BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 - 作:津梨つな
2020/05/29 わからないんだもん。
フラれた。
マジ意味わかんない。
**
「――それで、いきなりチャットでさ!?「重いから別れよう」だって!!酷くない!?」
お昼休みという事で食事もそこそこに友人の席で愚痴を零してみる。
昨日の夜、付き合っていた男の子…ええと、名前はよく覚えてないけど、すごく優しい子…から連絡が来て、いきなりフラれたんだ。
重いって言うのがどういうことかわかんないけど、いつも別れる時には重量の話をされる気がする。で、意味が解らなくて、付き合いの長い同級生の子に話を聞いて貰ってるんだけど…。
「あはは……チャットかぁ。…○○、今回は一体何した訳?」
「何もしてないよ!……リサに言われた通り、あんまり連絡しないように気を付けたし、意見も聞いてあげたもん。」
「そっかぁ。ちな、今回はどれくらい続いたの?」
「えと……二週間、くらい。」
「……なかなかうまくいかないねぇ。」
恋愛相談、とでも言うのかな。事ある毎に相談に乗ってくれるリサについつい甘えちゃってる気はするんだけど、他に頼れる知り合いもいない私にとってはお母さんみたいなんだもの。
友達かと訊かれたらどう答えていいかわからないけど、少なくともリサは私の事を嫌ってはいないみたい。
あと、二週間は新記録。いっつも男の子と仲良くなっても一週間もしないうちに嫌われちゃう。何がいけないんだろうってリサと話してはみたけど…デート?とかプライベート?とか、考えることが多すぎてパニックになっちゃうよ。
すっかり恒例になっちゃった流れといつも通り苦笑いするリサ。これまた慣例通りで、いつもはぐらかされる質問をまたしてみる。
「リサは?」
「ん?」
「男の子とそういうの…ないの?」
「んー、今はない…かなぁ。」
ここ、羽丘女子学園は名前の通り女子校。…にも関わらず、何処で知ったのか連日のように男の子が詰めかける程モテ女子な彼女なんだけど。
この手の質問はいつも適当に流されちゃうし、リサ自信あまり興味も無さそうなんだよね。何なんだろう。
「アタシの事なんかより、○○が上手くいくこと考えないと、ね?」
「リサ可愛いのに。」
「ははは…ありがとね。○○はアレだ、まずは友達作りからじゃない?」
「ともだち?」
「うんうん。男子でも女子でもいいけど、ゆっくり関係を築くってのも大切だと思うんだよね。」
……ゆっくり?
私にとってみれば、そもそも友達ってのが何なのか分からない。明確な基準があるわけでも無いし、定義を訊いたって皆バラバラの事を言うし。
「んん……私と、リサって、友達?」
「ん、そだね。」
「じゃあ、リサとよく一緒に居る…ええと、」
「
「そそ。…リサとゆきなは友達?」
「んぅ。…友達…うーん…。」
「仲悪いの?」
「や、逆…かな。アタシと友希那はほら、昔からの縁ってのもあるし、もうちょっと身内感が…ね。」
「ふーん。」
友達でも付き合いが長いと身内になるんだ。よくわかんないけど。
…でも、私とリサが友達っていうのはどういう事なんだろう。だって、リサとは
「じゃあ、リサとゆきなは、友達以上の事をしてるの??」
「以上!?……以上っていうと………ッ!?ち、ちが、アタシは、友希那とそんな…っ!」
「???どしたの??顔赤いよ??」
「なな、何でもない、から!」
「??」
友達を越える…いや、友達から変わる?
よくわかんないけど、私が思い描く友達とリサが思い浮かべる友達は何かが違っていて、友達とする何か…以上のソレは顔が赤くなっちゃう程恥ずかしい事…って理解で、いいのかな。
多分、私は無知なんだと思う。友達とか、男の子の話とか、リサはちゃんと聞いてくれてちゃんとお話ししてくれるんだけど、他の人相手だと馬鹿にされたような感じで話を切り上げられるのが大概だし。…私がおかしいかもしれないけどね、馴れたんだ。
未だ真っ赤な顔で「うひゃー」とか言ってるリサの顔を眺めていれば、教室の後方ドアから女の子がやって来る。その子はスタスタと真っ直ぐ歩いて来ると悶えているリサの肩を軽く叩いた。
「うわっひゃぁっ!?…ゆ、友希那ぁ!?」
「………何をそんなに驚いているの?」
「な、ななな、何でもない!何でもないよー!何も、変なこと考えたり、してないよ!?うん!!」
「…??」
すごく、わたわたしてる。
どうでもいいかもしれないけど、ゆきなってこんな時でも無表情なんだ。前々からあんまり感情が出ない子だなーとは思ってたけど。
「よく分からないけれど、話があるわ。リサ。」
「う、うん!何かな??」
「…その、
「あー……わかった。…えと、○○?ごめん、ちょっと用事出来ちゃったから、また後で話聞くね?」
「あ、うん。…いってらっしゃい?」
「ごめんね~。」
ステージ…きっとリサ達のバンドの事だろうな。リサと、それからゆきなも、ろ…ろしあ??みたいな名前のバンドを組んでるはずだから。
去っていくリサの背中に少し寂しさを感じつつ、無意識の内にゆきなの手を掴んでしまっていた。
「……なに?」
「え、あ、ええと…」
「用が無いのなら離してもらっても――」
「…ゆきなは!」
「――?なに。」
「ゆきなは、リサと、友達、なの?」
考え方は人それぞれ、それなら訊く相手は多い方がいい。
だからこそ、リサにした質問を繰り返してみた。
「……そうね。…友達…という言葉では軽いわね。」
「軽い?」
「ええ。…今の私にとって、リサは掛け替えの無い存在だもの。ただの友達とは…違う…ように感じているの。」
「………身内感…ってやつ?」
「身内感?……その言葉は初めて聞いたけど、家族…に近いと言えば間違いでは無いわね。」
「……。」
「質問には答えたわよ。…それじゃあ、行くから。」
「ぁ……っ。」
半ば強引に腕を振り払ったあと、少し早足でズンズンと歩いて行くゆきな。…怒ったのかな??…そりゃ、いきなり腕掴んだりしたのは悪いと思うけど、そんなに怒ることないよね。
二人の姿が見えなくなってからも、頭の中ではさっきの話がグルグルと回っていた。
友達…身内…家族…。それに、どうやら友達=軽いらしいってこと。掛け替えの無い人が家族なんだとしたら、私にとっての家族って誰だろう。
もしかしたら私がすぐに捨てられるのも――
「おぅい、○○ー。」
また私の悪い癖で、一つ哀しい事を想像すると連鎖的に気持ちが落ち込んで行ってしまう。そんな、思考のデフレスパイラルに堕ちかけたとき。声を掛けてきたのは見覚えのある顔だった。
「あ……ええと、数学の…」
「何だよー、三年にもなってまだ名前覚えてないのかー?」
「あはは……ごめんなさい…」
「先生の名前くらい、いい加減覚えてくれよなー?…
常盤…先生。この学校の中では関りが深い方になると思う。
けど、男の人の名前と顔を覚えるのは、苦手だ。友達になら簡単に、なれるのに。
「…それで、常盤せんせ、何かあった??」
「おう。…実は今日から暫く嫁が実家に帰るらしいんだよ。…○○、お前今は何処で暮らしてる?」
「えと…アパートの、自分の部屋。」
「そか。なら今は
「………ああ、成程。」
要するに、先生は私とまた友達になりたいって事ね。前に彼氏になってくれるのって訊いた時は結婚してるからって断られたけど、それから偶に友達だったりした関係。
奥さんが居ないってことは、先生もひとりぼっちって事だもんね。
「
「そうなんだよー。だからまた…な?頼むわ。」
「うん。……ねね、せんせ?」
「なんだ?」
「せんせと私って、友達??」
「…ああ、そりゃ勿論だ。…んじゃ、放課後、いつものところで待っててな?」
「わかった。」
友達も彼氏も彼女も奥さんもお嫁さんも旦那さんも。色んな呼び方があるけど違いなんて分からなくて。
それでも男の人は友達になったら仲良くしてくれるから…一人にしないで、一緒に居てくれるから。
「…リサこそ、友達いっぱい作ったらいいのに。」
簡単に出来るのに。変なの。
世の中には不思議がいっぱい。
<今回の設定>
○○:色んな事に無知な女の子。
仲良くしてくれるリサと喋るのが好き。
最新型のスマホは友達からの誕生日プレゼント。
寒いよりは暑い方が好き。
リサ:クラスの中心…とまではいかないまでもそこそこの人望とそこそこのコミュ力を
備えている。
バンドの方も順調で、友希那が真剣に音楽と向き合う時、居合わせるのが幸せ。
遊んでそうな外見とは裏腹に子供っぽい内面も多々見える。
友希那:クール。
人に触れられるのがあまり好きではない。
常盤:数学教師。
数年前に二歳年下の女性と結婚。そこそこに幸せな家庭を築いているらしい。
主人公も含め数名の生徒と仲が良いようだが…