英雄志望の白兎は財団に収容されたそうですよ?   作:くまもんち

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SCPを最近見てたらなんか凄い書きたくなった。


SCP-239-A
未発見領域


「はあっ!」

 

手にもつナイフを構え、目の前のコボルトの群れに突貫する。Lv1の冒険者ならば間違いなく、自殺行為である。しかし、彼は2度器を()()させた身。今頃コボルト程度に遅れをとる彼ではない。

 

「ゴギャ!?」

 

初めは自分達の方が数で優勢と見て威勢よく彼に突っ込んで行ったコボルト達も先陣を切って彼に飛びかかった群れのリーダーが一瞬で喉を掻き斬られるのを見て尻込みする。その隙に群れの真ん中に飛び込み、鮮血を飛び散らせながら暴れまわる。

ーーー白い線が走るかと思うとその白を映えさせるかのように紅い華が咲く。時には魔石を砕かれ、灰となり、圧倒的な実力差を示すかのように散っていく。

そうして芸術的と言えるほどに1匹残らずコボルトを殲滅する。

 

 

彼は、ベル・クラネル。Lv3の冒険者だ。

 

 

 

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

 

今日、彼はアポロン・ファミリアとの戦争遊戯を経て、昇華した己の力を確かめる為に迷宮に訪れていた。

成果は上々。主神から授かった短刀もLvが上がったことに従って切れ味を大幅に増していた。

 

「......ん?なんだあれ?」

 

壁に今まで見た事のない穴があるのを見つける。

 

 

「まさか......未発見領域?」

 

未発見領域。ギルドの地図にも載っていない、その名の通り、未知の領域。その領域を前にベルは少し考え込む。

 

(未発見領域......。まだ多分誰も入ったことがないだろうな。......うん。決めた)

 

彼は穴の方に向かって歩き出す。

普段ならば絶対にしないような行い。しかし、彼は普段とは違い、ソロで活動しており、仲間の事を考える必要がなかったのでーーーもちろん自分がいなくなれば主神や仲間が悲しむことは理解した上だがーーーつまり、1人なので責任による判断能力が落ちていたのだ。

次に、主神から公の場で明かされた、3億ヴァリスという途方もない莫大な借金。それも自分に主神が贈ってくれたナイフのための借金。返済にはヴァリスを稼ぐ必要がある。そのため、未発見領域ならお宝があるかもしれない。という考えが彼の判断を鈍らせた。金とはげに恐ろしきものである。

最も大きな理由はーーー彼も冒険者である。ということだろう。つまりは冒険心が疼いたのだ。アポロンファミリアとの戦争遊戯のせいで迷宮にもしばらく潜っておらず、それまでも冒険と言えば命懸けのものばかりであった。未知に心惹かれてしまったのだろう。

 

ーーーその行いが人生最大の後悔に繋がるとは知らず。

 

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

 

「うわぁ......!随分と雰囲気が2層と違うなぁ!」

 

ベルは穴の中に入り、そのまま歩いて30分ほどが経っていた。穴の中は入口から見たほど暗くはなく、壁には謎のほのかに発光する神聖文字に似た文字のようなものが彫られていた。

 

「うーん。未探索領域なのに何もないなぁ......」

 

30分ほど歩いたにも関わらず、モンスターにも遭遇せず、アイテムの1つもないことから、ここは広い安全領域なのかもとベルは当たりを付ける。

 

「......まあ、何もなかったけれどギルドにここのことを言えばお金も貰えるし、いつもと違ったダンジョンが味わえて良かったかな」

 

いつもと違った雰囲気を楽しんだベルはもう少し進んだら帰ろうと考える。

 

「うん?」

 

ベルがそのまま歩いていると、ふと目の前に少し広めのルームがあるのが確認できる。

 

「何かあるのかな?」

 

ヘスティアナイフを抜き、構えながら慎重にルームの中に入る。しかし、懸念していたモンスターの存在も、期待していたアイテムの姿もなかった。

 

「ちょっと期待してたんだけどなぁ......」

 

苦笑しながら構えを油断なく解くと、ルームの真ん中まで歩き、本当に何もないことを、そして、ここが行き止まりであることを確認する。

 

「キリがいいから帰ろうかな」

 

帰ろうと1歩足を踏み出した瞬間、地面が唐突に魔法陣を描きだし、ベルを閉じ込めるような構図になる。

 

(ッ!?トラップ!?)

 

魔法陣の外へと走ろうとするも、足が動かない。どうやら足に光の触手のようなものが絡みついているらしい。

 

「くっ!」

 

何とかLv3の脚力にものを言わせ、触手から脱出に成功するも、魔法陣が急速に光を増し、ベルは光に包まれた。

 

 

ジャイアントキリングで名を上げたヘスティア・ファミリアの団長、ベル・クラネルはこの日を境に誰も姿を見なくなる。

 

 

三日後ーーー

 

「嘘よ!嘘よ!嘘よ!ありえない!魂もないなんて!」

 

とある美神は天界にいた頃でもありえないヒステリックな声をあげ、

 

ーーー

 

「ベル......くん......冗談、だろ?」

 

彼の主神は己の愛しの眷属との繋がりが切れたのを感じ、傷心により、屋敷の一室に引きこもり、

 

ーーー

 

「ベル様ベル様ベル様ベル様。ありえないです。ベル様が死ぬなんて。あぁ......分かりました。リリが不甲斐ないからですね。きっと......リリが私が......強くなれば戻ってきてくれますよね......ベル?」

 

 

彼に救われたパルゥムは心を病み、ひたすらに強さを求めるだけの鬼と化した。

 

ーーー

 

「ベル......お前が死ぬわけなんてねぇ......!お前はただ待っているだけだ!俺の最高傑作を!ヘファイストス様を!神を超える武器を!」

 

彼に血ではなく、腕を買ってもらった鍛冶師は恋慕の念を捨て、恥も外聞もなく、最高の武器を作る為に尽力した。

 

ーーー

 

ギルドの受付嬢が酒場のエルフがヒューマンが、ヘスティア・ファミリアと親交のあるファミリアの面々が、リヴィラの街の冒険者が、彼の消失に様々な反応を見せた。

 

そして、彼の憧憬とした、金の剣姫は、

 

「ベル......頑張ってね......」

 

何かを察したかのように一言呟いた。

その、呟きはオラリオの住民の心を表すかのような曇天に吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

 




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