BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 - 作:津梨つな
「なー…。」
カチャカチャカチャ……カチッカチカチッ…
「…。なーって…。」
カチッカチッ…………カチャカチャカチャカチャ…
シャカシャカシャカシャカ…………
「チッ……えいっ!」
「あ"っ!?おまっ!?……あぁ!!」
死んだ…。
折角、ランクの昇格を賭けての一世一代の大勝負だったのに…。
「てめぇ!邪魔すんなって言ってんだろうが!!」
「あぁ!?折角私が来てるっていうのに、ヘッドホン付けてゲームし始めてもう何時間だよ!?」
「今日は忙しいって言ってあっただろうが!」
「うるさい!それでも私は構ってほしいんだよ!それくらい分かれバカぁ!!」
今日は忙しい、と前以て言っていたというのに。
有咲によって外されたヘッドホンは、ゲームの中の俺の聴覚を…奪った。
**
「なぁ。」
「…………。」
「なぁって。」
「………フンッ」プイー
機嫌が悪い。
事前に言ってあっただとか大事な一戦だったとかそういうのは一切関係ないらしく、全面的に俺が悪いとのことだった。
今もベッドの上で、機嫌の悪さが伝わるよう壁に体を向け、無視していますよアピールをしていらっしゃる。可愛い。
「…どうしたら機嫌直してくれる?」
「………自分で考えたら。」
「……あ、ゆで卵あるけど食べる?」
「いらねぇ。」
「…せんべい、食べる?」
「いらねぇ。」
「……ホットケーキ作る?」
「なんで悉く食べ物で攻めて来るんだよ…」
「有咲のご機嫌を取る方法がわからんねん。」
「はぁぁぁぁぁ……。」
心底深い溜息をお吐きになられた。
そんなにわからないとまずいものかい。
「あのさぁ、私が言うってのがおかしいのかもしれないけど…。
まずはどうして怒ってるかを考えるべきなんじゃないの?」
「…どうして怒ってんの?」
「……マジで言ってんの?」
「大体予想はつくけど、違ってたら恥ずかしいなぁ…って。」
「……恥ずかしいとか言ってんじゃねえよ。
機嫌直して欲しいんだろ?」
「うーん…。怒ってる有咲もそれはそれで可愛いからアリっちゃアリ。」
「なっ、馬鹿言ってんじゃないよ…。いいから、機嫌直す方法、考えてるの?」
「まぁ……。」
有咲の隣に移動する。
有咲もチラチラこちらを見ていることから、恐らく何をするかはわかっているんだろうけど。
「有咲。おいで?」
「…ん。」
返事と同時にお尻を軸に体をこちらに向け直し、両手を前に出す有咲。某三昧のようなイメージだ。
顔は不機嫌な様子を装っているが口角が少し上がっているのを俺は見逃さない。
距離を詰め、脇の下から両腕を背中へと回す。
抱きしめ、耳元で―――
「…有咲、今日はごめんね。…構ってあげられなくて。」
「…うん。ばか。」
ようやく体を預けてくる。
掛かってくる体重がまた心地よい。
「ごめんね。」
「もっと…頭撫でてよ。」
「はいはい。」
「…はいは一回。」
「…はい。」
「ん……落ち着く。」
うちの喧嘩のあとは、これが"いつも通り"なのである。
ほのぼのですな。
<今回の設定更新>
○○:有咲が来ようと来まいと、ゲーマー魂は燃えているのである。
有咲:来ても相手できない、と言われていたが寂しくて来てしまった。
軽いとかそういう訳ではなく、人の体温を感じると安心できるタイプ。