BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 - 作:津梨つな
「ただいまー…ってナンダコリャ。」
仕事終わりも特に用事はないので、いつも通り直帰する。
家に帰って、一言目が"ただいま"とは…すっかり共同生活に馴染んでしまった証拠でもある、か。
にしてもなんだこの靴の量は。うちに泊まってるのは二人だろ?
…女の子は靴をたくさん持つとかそのレベルじゃない気がするぞおい。
「…ったく、どうでもいいけど少しは並べろよな…。」
散らかってるのを、
リビングへ向かい…違和感。
あれ、これ絶対二人以上いるやつだ。彩と白鷺さん?以外の気配も確かにある。
二人の気配が分かるのかって?勿論わからん。
「ただいま!……えっと。」
「あ、おかえり!○○くん。」
「おかえりなさい。」
「おー。ただいま二人とも。
…こちらは、同じグループの?」
「お邪魔致しておりマス!若宮イヴといいマス!!」
「わっ…ホントに男の人と住んでるんですねぇ…。
あ、ジブン、大和麻弥といいます。お邪魔してまっす。」
なんということだ…。
仕事から帰ってみたら今をときめくアイドルバンドがほぼ揃って出迎えてくれる!こんなことが予想できるだろうか?否、できない。
「…彩。」
「あ、ごめんね?○○くん。迷惑かなぁって思ったんだけど、今住んでるところを見てみたいって言うから…。
も、もちろん、長くは居ないようにするからね?うるさくもしないから安心してね?」
「違う、そうじゃない。」
「??」
「…日菜ちゃんは。」
「は?」
「日菜ちゃんは…来てねえの?」
「……なんで日菜ちゃん?」
なんでって…推しだから、とは流石に同じグループの人間には言えず。
「ほ、ほら、日菜ちゃんも居たら全員揃うな~って、な?
ただちょっと思っただけだよ、うん!」
「どうだか?」
「白鷺さん…?」
「どうせ、日菜ちゃんが一番好きとかそんな理由でしょ?」
「うっ…」
「あらら、図星だったみたいですねぇ…それにしても、さっすが日菜さん。モッテモテですねぇ…。」
「麻弥ちゃんは、私服だとメガネなんだなぁ。
…俺的にはこっちの方が好みだ。」
「ちょ!?きゅ、急に好みだなんて…フヘヘヘヘ。」
「麻弥ちゃん。」
「は、はいぃ!?すみません!また出てしまいましたぁ!」
笑い方、な。
こっちの方が、素の方が自然で可愛いと思うんだけどなぁ…。
ループになっちゃいそうだから黙っておくけど。
「イヴちゃん。」
「はい!なんでしょー?」
「ブシドー!」
「!?ハッ、ぶ、ブシドー!!」
「ははははははは!!」
やっぱ面白いなこの子。この前テレビで見て以来、やってみたかったやりとりなんだ。
ブシドーってなんだよ。全然わからん。
「○○さん。何か、調子に乗ってらっしゃる?」
「アッイエッ」
「よろしい。
さ、みんな。家主も帰ってきたし、そろそろ解散にするわよ?」
「はぁい。」「了解です!」
そっか、帰っちゃうのか。
「○○くん、寂しそうな顔しないの。
私がいるでしょ??」
「…彩かぁ。」
「えっ、ひどくない?」
「…親戚じゃん。」
「それなら、千聖ちゃんもいるからいーでしょ!」
「「はーい」」
玄関口。
すっかり帰り支度を整えたイヴちゃんと麻弥ちゃん。
外行きの格好をすると、「あぁ、やっぱり芸能人なんだな」って感じだ。
隣の彩は…Tシャツにスウェット。はぁ…。
「二人とも、気をつけて帰るのよ?」
「了解です!!」
「変な人に声掛けられても、いつもみたいにちゃんと流して逃げるのよ?」
「千聖さん…お母さんみたいですねぇ…」
「茶化してる場合じゃないでしょ?心配なの。」
「…なあ、白鷺さんっていつもあんな感じなの?」
「うん…。優しいでしょ?」
「おせっかい感がすげぇ。」
「○○さん、聞こえてますから。後でよく話しましょうか。」
「怖」
「それでは、皆さん!サヨーナラです!!」
「また来ますね~、フヘヘ…」
賑やかに帰っていった。
とんでもない非日常な体験をしてしまった気がする…。アイドルが、うちにいるなんて…。
「何かむかつくこと考えてない?」
「あぁ、そっか。彩がいたな。」
こいつが同じグループだって実感が湧かないんだよなぁ…。
従兄妹だし。
**
「○○さん。お話が。」
「え、マジだったん?」
遅めの夕食のあと、自室に逃げようとすると後ろから呼び止められる。
まさか本気で説教垂れられるとはな…。
「マジとは?」
「いやいい、なんの話?」
「今日見てて気づいたのだけど。」
「ん。」
「あなた、パスパレのことは知ってるのよね?」
「テレビで見るし、詳しくはないけど知ってるよ。」
「私と彩ちゃんもメンバーなのは知ってるわよね?」
「もちろん。」
「……どうして、私だけ苗字呼びなのかしら?」
「…さぁ?」
言われてみれば。
彩、イヴちゃん、麻弥ちゃん、日菜ちゃん(たん)、白鷺さん…。
白鷺さん!?
「何だろうな、圧が強ぇのかな。」
「なっ…!?」
「委員長みたいなんだよな。年下って感じしないし。」
「………。」
なに震えてんだよ。
怒ったのか。
「彩ー。」
「なにー??」
「ちょっとこっちこいよ。」
ソファで間抜け面して寛いでいる彩を呼ぶ。
「きたよー?○○くん。」
「ん。お前はふわふわしてていいよな。」
「え、そぉ?えへへへへ」
「白鷺さん。これだ。
これを苗字読みで堅苦しい関係で、ってのは無理だろう。バカっぽいし。」
「え"!馬鹿にするために呼んだの!?ひどいー!」
「ほれ、もう戻っていいぞ。」
なんだよ、なんだよぅ…とぶつぶつ言いながら戻っていく猫背。
「…ッ!」
「うぉ」
目の前の白鷺さんにめっちゃ睨まれた?
彩を弄りすぎた?
「お風呂、先にいただきますから。」
「ど、どうぞ。」
なんなんだ…。
**
しばらくして。
ガラガラガラ…と浴室の戸が開く音が。
続いてタタタタッと足音。
「○○くん!お風呂上がったよ!!
次入っていーよ!」
「!?」
「ど、どうしたの??お風呂後にする??
あ、それとも彩ちゃん先に入る??」
「どうした白鷺さん…。」
白鷺さんが、おかしくなった。
続く終わり方ですね。
<今回の設定更新>
○○:日菜推し。
しばらく一緒に住んでみて、彩がアイドルをやれている事に対する疑問が増える一方だ。
彩:今回空気。しばらくはマスコットポジションです。
千聖:訳「私だけ名前で呼んでくれないなんて寂しいわ!私も名前で呼んで欲しいっ」
イヴ:実は常に帯刀しているという噂がある。
麻弥:多分もう出ない。フヘヘ。