英雄志望の白兎は財団に収容されたそうですよ?   作:くまもんち

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前回のラストが「白煙の中からコンドラキ博士が〜」となっていましたが、実際はクレフ博士です。
修正しました。

なんで唐突にコンドラキ博士が血塗れになってんだよ?
と疑問に思った方。

ぐうの音も出ない正論です。


分岐する未来 その八

「随分と楽しそうじゃねぇか......こちとら土手っ腹に穴が空いてるってのによ......」

 

白煙の中から現れたのはクレフ博士だった。全身血にまみれ、酷く負傷している。

中には致命傷だって少なくない。

 

「クレフ博士?!その傷は......!?」

 

「そんなことはどうだっていい。後ろの奴をこっちに渡せ。それでこの事件は終いだ」

 

そう彼は要求した。

そうだ、彼は敵だ。

もし、僕がこの場を退いたのなら、どうなるかなんて目に見えている。

 

「......嫌だ」

 

「......あ?」

 

「嫌だ!彼女を、渡したりなんかしない!」

 

「......あぁ、そうか。お前もそいつの改変にかかってんだな。そりゃ当然か」

 

頭を掻きむしり、闘志をゆらめかせる。

だが、当然、ベル・クラネルはLv4の人間。

通常の人間よりも神に近づいた人間であり、あくまで人であるクレフ博士との差は歴然である。

その上、クレフ博士は致命傷をいくつも体に刻み込んでいる。

まともな戦いにだってなりやしないだろう。

 

「話を、させて下さい!」

 

「話すことなんざねぇよ」

 

あくまで不遜な態度は崩さずに、無造作に、歩みよるクレフ博士。

そんな彼に対してベルはナイフを抜く。

それに対して歩きながらクレフ博士は小さな箱を取り出した。

 

「......?」

 

訝しげにベルが警戒を強めると、クレフ博士はその箱の中から一欠片の()()を取り出す。

そして、それをシャツの袖を捲り、腕に押し付けた。

と、クレフ博士の姿が黒いモヤに包まれ始める。

 

「!?」

 

変化は数秒だった。

現れたのはクレフ博士とは似てもつかない筋肉質で長身の男。黒い髪に灰色の目、オリーブ色の肌。

何よりも全身に刻まれた刺青が目立つ。

 

「......最悪だ」

 

ぽつりと呟かれる。

 

「よりにもよって、こいつを使うことになるとはな......。だが、これでいい」

 

「ッ!?」

 

濃密な死の気配に思わず全身が総毛立ち、咄嗟に魔女を抱えて後ろに飛び退く。

 

(見えなかった......!)

 

先程までいた所には1本の黒い剣のようなものが突き刺さっていた。

光を吸い込むような深い黒色だ。

 

「避けんな。手元が狂う」

 

ズボリ、と床に深く刺さったそれを事も無げに引き抜き、こちらに向ける。

 

「もう一度だけ言ってやる。後ろの奴を渡せ。二度目はない」

 

Lv4の自分にも捉えきれない速度。

それは、絶対的な敗北を意味していた。

ベル・クラネルが今まで様々な強敵と渡り合ってきて生き残ってきた理由の一つにその速度がある。

力でも耐久でも負けていても速度だけは膨大な()()のおかげで競り合ってきた。

その、速度すら劣っているのだ。

つまりは、逃走も許されないということ。

 

(どうすればいい?戦っても勝てない、逃げることなんて許されない......!)

 

それでも。

それでも、ベルは。ベル・クラネルは。

 

(退けるわけなんか......ないだろっ!!!)

 

その生き方を曲げることなんかはできっこない。

 

少年はナイフを構え直す。

あの人から教わったように。

あの人から教わった技術を頼りに死地へと踏み込む。

 

「......腕の一、二本は覚悟しとけよ」

 

クレフ博士いや、悪魔(アベル)の似姿は眦を釣り上げ、こちらを睨みつける。

 

矜恃と、憎悪のぶつかり合いが始まった。

 

――――――――――――――――――――

 

「!?」

 

回し蹴りがベルの側頭部に襲いかかる。

恐ろしい勢いを持ったそれはまともに当たれば彼の頭蓋を容易に破壊することだろう。

かくして彼がとった行動は―――

 

「うぐっ!?」

 

両の腕を使った防御、であった。しかし、勢いは殺し切れずそのまま壁に叩き付けられる。

財団謹製のボディアーマーは体を守ったが、衝撃までは殺し切れず、腕に痺れが走る。

それと同時に豪奢な家具の数々は既に面影もなく、教会の地下室は広いコロシアムのような場所に変わる。

こんな時にも関わらず一抹の寂しさを感じるが、腕が動き、辛うじて立ち上がれる事を確認する。

 

斬る、蹴る、打つ、弾く、いなす、そらす、防ぐ。

 

ありとあらゆる選択肢の中で常に最善策を掴みとらなければ、負ける。

選択を誤ったときがベルの敗北だ。

だが、それはジャンケンで勝ち続けろ、と言っているようなものだ。

普通であれば不可能でしかない。

 

だが、この場にいるのはベルのみではなかった。

 

――――優秀な魔法使い(小さな魔女)がいたのだ。

 

――――――――――――――――――――

 

「ピオリム!スカラ!クイック!バーハ!アストロン!リベホイミ!おまけにバイキルト×3(スーパーハイテンション)!」

 

大量のバフ魔法がベルの体を覆う。様々な色が混合したその光は赤みを帯びた白色の光にへ。

 

「これは......?」

 

見れば、肩を上下させながら、魔法を唱え続ける魔女の姿があった。

相当消耗しているのだろう。

心の中で感謝を唱えつつ、駆け出す。

 

「「!?」」

 

驚愕は、互いに同時であった。

床にめり込む程、強く踏み込まれた足は爆発的な加速力を持って少年を矢に変えた。

 

ギィィンと、硬質な金属音が響き渡る。

クレフ博士が真正面からそれを受け止めたのだ。

受け止める、という判断以外が出来ないレベルの攻撃だった、ということだろう。

 

(これなら......!)

 

澄み切ったナイフの清音と風を切る黒刀の轟音がぶつかり合う。

それは互いの能力が拮抗している、という証であった。

 

「ファイアボルト!」

 

ベルの十八番の速攻魔法。

至近距離から放たれたそれは事前に、知っており警戒していたクレフ博士に取って大したダメージにはならなかった。

だが、目隠しになるのを嫌って後ろへと飛び退く。

 

(そこっ!)

 

「ファイアボルトォオオ!!!」

 

1秒分のチャージ。

微かになった鈴の音は確かにベルの魔法を大砲へと変えた。

 

「......」

 

もちろん、これで勝ったとは思わない。

この程度で勝てるわけがない。

 

揺らめく黒煙が半分に、断ち切られる。

その風圧がこちらにまで届き、頬を撫でる。

 

「第2ラウンドと行こうぜ......なぁ、ベル?」

その手に持つ黒刀は大剣へと、姿を変えていた。

 

 

 




作者の創作は基本カッコイイ設定を頑張って付け足そうとしているので、基本的にキャラが魔改造されます。
改悪か改良かは個々人かもしれませんが、
僕は好きです(断言)

だって、ボスキャラの第二段階とかで武器が切り替わるのとかカッコイイじゃん......。ボソッ

あ、なんでクレフ博士が急にアベルになったかは次回。

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もし、ツイートはしても多分作者クソつまらん日常のツイートと執筆報告だけだと思います。

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