かれれば答えに窮するところもあるし、そもそも国が違えば味付けなんかも変わるために、これは単純に自分という鉄血の人間の舌に合わないというだけかもしれないが、それを抜きにしてもひどい。

 

 

だがそんな不味いロイヤル料理でも、総てが総て不味いわけではない。中には旨い料理だってある。その旨い料理の最たるものが、朝食であった。

 

 

「ロイヤルに来たら三食すべて朝食を食べろ」などという皮肉なのか称賛なのかよくわからない言葉がユニオンにあるくらいに、ロイヤルの朝食は絶品と言っていい。それは指揮官も認めるところであったし、だからこそ食堂ではなけなしの指揮官権限を使って三食すべて朝食を出すよう厳命した。

 

 

―――だというのに。

 

 

 

「なんだこの・・・なんだ。」

 

 

 

「サフォーク!待ちなさい!あなた朝食も満足に作れないってどういうことなの!こら!待て!!!」

 

 

「ふえぇ~~~~~~~~ごめんなさ~~~~~い!!」

 

 

 

目の前に鎮座する外宇宙的物質を常の数倍死んだ目で眺める指揮官と、オールドレディとしての慎ましさを水平線の彼方に放り投げて、怒りの形相でサフォークを追い回すウォースパイト、そしてそれから涙目で逃げるサフォーク。ちなみに本来の調理担当はエディンバラであったが、あいにく彼女は紅茶を淹れる練習で忙しいらしく、変わってもらったらしい。

 

 

陸ではかなり、色々とゆるいサフォークになぜ頼んだのかとエディンバラを問い詰めたくなった指揮官だったが、今は目の前の二人を諌める方が先決だと思い直した。

 

 

 

「ごめんなさいごめんなさい!今から作り直しますぅ~・・・」

 

 

「サフォーク、気にするな。」

 

 

「し、指揮官さん・・・」

 

 

「暗殺兵器としては見た目と臭いが致命的だが、効果はある。胸を張れ。」

 

 

「うえぇえぇぇん!」

 

 

 

フォローかと思ったら追い打ちを喰らわされたサフォークは泣きながらうずくまった。先ほどまで追いかけ回していたウォースパイトも、そのあんまりな仕打ちに心なし顔が引きつっていた。というか引いていた。

 

 

そんな一幕はあれど、戻ってきたベルファスト監修の元べそをかきながら料理を完成させたサフォーク、散歩から帰ってきたリアンダー、ベルファストと共に戻ってきたエディンバラと共に机を囲み、昼食の時間は穏やかに始まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えばお前たち、今回の委託で滞在も最後だろう?」

 

 

「ええ、そうですが・・・?」

 

 

「なに、そう警戒するな。滞在が終わる奴らを毎回労っているからな、今回もそれと同じだよ。なにか欲しいモノは無いか?」

 

 

ベーコンに目玉焼きの黄身を絡めて口に放り込みながら、指揮官は気軽な調子でベルファスト達に声をかけた。それは彼にとって通例とも言える、なんてことはない提案でしかなかったが、受け取る側からしてみれば餌を放り投げられたに等しい行為であった。

 

 

その証拠に、ロイヤルが誇る武勲艦にして現メイド長たるベルファストが、瞳に危険な色を宿したのをウォースパイトは見逃さなかった。

 

 

 

「では指揮官・・・いえ、ご主人様の鉄血時代を知りたいのですが」

 

 

「っ!?」

 

 

瞬間、食卓を支配するのは驚愕だ。あのベルファストが、よりにもよって鉄血の英雄たる彼を己が主と、そう称したこと。それは昼食を共にした艦船全員に少なくない衝撃を与えた。中でも特にその衝撃が大きかったのは当然の如くウォースパイトだ。

 

 

 

(一体いつコマしたって言うのよ!お風呂やトイレ以外、寝るときだって同じ部屋だったって言うのに!)

 

 

四六時中共にいたと言っていい彼女にとって、この事態はまさに青天の霹靂、寝耳に水であった。ロイヤルに忠義溢れる艦船としての危機感と、彼を好いた女としての嫉妬が、胸の中で黒々とした澱みを作る。それを敏感に察知してか、嫌に婀娜っぽい目でベルファストがこちらを一瞥した。

 

 

それは常の慇懃として、誰に対しても敬意を払うベルファストにしては、いやに挑発的な所作で在ったと、後にエディンバラは死んだ目で語った。

 

 

 

 

「フム、まあ構わんが。」

 

 

そしてそんな水面下の争いに見て見ぬふりを決め込む指揮官。彼は鈍感でも難聴でもないし、なんなら感性豊かなはずなのだが、それでもその点に関しては無視を決め込んだ。「それは指揮官としては正解だろうが、男としてはこいつ最低だなー。」と割と辛辣な評価をエディンバラが内心で下したことを、彼は知らなかった。

 

 

 

「では何処から話そうか―――」

 

 

 

話し始めた指揮官を、5人は心なし顔を好奇心に輝かせて聞き入った。そうして、指揮官の話というおかずを一品加えながら、表面上は穏やかに、されど水面下では―――というか机の下ではウォースパイトとベルファストの熾烈な争いを繰り広げつつも、昼食の時間は過ぎていくのだった。




基本的にベルファストは


指揮官呼び→軍人として従っているだけ。含むところは一切ない。


ご主人様呼び→メイドとして従っている。含むところしかない。


って感じで思ってくれれば。まあこのベルファスト、この後自分の本来の基地に戻るんで当分絡みないんですけどね!



鉄血とかいう愛が重い陣営にいたんだから、誰か一人を選んだら選んだで他のヤンデレ艦船が暴れだすからね、見て見ぬふりするのも仕方ないね(レ)。実際暴れて軍として公私混同やらで統制が取れなくなるのが一番やばいし、軍人としては別に間違ってないっていう。
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