連載版「正義の味方」(休載中)   作:トランぺッター

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一応復帰作?です。批評はお手柔らかにお願いします。


胎動

《???side》

 

 

薄暗い部屋。そこに紙をめくる音が静かに広がっている。そこ部屋はコンクリートの壁と天井で窓が無く、まるで地下室のようだった。

 

「見れば見るほど素晴らしい…!ヒトの英知と言うものは…!際限を知らない欲望の塊のようにとめどなく大きくなっている…!」

 

フラスコやビーカーが無造作に置かれた机の上で、本を読みふける研究者のような人物。彼こそが、この聖杯戦争におけるキャスターその人だった。本来のまっとうな魔術師ならここに魔術工房と呼ばれる設備を作る。しかし、彼は違った。

 

「化学の勉強ばかりしていないで、聖杯についての勉強でもしたらどうなんだ?」

 

「聖杯というのも意地が悪い。研究者であるこの私に、一般的な知識しか与えなかった。これは、この世界を解き明かせという挑戦状に違いありません!」

 

部屋の扉に背を預けながらメガネの男がキャスターに語りかける。この聖杯戦争で呼び出されたキャスターは生粋の魔術師(メイガス)ではなく、研究者(アルケミスト)だった。

 

「しかしいいではないですか、私達は研究者。この世のすべてを解き明かすまで静かにしていられない生き物ではないですか」

 

キャスターは問いかける。研究者(メガネのおとこ)に。彼、霧咲柊羽(きりさきしゅう)はそんな言葉に無言で視線を返す。研究者、というのは便利な言葉で霧咲は同時に魔術師だった。

 

魔術師は根源に至るため魔術を用いる。そしてその魔術でどのように根源に至るのか模索している。しかし霧咲は魔術が神秘として匿秘される現代において、文明が築いた化学と魔術を用いて根源に至ることが出来るのか、そんな『異端』とも呼べる研究を行っていた。

 

「そうだな…。キャスターが言うような括りなら私はまだ研究者なのだろうな…。しかしもう、聖杯と言う物に願いを掲げてしまった時点で、俺はもうただの魔術師なんだ」

 

「…どうしても、研究者にお戻りにならないというのなら、そうですねぇ。そろそろ私達も聖杯を取りに行きますか?」

 

そう広くはない部屋にパタンと音が響き渡り、キャスターはそのまま本を懐に入れる。

 

「この世界に召喚されて幾何しか経っていませんが、私の技術と同業者たちの技術がどうなったか知ることが出来ました。ならば聖杯に『何か』を願ってみるのも一興ですね」

 

「頼みますよ…、錬金術師殿」

 

部屋の明かりが消え、キャスターも静かに消えていく。周辺には静寂だけが残されていた。こうして名もなき魔術師、霧咲柊羽は聖杯戦争に参戦を果たす。

 

「まさかこんな歳で、こんな戦争をするなんてな。無駄に長生きするもんですな」

 

「(一言申すようですが、あなたはまだ38ですよ?現代で言えばまだまだ…)」

 

「言葉の綾じゃないですか…」

 

念話というものは、とても便利なもので聖杯戦争におけるトランシーバーのような役割を担っていた。アサシンのようなサーヴァントなどは、この念話をフルに活用し状況を進めていた。

 

「さて、キャスター。これからあなたにアサシンの真似事をしてもらいます」

 

「はっ、仰せのままに従いましょう」

 

風は流れ、魔力は流れる。さも当然のように、空間は揺れ生き物のような『何か』が生まれでる。こうして小さな波紋が世界に投げ込まれる。そして霧咲は、その小さな体を冬木の大きな町に溶け込ませていった。

 

《side end》

 

 

「すべてのサーヴァントが揃ったようだな」

 

冬木市の一角、聖堂教会。その中で大きく飾られたステンドグラスから差し込む光が部屋の一帯を明るく染める中、ただ一人霊器盤の傍で立ちすくむ男がいた。黒い礼服のような服装に身を包み、首に十字架のネックレスを下げた男。俗に、この男は神父と言われる男でもある。

 

「我らが主たる神よ…。どうか彼らに魂の救済を…」

 

神父が祭壇で膝を付き、手を合わせる。ただ、顏に張り付いたその表情(えがお)は到底迷える子羊を導くような明るい笑顔ではなかった。その笑顔はいたずらを考える子供のような、そんな笑顔だった。聖杯戦争のルールに従えば、この男は監督役と言える。しかしその雰囲気は、すべてを裏から操っているような禍々しいものだった。

 

礼拝を終えた後、神父は静かに教会の奥に消えていく。腕にいくつかの呪印を携えながら。

 

「さぁ、愉しませてくれ。楽しい楽しい舞踏会のはじまりだ」

 

 

 

To Be Continued




連載版「正義の味方」
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