BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 - 作:津梨つな
「どう?」
「んー…腫れてる。」
歯医者から帰ってきた後。
有咲に奥歯を見てもらっている。
「やっぱりすぐに収まるもんじゃないかぁ…。」
「そりゃそうだろ。ついさっき薬入れたんだろ??」
「まあね。でもやっぱり痛いし、心折れそう…。」
「男だろ?しゃきっとしろよ。」
「んー…。」
正直、そんなに凹んじゃいない。
どうやら親知らず周りが腫れてしまっているようで、物を食べることはおろか、呼吸にまで影響が出る始末。
喉の方まで腫れているらしく、息が吸いづらいのだ。
ただ…。
「まぁ、でもいいか。」
「?何がだよ。」
「痛いから見てもらうって大義名分のもと有咲に膝枕してもらえるからな。」
「別に、いつもしてんじゃん。」
「でもそれが当たり前になるのもあれだし…マンネリ防止?みたいな。」
「…マンネリ防止って…熟年夫婦かなんかかよ。」
「別に夫婦とは言ってねえよ。」
頬を染めてもじもじしている。まだ慣れないのかねそういうのは。
まぁ、頬を染めてってのは正直想像の話だ。
何しろ俺の目線からじゃ有咲の顔は見えないからな。
「有咲の顔が山に隠れてしまった。」
「は、はぁ?」
「オーゥ、ビューティフルサンセットゥ…」
「お前、結構余裕あるだろ。」
膝枕をしてもらっている状態で天井を見上げるとき、目の前にはまず山が聳えているわけで。
先程までのように口を覗き込むような前傾姿勢でもとってくれない限り、その山が視界を埋めてしまうのだ。
素敵な市ヶ谷山。
「余裕?どうだろ。」
「…今考えてること言ってみ。」
「うーん、おっぱいがいっぱい…。」
「一生智歯周炎で苦しめ。」
「冷たい有咲は嫌いだ。」
「私だって変態に好かれるのは願い下げだ。」
「えー。」
「えーじゃない。」
「びー」
「くだらねえ、もうやめるぞ膝枕。」
「やだ!」
「ガキか…。」
病院で処方される痛み止めより、有咲の方が俺には効くのかもしれん。
気づけば、腫れこそ引かないが痛みは大分紛れていた。
「お前さ、ちゃんと歯ぁ磨いてんの?」
「そりゃもう。血まみれになるくらい磨いてるぜ。」
「そんな激しく磨いているところは見たことないけどな。」
「そりゃまあちょっとは盛ったけどよ。…ほら、あの電動のやつで磨いてるよ。」
「ふーん?」
「第一、虫歯じゃないんだから磨き具合は関係ないだろ。」
「あ?細菌のせいで化膿してるとかそういうオチじゃねえの?
だとしたらちゃんと磨かなきゃだろうが。」
しらんよ。病院でロクに説明聞いてねえもん。
そういえば、歯医者でアレがちょくちょく当たるのって自意識過剰なんだろうか。流石に態と当ててくるってこたあないと思うけどな。
「まぁ、ぼちぼちやるさ。」
「その…さ。私がいるとき、限定だけど…。
磨いてあげようか?…こういうふうに、膝枕しながら。」
「…何故?」
「い、いやっ!人にやってもらった方が、その、よく見えるし磨き残しもないかなぁみたいな!
決してくっつきたいとか顔見てたいとかそういうのじゃなくて!!」
「…いや、俺としてはありがたいけど…。嫌じゃないのか?」
「な、何が?」
「人の口の中見るって、抵抗とかあったりするんじゃないのか?
そういう意味では歯医者さんってほんと尊敬する。」
「ほかのやつだったら…そりゃ嫌かもしれないけど、お前は特別だし…。」
「ふーん??…まぁ、じゃあお願いしちゃおうかな。」
「お、おう、任せとけ…な。」
君は僕の薬箱、なんて昔聞いたような聞いてないような。
結局は痛みや病も気の持ちよう。有咲というトランキライザーが、俺にはぴったりの薬なのかもしれない。
「今晩からさっそく太もも…じゃない、歯磨きしてもらおうかな。」
「ばか。」
自分でできることを人にしてもらうって凄く気持ちいいですよね。
<今回の設定更新>
○○:親知らず、全四本全てまともに生えていない。
抜くべきか、抜かざるべきか。
有咲:歯並びはとてもいい。
もう主人公の事を見ていられるなら何でもなりふり構わないんじゃないか。
歯ブラシは柔らかいのが好み。