連載版「正義の味方」(休載中)   作:トランぺッター

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連載版「正義の味方」


静かな戦い

-----パァン

 

その夜の静寂に似合わない銃声は、あの戦いの決着直後に響き渡った。それはとても無機質なものであったが、確かにそれは殺意を含んでいた。

 

そして音が聞こえて数秒が経った頃、セイバーの頬にわずかな熱がこもる。そこに真っ赤な血を滴らせながら。この弾丸は確かな殺意を抱いていた。この殺意がセイバーの致命的な命中を避けさせる結果となる。

 

「こんなもので…、この私の狙ったというのか…!」

 

こんなもの、と呼ばれる文明の利器はサーヴァントにとって異質なものだった。無機質で、機械的で、そこに人の営みと呼ばれるものはなくただ人を殺す機械。そんな認識を持っていた。皮肉なことに今この時、その文明の利器を使っているのはアサシンなのである。

 

「人間よ!そんなもので私を倒せると思っているのか!」

 

怒りを爆発させるかのようにセイバーは魔力を弾丸が向かってきた方に放出する。こそこそ隠れてスナイパーの真似事をする輩を倒す為に。

 

『マスターの名において命令(オーダー)を下す。帰還せよ!』

 

そこに水のような冷たい言葉がセイバーを包む。

 

「何故だマスター!ここで倒してしまえば…!」

 

『貴様のクラスを言ってみなさい!そして先の戦いで消耗したところに先ほどの弾丸よ?相手はアーチャーか戦争慣れした人間に決まってるわ』

 

そう、分が悪いのだ。仮にサーヴァントだとすればセイバーは追いつめられる。バーサーカー戦で魔力を垂れ流し、宝具を解放した今は分が悪すぎる。そしてリーチの短いセイバーはアウトレンジで攻撃されたらひとたまりもない。

 

「致し方な…」

 

-----パァン

 

二度目の銃声。冬木の方から放たれたこの弾丸は、しっかりとセイバーの肩を貫いていた。

 

「…この外道が!この私が…!」

 

『この分からず屋!呪印を持って命じる。さっさと戻ってきなさい!』

 

瞬間、木枯しのような風が辺りを吹き抜ける。そしてそこに残っていたのは抉られたアスファルトと、ぽっかりと空いた二つの小さな穴だった。

 

 

冬木のビル屋上にて、タバコの匂いをふりまきながらアーチャーと称された男は銃の解体作業に入っていた。

 

「英霊化して少し腕が鈍ったみたいだね…。しかしいい判断材料が手に入った」

 

判断材料、というのはセイバーが解放した宝具だった。中世を思わせる大きな城、杭のような大きくとがった鉄、そしてカズィクルベイという名前。

 

「…僕は誇り高き戦士に縁があるのかもしれないな」

 

タバコの匂いが薄くなり始めた頃、銃の解体は終わりアサシンはその場から消えていた。

 

 

 

「貴方は宝具を解放したにも関わらずサーヴァントを取り逃がし、マスターの命令(オーダー)をも無視しようとした。…言い訳を聞くわ」

 

冷たい怒気が辺りを包んでいる。その場所は、一般的には高級ホテルと呼ばれるような素人目でも分かる大きなホテルであった。

 

「すまないマスター…。戦いになるとどうにも理性が飛びかかる」

 

セイバーにマスターと呼ばれる人物はソファーにどっしりと構え、セイバーを見つめていた。まるで出来の悪い生徒を見るかのように。

 

「スキルの性質上それは致し方ないとしても、その切り替えの悪さはどうにかできないの…?」

 

セイバーは戦いが終わった後もしばらく臨戦態勢が続く。と言うことは、セイバー自身が持っているスキルによって理性が飛び続ける状況が続いてしまう。

 

「………」

 

申し訳なさそうに首を垂れるセイバー。胸に刺さるような沈黙を破ったのは、セイバーのマスターだった。

 

「しかしいい情報も少なからずあるわ。腕のいいスナイパーがマスターにしろサーヴァントにしろこの聖杯戦争に招かれた。この情報を知っておけば不意を突かれることはない」

 

こう推理する人物こそ、御三家の一角である遠坂家の家長、遠坂凛だった。

 

「…なによその目。何か言いたげじゃない」

 

セイバーが不服と言うより心配そうな目で凛を見ていた。それもそのはずで、遠坂の一族はここ一番で大きな失敗をやらかす一族なのだ。セイバーもかくいうこの失敗の被害者だった。

 

「召喚した時に私は、屋根に思い切り叩き付けられる形で現界した」

 

「また失敗するとでも言うの?呪印を使われたくなかったらその減らず口をどうにかすることね」

 

凛の右手には呪印があと二画。それは絶対命令権があと二つ残っている事を示していた。

 

「了解した。地獄へ落ちろマスター」

 

 

 

 

満月の夜、戦いの一幕は終わった。様々な殺意と思惑を交差させながら。

 

 

「カカカ、随分と魔力を持って行かれたわい。だがまぁ、いいものを見れた」

 

暗く嫌な臭いが漂う地下室。その中に四方八方に様々な虫がうごめく中、その中心に齢の行った翁がそこに佇んでいた。

 

「しばらくは動けんが、まぁ大丈夫じゃろうて」

 

翁が手を伸ばした瞬間、虫が集まり魔力が濃くなりはじめる。

 

「カッカッカ…」

 

地下室に乾いた笑い声が響く。まるでこの戦争のすべてを知っているような、そんな声を響かせながら。




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