BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 - 作:津梨つな
「なーんで君と二人かね。」
「…黙りなさい。私だって不本意なんだから。」
「…あれれ?二人にはあたしたちが見えてないのかにゃ?」
「日菜さんは○○さんに抱かれてるだけいいですよ…ジブンはなぜこんな姿勢に…。」
「麻弥ちゃんだっていいじゃんさぁ。…千聖ちゃんの膝枕なんて、滅多に体験できないよ??」
静かなリビングに流れるバラエティ番組の賑やかな声。
二人…いや四人で見ているテレビでは、様々な業界の著名人や各界の有名人が集まり、ゲームにトークにと内容の詰まった生放送番組が映されていた。
それを死んだ目でぼーっと見つめる俺と千聖。それぞれに抱き枕やペットのように扱われる日菜ちゃんと麻弥ちゃん。
今日は彩とイヴちゃんにだけオファーが来たようで、呼ばれなかった組がうちに集まってその番組を鑑賞してる、というわけだが…。
「…にしてもさー??あたしはわかるとして、千聖ちゃんが呼ばれないなんてねー。」
「…ほんとです。ジブンみたいな人間なら兎も角、あの千聖さんが…」
「ねー?…どーしてだと思う?○○くん。」
「…んー。さあなあ…。人当たりキツイからじゃね?
…日菜ちゃんもふもふー。」
「んっ。…んぁっ。……だ、ダメだよ○○くん…そんなとこ嗅いじゃあ…あっ。」
ソファに座った俺の膝の上にちょこんと座る日菜からの問い。正直そこはどうでもいいので、癖のあるその髪の中に潜り込む作業に入る。
こうしてると、甘い綿あめにでも包まれた気分になる。…これで彩の居ない寂しさも少しは紛れ…ないか。
「うわぁ……いいんですか千聖さん。あのソファだけだいぶエロティックな雰囲気になってますけどぉ…?」
「アノヤロウ……アトデニギリツブシテヤル…」
「……今日もキレッキレっすねぇ。」
あーあ。俺今日ワンチャン○○子ちゃんになっちゃうよ。
麻弥ちゃん、恐らく今日はペット役に徹するしかないぞ。日菜は膝枕って言うけど、実質膝の上で撫でられる猫状態だもんな。
「……チッ。」
「お、おいおいちーちゃん…それはいけねえって。」
「あぁ?」
怖っ。
「………日菜ぁ。」
「えっ?えっ??…もー、○○くん子供みたいー。」
「鬼が虐めるんよぉ。」
「よしよし…ぎゅってする??」
「……するー。」
嗚呼、コレがバブみ。
だめぇ、幼児退行しちゃうぅ。
「…いいっすねぇ。」
「アノヤロウマジクサリキッテンナクビリコロシタロカアァ?」
「ひいっ!?ち、千聖さん!?痛い!痛いですって!!」
何やら外野が騒がしいがほっとこう。なんて素敵な香り。鬼の眼光もその呪詛も、ついでに言うと哀れな回文少女の頭蓋骨が拉げる音もあまり気にならない。
さすが大天使…これはもう"沼"だ。
「日菜ぁ?」
「ん~?なぁに??」
「うちにね、最近新しいルールができたんだよ。」
「るーる?…千聖ちゃんに逆らったら私刑とか?」
おいおいリンチかよ怖ぇな。…てかソレはずっとそうだわ。
「いやー?…彩が考案したんだけど、家の中で挨拶をするときは、必ずハグをするって…。」
「へ~、そうなんだ!!いいねぇ。」
「…うわぁ!流石にどうなんですかねぇ。」
「でしょ?麻弥ちゃん、もっと言ってやって!!」
「…うぇ!?…え、えーっと、流石に引いちゃうっていうか…。ないわぁって感じっす。」
「○○くん、好き放題言われちゃってるね。」
「…うーん、俺の案じゃないんだけどなぁ。」
もうすっかりカオスだ。現状、誰もテレビなんか見ちゃいない。
今番組内では、視聴者の応援メッセージを読んで号泣している彩を、司会者と何やらお調子者っぽい男が必死に讃えているところだった。
なんだあいつムカつく顔してんな…うちの彩に…!!
「ねーねー、○○くんと彩ちゃんって付き合ってるの??」
「…へ?」
「だってさ、さっきのルールもそうだし、普段の様子見ていてもそうだけど。
…すっっっっっごいイチャイチャするよね。」
「…いやしてねえよ。親戚なんてあんなもんだろ。」
「うわぁ…。」
おいそこの猫担当。聞こえてるぞ。思いっきり引くの禁止だ。
「ね?麻弥ちゃん、どう思う?…こういう
「うーん…。もう色々とアレですね。手遅れって感じっす。」
「けっ、言ってろ…。
別にイチャイチャしてねえし、従妹にそんな感情持たんよ…。」
「ジブン、○○さん苦手です。」
「…………日菜ぁ。」
やばいなぁ。なんだかよくわからないが、国民的アイドルグループ全員から嫌われる日もそう遠くはなさそうだぞ。
大和麻耶。君にはもう極力近づかないし話しかけないようにするね。
「あのね、○○くん。」
「…?」
「○○くんが彩ちゃんと付き合ってても別にいーと思うんだ。」
「いやだから付き合ってないってば…。」
「寧ろ付き合ってあげなさいよ…。」
「いや彩の気持ちとかもあるだろ?な?ちーちゃんは猫撫でて黙ってて?」
今大天使が喋ってるでしょうが。
彩だって別に俺のこと異性として好きなわけじゃねえだろうよ。
「…コロス。」
「うぎゃぁ!!ほんと○○さん嫌い!!」
そのうち骨格化け物みたいになっちゃうんじゃないか、麻弥ちゃん。
…心の中でだけ、合掌を捧げよう。
「あのね、○○くん。…○○くんが彩ちゃんと付き合ってたとしても、ね?
…あたし、二番目とか三番目でもいーよ??」
「は?」
「えっ」
「…ん!?」
「彼女さんが居ても別に気にしないからさー。
○○くんが辛い時に、いつでも甘えさせてあげるから、あたしは何番目でもいいよって話~。」
全く以て言ってる意味がわからない。
…おかあさんになってくれるってこと??
「…そうでした…日菜さんはこういうヒトでした…。」
「ええ。屑も見捨てない、流石は"一見天使だけど蓋を開けてみると手に負えない怪物"と称される日菜ちゃんなだけあるわね。
…非常にタチが悪い。」
「えーっと……メチャクチャ言われてるけどいいの?日菜。」
「いーのいーの!あれは千聖ちゃんの愛情表現なんだから~。」
「あんな愛情毎日ぶつけられたら死んじゃうよ…。」
日菜の俺を抱きしめる腕に力がこもる。…あぁ、どことは言わないけど体温と柔らかさが心地いいよぉ…。
「…彩ちゃんと千聖ちゃんがここに住むのって、期間限定なんだよね?」
「…うぇ?まぁ。」
「そうね、アパートの改築が終わるまでだから…。」
「じゃあ、もうすぐってことだよね??」
「あぁ。」
「…ふっふっふ。きちゃった!日菜ちゃん、るんって来ちゃった♪」
やめて!あんまり押し付けないで!!
こんな女の子だらけの部屋、立ち上がれなくなっちゃう!!
「…すっごく嫌な予感するっすけど…千聖さん?」
「はぁぁぁぁぁ…予想ができるようになったってことは、多少なりとも日菜ちゃんに周波数が合うようになったってことなのかしら。
…嫌な成長ね。」
「…真面目な話、彩さんが不憫でならないです…。」
「二人がいなくなったら、日菜ちゃんが住んじゃおっかなぁ。」
「やっぱり…。」
「ちっ…千聖さん…ッ!首が、…締まってるっす…」
「いや、日菜がうちに居る理由はないんじゃ…。」
「だってー…あたしは○○くんと一緒に居られてるんっ♪て感じだしー。
○○くんも毎日あたしに甘えられて、はっぴー&らっきーって感じでしょ??」
……たしかに。
お互いの欲求は満たされるわけだし、win-winってわけか。
「普通は拒否一択だと思うけど、あの男だしね…。」
「ち、千聖さん?…千聖さんっ、ち、力が……うぎゃぁあ!!」
「………。」
「…日菜たんと同居かぁ…いいかもなぁ。」
**
その日、リビングに血の雨が降った。
天使は帰り、骨格がおかしくなった少女は病院へ。
ふわふわピンクが疲れきった様子で見たリビングは―――地獄だった。
「……ただいまぁ…あれ?千聖ちゃん?○○くんは?」
「おかえりなさいっ…。え、ええと…」
まぁ、追い出した、とは言えないだろうね。
日菜ちゃんすき。
<今回の設定更新>
○○:ボコボコにされて追い出された後、彷徨っているところをイヴに拾われ、
数日を若宮'sルームで過ごした。
って裏話はどうでしょう。
彩:天然っぽさとふわふわ感が世間にバカ受け。
特にバラエティ番組では引っ張りだこに。
最近主人公とあまりハグできなくて寂しい。
今回の騒動については聞かされてすらいない。
千聖:段々輩みたいになってきてほんとすいません。
握力は左が68kg、右は89kg。
日菜:大天使。今回はずっと主人公の膝の上で主人公と向き合うように座っていた。
凄く甘えさせてくれる。
…大体マジだぞ☆
麻弥:いろんな骨の可動域が増えた。
うぎゃぁあ!