連載版「正義の味方」(休載中)   作:トランぺッター

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連載版「正義の味方」


遠い過去の英雄譚

人の世であってもどうしようもない化け物はいる。文字に書き起こされるかつての英雄も、災いと呼ばれる化け物を討ち果たしてきた。その歴史は戦争の中で繰り返された。この聖杯戦争も例外ではない。

 

冬木大橋。それは新都と深山町を結ぶ大きな橋である。しかし、そんな橋も夜の暗闇に包まれおり人通りがぱったりとなくなっている。

そんな大きな橋に、剣を下げた影が二つ。共通しているのは、その影が二つとも人型であるという事と剣を持っているという事。そして更におかしなことは、一方の影は相手の存在を知っているかのように一直線に来たという事であった。

 

「化け物はいつだって人間が討ち果たす。そうだろう?化け物よ」

 

待ち構えていた影である赤い外套を纏った黒髪の男は、腰に下げたサーベルの柄に手をやりながら目の前の「影の持ち主」に目をやる。その「影の持ち主」は騎士のような、そんな風貌をしていた。だがそれ以上に外套の男に「化け物」と言わしたことがある。

 

「その黒い殺気は…、見たことがあるぞ。遠い昔、私が生きていた頃に…。ならば戦いを始めよう!」

 

 

 

戦いが始まろうとしている中、ビル風の強い新都でまた一つの影が動き出していた。

 

「始まったか」

 

スナイパーライフルに目を当ていかにも苦虫を噛み潰したような表情の男が一人。そんな彼はビルの上を拠点にしていた。

 

『状況は動いたかい?』

 

この男、アサシンのマスターである裕は念話でアサシンに語りかける。サーヴァントとマスターはパスで繋がっているため、マスターはある程度状況を把握できるが今回は距離が遠すぎた。

 

「あぁ、恐らくクラスはセイバーとバーサーカーだろう。これで勝負が決まるようであれば僕らの方へ天秤は傾く」

 

このアサシン陣営の勝利条件はただ一つ。外道と呼ばれても勝つ、という事だけだった。勝敗が決した瞬間にその引き金で勝者を射抜くという単純明快かつ外道な作戦をアサシンは実行しようとしていた。

衛宮切嗣は様々な惨状を見てきた。理由もなく殺される人々の涙を。そんな戦場に誇りはなく、一つの信念の下切嗣は引き金を引いていた。裕もどこかの騎士のように、戦場に法と倫理があるとは考えていなかった。自分の信念のために流れる物は、これで最後にするべきという考えは、奇しくもこの二人の共通認識として二人の間に横たわっていた。

 

「(…覚悟は決まっていたけど、やっぱりいい気はしないね)」

 

「(僕たちはそんな戦争に身を置いてるんだ。前の戦争だって魔術師は惨たらしい死に方をしたし僕もそういう風に殺したよ。マスターはそれでいいと思う。最後までそんな人でいてくれればと僕は思ってるよ)」

 

「(…すまない。そういうのは任せてしまって)」

 

「(そろそろ切るよ…、状況が動き始めているからね)」

 

「(あぁ、頼む)」

 

裕の言葉を最後に会話は止まり、アサシンの動きはスナイパーライフルで影を追う動きのみとなった。そしてアサシンの口元は、意味ありげに吊り上る。

 

(こんな状況が懐かしい、と思ってしまうのは僕だけなのだろうな…。いや…あの子もきっとそう思ってるだろうな)

 

経験者は思う。この戦いはあの時と同じなら、きっと自分のような人間が出てくるだろうと。きっと正義を信じ、走り抜けようともがいている人がいるはずだと。

 

(…あの子は正義の味方(ヒーロー)を継いでくれると言ってくれた。…なら僕も、正義の味方と名乗ってみるかな)

 

空想の世界に生きる正義の味方(ヒーロー)は、誰一人殺さずに平和を作り上げていく。しかし、この世界は誰かが平和を享受している時は誰かが不幸に見舞われている。この男は、そんな人でさえ救いたいと願っていた。

 

 

 

 

場所は戻り、戦場というには些か不釣り合いな冬木大橋にて、長く争い(それ)は続いていた。鳴り響く金属音は腕のある者同士の争いであることを証明しているような物だった。

 

「貴様は!本当にアイツに似ているよ!」

 

迫りくる斬撃を避け続け呪詛のような言葉を投げる赤い外套の男。目の前には自分を倒さんとするバーサーカーと思わしきサーヴァントがいる。

 

「―――■■■■■■■■■■■■!!」

 

言葉にならない叫びで迫る狂戦士に赤い外套の男は蹴りを入れ距離を取る。

 

「ハァ…、ハァ…。セイバーというクラスの加護でようやく戦えているな…」

 

赤い外套の男、セイバーは息を整え目の前の状況に目をやる。相手はバーサーカー。そんなものは誰にでも分かる。言葉が通じず、力をふるうのはこのクラスしかいない。

 

「………」

 

「------」

 

刹那流れる沈黙。その間にセイバーは思い出していた。誉れ高き王と呼ばれ、隣に存在した大国と戦い続けた日々を。

 

「懐かしいな…。戦争に明け暮れていたあの時代が…。まるでその再現を見ているかのようだ。そうだろう?」

 

戦争と流血が当たり前だった、そんな時代。この男は王として小国ながらも繁栄した国を治めていた。そんな国に大きな災いが降りかかる。その災いは小国にとって故郷がなくなるのと同義である戦争というものだった。そしてセイバーは軍を交え戦った。あの黒いオーラを持つ男、メフメト2世と。

 

「怨敵よ…。私は戦っている。お前と同じ化け物と。それならば…、私が勝てない道理はない!」

 

「―――■■■■■■■■■!!」

 

第三者から見ると短い数秒かもしれない。しかし当人たちにとっては1時間とも取れる数秒間が、それぞれの思いのたけの叫びで打ち破られる。

 

「終りにしよう!狂戦士よ!」

 

瞬間、濃い魔力がセイバーを覆い始める。それはまともなサーヴァントなら突っ込むのを戸惑う程にも関わらず、バーサーカーはそれを意に介さない。

 

突き断つ(カズィクル)-----」

 

そして魔力の濁流がバーサーカーに向かって流れる。

 

牙城(ベイ)-----!!」

 

それは城だった。かつてセイバーが居城とし、象徴として小国に君臨した大きな城。そこにはドラゴンを象った大きな旗がはためいていた。そしてそこには、杭が出現し、全てはバーサーカーに向かっていく。かつてのこのセイバーの行いの具現がこの城だった。

「―――■■■■■■■■■■■■!! 」

 

向かい来る杭を交わしながら、剣でいなしながら、体に杭が刺さりながらもバーサーカーは不屈の声を叫ぶ。それもそのはずである。彼は戦うためだけに召喚されたのだから。そしてバーサーカーが剣を持ち直した瞬間、彼の体は少しずつ透明になっていく。

 

「この杭は特別製でな。そこに魔力が無尽蔵に吸うものだ。訳もわからず、朽ちて行け!」

 

バーサーカーの体が消えていく。そして、完全に消える直前にセイバーは異変を読み取る。これは霊体化による消失だと。

 

「取り逃がしたか...。これから戦いにくくなるな」

 

『終わった?全くあんたってやつは…。取り逃がした処罰は追って伝えるわ。今は帰ってきなさい』

 

セイバーがしかめ面で呟いた直後、マスターらしき人物の声が響く。こうしてセイバーとバーサーカーの戦いは終了した。冬木大橋に発砲音を残して。




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