英雄志望の白兎は財団に収容されたそうですよ?   作:くまもんち

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純文学読み始めたんですけど皆さんおすすめとかあります?
おすすめあれば教えて頂けると作者歓喜。


分岐する未来 その九

大剣の長さはおよそ1メートル半ほど。

先程までとは比較にならないリーチ、そしてその質量もナイフによる直接的な防御という選択肢を奪った。

 

それをまるで棒切れのように振りながら振り心地を確かめるクレフ博士。

風を切る度に轟音と風圧がこちらに届き、冷や汗が噴き出す。

対策を考える。

と、クレフ博士が軽く屈伸をしたと思った瞬間、まるで魔法のように眼前に現れる。

 

「――っ!?」

 

「これはれっきとした技術だぜ?」

 

前傾姿勢のまま放たれた大質量にナイフを添え、咄嗟に後ろに飛ぶことで勢いを殺す。

ブーツの底が擦り切れ、仕込まれた内側の鉄板が少し露わになり、床と擦れて火花を立てるも止まらない。

再びベルは壁面に叩きつけられる事になった。先程よりも広い場所であるにも関わらず勢いを途中で殺しきることが出来なかった、といえば威力の程はわかるだろうか。

 

「うぐっ!」

 

思わず苦悶の声が漏れるが魔女のバフ魔法や勢いを殺す余裕があっただけ先程よりも幾分かはマシではあった。

 

だが、その隙を見逃すほどクレフ博士は優しくはない。

体制を整えさせまい、とベルの元へと一直線に飛び込んで行き、そのまま横一文字に大剣が振るわれる。

ベルも咄嗟に前転をして回避には成功するが次手への対応は遅れる。

 

次は避けた先へ振り返りざまの大凪ぎ。

回避。

 

勢いを利用しての縦振り。

ナイフの腹でいなす。

 

そうして傍から見ればベルが防戦一方でありながら何とか拮抗しているようには見えるが戦いのバランスはどんどんクレフ博士の方へと傾いていた。

そのまま数合ほど打ち合ったあと、変化は突然訪れる。

大剣を打ち払い、後退し、一声。

 

「ファイアボルトッ!」

 

炎雷6連射。現在の魔力の3割を込めたそれは2発が直撃し、それ以外は床を少し焦がしただけであった。

 

「悪手だぜ?それは」

 

「なっ!?」

 

魔法を使った直後の僅かな倦怠感を感じる間もなく背後から振り下ろされる凶刃に絞られた選択肢は

―――防御だった。

 

少年と悪魔とのステータスの差は圧倒的。

力に至ってはどう繕いようもないほど隔絶している。

ナイフを掲げてはいるものの、数瞬後に腕か命を失うのは間違いないだろう。

 

(ごめんなさい......!神様っ!)

 

己の神への懺悔と共に、血飛沫が舞った。

 

――――――――――――――――――――

 

「......?妙だな?」

 

管制室。一人のCクラス職員がモニターを見ているとダンジョンの変化に気づく。

 

それは小さな揺れであった。

その微かな揺れは次第に一定のリズムで大きくなっていく。

 

「お、おい、あれ......」

「どうなってんだ......?」

 

彼のみならず、他の職員達も少しずつ気づき出す。震度3ほどだろうか。だが、この場にいる全員は全員が例外なく、地震による影響ではないと気づいている。

 

「これは......心臓......?」

ポツリ、と誰かが呟いた。

そのワードでダンまちを読み込んでいた職員全員が青ざめた。

 

ダンまち13巻。そこに出てくる()()を知っているからだ。

 

ダンジョンの免疫機能にしてベルの片腕を奪った怪物。

 

ダンジョンはなお脈動を続ける。

何かを産み出さんとするように。

 

――――――――――――――――――――

 

「あ......?」

 

呆けたような声を出すクレフ博士。

 

自分に振り下ろされていた黒大剣はない。

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

白い骨や神経、真っ赤な肉の断面をも加速した思考速度はしっかりと目に焼き付けてしまった。

その直後、噴水のように血飛沫が上がる。

 

「なぁっ!?!?」

 

「え......?」

 

理解が追いつくと共に困惑も襲ってくる。

何故?何が起こった?

クレフ博士が僕そっちのけで後ろへ飛び退く。

 

「なんだ......そいつは」

痛みに対する絶叫などはなく、代わりに疑問が投げかけられる。

クレフ博士の目は動揺してはいるけども目線は僕の後ろを指していた。

恐る恐る後ろを振り向くと、人間大程のサイズの異形がおり、口に悪魔の刺青のついた右腕が大剣ごと咥えられていた。

 

その怪物には肉はなかった。ダンジョンの生物としての最低限の武装と生命活動の維持に必要な外装としての骨と魔石。それだけがその怪物だった。

だが、その外装は凶悪なまでの鋭さと冷たさを放っていた。

 

龍のような頭骨と大型獣のような爪。

胸部には紫紺の宝石が見えるが、四足歩行のせいで狙いを付けるのは至難の技だ。

 

「おおおぉ!!!」

 

観察を続けているとクレフ博士が左腕に大剣を出現させ、掴み取るとそのまま異形に斬り掛かる。

対する異形もそれに応じるかのように飛びかかる。

当然のように打ち合う異形に瞠目する。

 

馬鹿みたいに僕が呆けていると、ポケットの中に入れていた通信機がノイズ音を発する。

慌てて取り出すと、意外にもブライト博士のクリアな声が聞こえる。

 

『ベル君!ベル君!聞こえるかい?私だよ!ブライトだ!直ぐにそこを離れるんだっ!そいつは多少姿は違うが恐らくジャ■■ノー■!今のベル君では勝ち目がない!逃げるんだ!』

 

怪物の名前はその瞬間だけノイズがかかってしまい、分からなかったが目の前の戦いを見ていれば嫌が応でも勝ち目がないことなんて分かる。

左腕が霞む勢いで怒涛の攻めを繰り出すクレフ博士。その速度は自分を相手にしていた時とは比較にならない。自分はあれで手加減されていたのだ。

だが、それを怪物は上回った。

骨だけの体にどこにそんな力があるのかアクロバティックに回避を続ける。

天井、床、壁。全てを足場として縦横無尽に駆け巡る。

その三次元的な動きは時としてクレフ博士の知覚を振り切り、浅い傷を刻むこともあり、全身に薄い切り傷を刻んでいた。

 

「はっ、はっ、はっ......」

 

肩を上下して息をするクレフ博士。

恐らく、血を出しすぎたのだろう。

貧血で視界も霞んでいるはずだ。

 

『おーい!ベル君?そっちの状況が分からないんだ!伝えてくれると助かるんだけど!』

 

その声にはっ、として急いで応答する。

 

「クレフ博士が怪物と戦ってます!」

 

『はぁ!?嘘だろ!?ジャ■■ノ■トとあいつが?生身でやれるわけないだろ!』

 

「それが......今は全身に悪魔の刺青をした男の姿になってます」

 

『アベルゥ!?......あっ、034かぁ!デビルマーンッ!ってか??ふざけんなぁ!いや、そんなことやってる暇じゃない!とりあえず魔女ちゃんはどうなってる?』

 

「あっ!」

 

戦いの余波が及ばない所にいると確認してからは戦闘に集中しすぎていて忘れてしまっていた。

 

視界に捉えた彼女は―――

 

酷く青ざめた顔で倒れていた。

 




SCP-034
黒曜石のナイフ。
ナイフで対象の皮膚を切り取り、それを体に押し付けると個人にほぼ完璧に変身できる。
その際、強さもほぼ完璧に模倣する。
ただし、模倣には対象が生きていることが条件。

使いようによっては面白......恐ろしいことになるSCP。
ブライト博士に渡しては行けない(戒め)

http://scp-jp.wikidot.com/scp-034
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