BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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2019/08/10 ハグと疲労とシュークリーム

 

 

 

「ただいまー。」

 

 

 

今日は本当疲れた…。

自分の仕事も忙しいってのに、お盆時期で忙しいということもあって他部署の雑用まで回されたのだ。

くそぅ…お陰で持ちタスクは片付かないし普段使わない筋肉を使ったせいで全身バキバキだし…。

 

 

タタタタタタッ

 

 

「…ん。」

 

「おかえりぃぃいいいい!!!!」

 

 

 

ドンッ。

足元に鞄を置こうとしていたせいで視線は床へ。そこに不意打ちでの悪質なタックルだった。

大声に耳をやられたのもあり、そのまま玄関で尻餅をつく。

 

 

 

「…日菜、また来てたのか。」

 

「うん!!今日はオフだったから!!」

 

「…離しては、くれないのね。」

 

「うん!!」

 

 

 

タックルの勢いのまま胸元にしがみついて顔面を擦りつけているのは大天使日菜ちゃん。

出迎えてくれるのは嬉しいけど、押し倒した挙句この状況は色々まずいからやめようね?

 

 

 

「るんっ!…るんっ!!」

 

 

 

ゴォォォォォォォオオオオオオ

待て待て待て。ちょっと頬擦りくらいなら犬や猫みたいで可愛いなとか思うけど、それはもう…

 

 

 

「…それはもう擦りつけているっていうか顔面スクラッチだろ。

 効果音もおかしいし。」

 

「るんっ!!!!……る……あっつ!?

 ○○くん!!顔から火が出ちゃうよ!!」

 

「それはまた意味が変わってくるだろ…。まぁいいから、一旦離れよう?」

 

「………やだ!」

 

「いやほら、俺とりあえずスーツから着替えて寛ぎたいしさ?ずっとここでくっついてる訳にもいかないだろ?

 …何なら、俺まだ玄関から一歩も入れてないわけよ。実質帰宅前だからねこれ。」

 

「えぇー。」

 

「アナタナニヲシテイルノ…」

 

「ヒェッ」

 

 

 

ほらみろ。

「ただいま」から不自然に時間が空いたから鬼が見に来ちゃったじゃんか。

 

 

 

「ダレガ鬼ヨ…」

 

「読むな。」

 

「あっはははは!!千聖ちゃんこわーい。」

 

「笑い事じゃないからね、日菜。後で地獄を見るのは俺だからね。」

 

「んー……じゃあ、一回ぎゅっ!てしてくれたら離れたげる!」

 

 

 

それは何とも魅力的な…いや、有難い提案だこと。

千聖魔人の方に視線をやると、「ハ ヤ ク ス マ セ ロ …」と目で言われた。

やること自体は問題ないのか。…いや、選択肢がないからか。

日菜の面倒くささは知ってるだろうし…。

 

 

 

「はぁ…わかったよ。一回な。」

 

「るんっ♪」

 

 

 

それは鳴き声か何かなのか…。

押し倒され上半身を起こしたまま天使を抱きしめる。…めっちゃ腹筋ぷるぷるしてるこれ。

 

 

 

「はいもう終わり!!終わりー!!」

 

「うぉっ」

 

「わっ」

 

 

 

あら。鬼とは別に彩が出てきたか。

強引に割って入るように俺から日菜ちゃんを引き剥がすふわふわピンク担当。なんだいちょっといい匂いに安らいでいたのに。

 

 

 

「いつまでくっついてるの二人とも!○○くんは早く入って着替えちゃいなさい!」

 

「お、おう。」

 

「ちぇー。るんっ♪てしないなぁ…。」

 

 

 

すごすごと丸めた背中でリビングへ向かう日菜の後を追うように、手荷物を持ち俺の手を引く彩が歩く。

鬼はいつのまにか普段の表情に戻っていた。

 

 

 

**

 

 

 

「ふぃー。やっと落ち着けたぜぇ。」

 

 

 

リビングのソファにどかっと腰を下ろす。右手にはエナジードリンク。

夏場はこれがあるかないかでだいぶ変わるからな。神の飲料だわ。

服装も堅苦しいスーツ(仕事着)は脱ぎ捨て、パジャマ姿に変身済みだ。

 

 

 

「…で。日菜は?」

 

「もう帰りました。…あなたね、どうしてそう日菜ちゃんばっかり気にするのよ。」

 

「え、可愛いから?」

 

 

 

そうか…帰ったのか…。また来てくれる事を願おう。

 

 

 

「もうちょっと自分の従妹も気にかけてあげなさいよ。」

 

「えー?だって別に毎日会ってるし、帰ってきたらそこに居るだろ?」

 

「はぁ…。贅沢者はこれだから…。

 いい?あなたは今国民的アイドルとひとつ屋根の下暮らしてるのよ?」

 

「自分で言っちゃう?」

 

「今は彩ちゃんの話!」

 

「はい。」

 

「ちょ、ちょっと二人とも喧嘩しないで…。

 私はその、大丈夫だから…。えへへ。」

 

 

 

別に喧嘩してるつもりはないんだけどな…。鬼が噛み付いてくるだけだよ。

 

 

 

「ごめんごめん、俺が悪かったよ。…そんな離れたとこ居ないで、隣座んな。」

 

「!…うんっ。」

 

 

 

向かいに仁王立ちしている千聖の陰に隠れていたが、俺の呼びかけに小走りで対応してくれた。

確かにこれはこれで可愛いもんだ。

 

 

 

「よーしよしよし。」

 

 

 

いっぱい撫でてやろう。

 

 

 

「わぷっ…あ、あのね○○くん。」

 

「んー?」

 

「さっきの、日菜ちゃんとのやりとりを見て閃いたんだけど。」

 

「日菜との…?」

 

「うん。…日菜ちゃんはああやってくっついたり甘えたり出来る子でしょ?

 なんかずるいなーって思って。」

 

「ずるい?」

 

「だからね。この家の新しいルールを提案したいと思うんですっ。」

 

 

 

撫で続けていた手を払い除け徐に立ち上がる彩。

危ねぇな。神の飲料が零れるだろ。

 

 

 

「生活の中の挨拶をハグにしましょう!!」

 

「な……!?」

 

「うっ…!?」

 

 

 

それは…日本でやるととてつもない違和感が…。

因みに、「うっ」の方は千聖だ。てめぇそんな吐きそうな顔すんなよ。彩が悲しむだろ。

 

 

 

「…だめぇ?」

 

「いや、俺はいいけど…。ほら、アレがさ。」

 

「千聖ちゃんは…嫌、だよね。」

 

「…まぁ。」

 

「じゃあ、○○くんと私だけのルールってことで…いい?」

 

「いいよ。」

 

「やった!じゃあただいまとおかえりのぎゅー!」

 

 

 

両手を広げた彩が飛び込んでくる。何とか受け止め支えたが、お前はもうちょっと体勢の配慮が必要だな。

立った姿勢から座ってる人にダイブしちゃアカンで。首と腰が大ダメージや。

 

 

 

「えっへへー。…ハグ、しちゃったぁ。」

 

 

 

まぁ、彩が嬉しそうだからいいか。

かくして、俺の家に新たなルールが…うっ!?

 

 

 

「…………!!!!」

 

 

 

は、般若…。

なんだよ、そんなに混ざりたいかよ。素直に言えよじゃあ。

とりあえず空気を何とかしないと…あ、あれで注意を逸らそう。

 

 

 

「よ、ようし彩。挨拶も済んだし、一旦離れよう。」

 

「うんっ。」

 

「実は今日、色々あってお礼の品をもらってな。

 …二人ともシュークリームは好きか?」

 

「う?…すき!」

 

「まぁ……。」

 

 

 

よしよし、いい感じだ。

 

 

 

「有名店のらしいんだけど、丁度3つ入ってるんだ。

 …一個ずつ食べよ?」

 

「わぁい!!私、お皿とフォークとってくる!!」

 

「………こんな夜に甘いものだなんて…。」

 

「要らないなら俺が食うが?」

 

「食べるわよ!」

 

「持ってきたよ~♪」

 

 

 

それぞれ取り分け、ある者は食べ始めの位置を探し、ある者は必死にインスタ映えを目指し、またある者は匂いを嗅ぐ。

暫し三者三様の時を過ごした後。

 

 

 

「さて、それじゃあ食うか。」

 

「待って○○くん。食べる前は"いただきます"だよ?」

 

「ええそうね。挨拶はマナーよね。」

 

 

 

あっ

 

 

 

「…挨拶?…○○くん!!」

 

「げっ」

 

「いただきますのぎゅぅぅうう!!!」

 

 

 

あぁぁあああああ!!

折角逸らせたと思ったのに!!!

 

 

 

「アナタハマッタクコリナイノネ…」

 

「お前のせいだアホー!!」

 

 

 

 




日菜ちゃんはスパイス。




<今回の設定更新>

○○:甘いものは嫌いじゃない。
   甘い香りは好き。

彩:デレ期。
  ハグ魔。

千聖:顔芸を会得した!
   目力が凄い。

日菜:悪質タックル疑惑。
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