BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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【羽沢つぐみ】お兄ちゃんの、ばか。
2019/09/17 居残り


 

 

 

「……ちゃん。…ちゃん、…きてー。」

 

「んん…。」

 

 

 

誰かが俺を呼ぶ声がする。頭上から。

折角安らかな眠りを堪能しているというのに、一体誰が邪魔しているというのかね?

 

 

 

「……ぅ、よだれ…れちゃってる……」

 

「んむぅ…。」

 

 

 

今度は口元を何かで擦られる。なんつー斬新な起こし方だ。摩擦熱で焼たらこ唇が出来上がるわ!

…何だったか、この邪魔が入るまで素敵な夢の中に居たような気がするんだ。…窓から差し込む斜陽に心地よい涼風。

あぁなるほど。今俺の睡眠を妨げてくれているのは"獏"だな。…かの有名な妖怪のアレ。

 

 

 

「もー………つまで…るのぉ…。」

 

「…んぁ?」

 

 

 

いつまでも止まない騒音に薄目を開ける。獏の正体、この目に焼き付けたるわ!!

 

 

 

「…出たな獏!」

 

「ひゃっ!?…わ、わたし獏じゃないよっ!」

 

 

 

クワッ!と見開いて見せた俺の双眸が映したのは獏とは程遠い、何とも珍妙なポーズで震える小動物だった。

 

 

 

「……それは一体なんのポーズだ?…つぐ。」

 

 

 

俺の双子の妹にして隣のクラスの人気者、羽沢つぐみだ。…俺からしたらただの地味で普通な子なんだが、これでどうやら結構モテるらしい。

顔がそっくりだとか言われる割には、俺は全くモテないんだがなぁ…。

あ、そうそう。俺とつぐは俗に言うところの"一卵性双生児"なんだけど、一卵性で異性の双子が産まれることってかなり珍しいことだそうな。

…ま、どうでもいいか。

 

 

 

「お兄ちゃんが急におっきい声出すからでしょ!!」

 

「……つぐが俺の眠りを妨げたからそうなったんだろう?…何でも人のせいにするのは良くないぞ。」

 

「うぅぅぅ…わたしが悪いみたいになってるし…。」

 

 

 

そもそも俺は何故こんなところで眠ってるんだ?

放課後はタイムアタックが如くダッシュで帰るのがポリシーだというのに…。

 

 

 

田崎(たさき)先生に言われたやつ終わったの?」

 

「なんだそれ。」

 

「お兄ちゃんが言ってたんでしょ?お昼休みの時。」

 

「そんなこと言ったっけ。」

 

 

 

田崎…うちのクラスの担任だな。何だかムカつく顔面の狸みたいな親父だ。アレに言われたこと…って。

 

 

 

「あぁ、あれね。うんうん、あれならもう終わったよ。だから帰ろうつぐ」

 

「うそでしょ。」

 

「うん。」

 

「単位が足りなくなるからって、追加の課題出されてたでしょ?」

 

 

 

あー……うん、それだ。

クソがつくほど真面目な(つぐ)と違って、俺はどっちかっていうと不良な方だ。アウトローって響きはかっこいいと思うけど、ヤンキーはいけ好かない…そんな感じ。

学校には来ているんだが、授業中は専ら悪友とどこかで時間を潰しているってところだな。

その様子を教師陣に密告(チク)っているのは他でもなくこの妹なんだが。

 

 

 

「あったなぁ…そんなの。」

 

「遠い目してる場合じゃないよっ!お兄ちゃんがちゃんとやらないと、わたしに文句が来るんだからっ!」

 

「はぁ?それまたどうして。」

 

「家が同じだからでしょっ!!」

 

「なーる。」

 

 

 

その"課題"ってのは恐らく、机の上で水没しているこのプリント類の事だったと思うが…。どうも机で寝ると涎が酷くていけねえ。

まぁどうせ出すつもりもないしいーんだけど。

 

 

 

「ま、今日の所は帰ろうぜ?」

 

「…ちゃんとおうちでやる?」

 

「やるやる。任せとけ。」

 

「……信用できないなぁ。」

 

「血の繋がった兄妹を信じられないとは、冷たい世の中になったもんだなぁ…。」

 

「血が繋がってるからよくわかるの。…はぁ、しょうがないなぁ。」

 

 

 

わざとらしく溜息を吐く妹。身長差の関係で表情は見えないが、やれやれ的な顔を全力でしているに違いない。妙に演技派なんだこいつは。

…おっ、つぐって旋毛二つあるんだな。

 

 

 

「ご飯食べてお風呂入ったら一緒にやろ?わたしもお手伝いするから。」

 

「つぐはつぐで自分の勉強があるだろ?…こんな兄貴は放っといていいから、そっちやんなさい。」

 

「…優しそうなフリしてるけど面倒臭がってるだけなの、バレてるからね?」

 

「まぁじかぁ!…お前ってホントエスパーなっ!…よっ伊東!」

 

 

 

ぱぁんっと口でSEを付けつつ、ピストルのようにした両手をつぐに向ける。

 

 

 

「ふざけてもダメです。」

 

「だめかぁ。」

 

「伊東じゃないです。誰ですか。」

 

「そっかぁ。」

 

「お勉強ちゃんとしますか。」

 

「…するかぁ。」

 

「んっ。…じゃあ帰ろっ、お兄ちゃん。」

 

「うーん、そうするかぁ。」

 

 

 

妹が俺に対して敬語で喋りだすときは

「そろそろ冗談抜きで真面目に喋ろうな?しつこいんだよお前。」って時だ。

実際に聞いたわけじゃないけど、これだけ一緒に居りゃ嫌でもわかる。

 

 

 

**

 

 

 

夕暮れ…いや、もう日は沈んだか。そんな薄暗くなった中を妹と並んで帰る。

帰った後には地獄の課題。文字を読むことで発症するアレルギーの恐怖に怯えながらも、つぐとの他愛もない会話は自宅まで続いた。

 

薄明りの中、うっすら伸びる、長さの違う二つの影。

そんな、放課後。

 

 

 

 




少し短い立ち上がりですが羽沢つぐみ編、新シリーズです。
肩の力を抜いて楽しめるようなお話にしたいです。




<今回の設定>

〇〇:主人公。高校2年生。
   一卵性双生児で別性という珍しい双子の片割れ。顔はつぐみにそっくり。
   特に身長は高くないが、つぐみが著しく小さい為どうしても差が生まれる。
   一応例の面々とは幼馴染だが、あまり関りがない。

つぐみ:天使のような妹。いや、妹として生まれた天使?
    主人公の双子の妹。とても小さい。
    勉強は出来るが運動はちょっと苦手。
    Afterglowは結成されておらず、幼馴染の面々ともあまり深い関りは無い。
    主人公の悪友ともそこそこの面識はあるが、不良になった兄はちょっと好きじゃない。
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