BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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2019/08/03 燐子「………あ、蛍の光。」

 

 

「うーん…これは今日も長引きそうだぞ…。」

 

 

 

人気の無くなった職場。とうの昔に過ぎ去った定時。

思わず零した言葉も事務所の無機質な壁と天井に反射し、哀しい音となった。

 

 

 

「なーんてポエマーみたいな表現しちゃって…。

 …一服するか。」

 

 

 

誰に言うでもない独り言と共に、すっかり固まった腰を上げる。

あいつには止められるだろうが、やっぱ数時間に2本は吸わんと死んでしまう。

そのままの足で喫煙所を目指し歩く。

 

俺の配置されている席がまた困ったことに喫煙所から絶妙に遠く、ライトスモーカーなら諦めてしまうであろう入り組んだ道を通らなければいけない場所にある。

この道設計したやつ絶対頭おかしいだろ。出てこい、副流煙で真っ黒にしてやるから。

ほれみろ、移動所要時間7分て。ほんと絶妙だな。それに人気がない廊下にひたすら自分の足音だけが響くって中々おっかない状況も勘弁だ。

 

 

 

「さぁて、減ったライフをニコチンで補うとしますかねぇ……あ。」

 

 

 

少し立て付けの悪いドアを開けいつもの席、奥から二番目のベンチに腰掛けたところで目の前の人影に気づく。

 

 

 

「……来ると、思ってました。」

 

「なんで居るんだ…。吸わないだろ、白金。」

 

「たばこの煙って……なんだか、落ち着くんです。……わかりません?」

 

「喫煙者に訊いても同意は得られんぞそれ…。」

 

 

 

うっすら煙の立ち込める中で、それこそ紫煙のようにひっそり潜む白金燐子。

煙もあってマジで気付かなかったぞ。幽霊かお前は。

 

 

 

「みんなとっくに帰ったぞ?何やってんだこんなところで。」

 

「実は…ディナーに誘われ、まして……。」

 

 

 

一本咥え、マッチを擦る。

 

 

 

「おっ、他の女子社員か?」

 

「……いえ、あのお局さん、です…。」

 

 

 

一息吸い込み嚥下。余韻に浸った後に、ゆっ…くりと吐き出す。

深い溜息にも似たそれは長く、薄い。

肺胞が歓ぶのを感じながら、脳裏には一人の()()()()()()が浮かぶ。

 

 

 

「………まーたあの厄介なババァか。」

 

「もぅ……そんな汚い言葉を使っちゃ、いけません……。」

 

 

 

燃える領土が広がる様も、それに伴って聞こえるジリジリという小さな音も俺は大好きだ。

すぐに二口目に入ってしまう。

 

 

 

「はいはい…。で?」

 

「あのお方は……煙草の匂いが嫌いですから…。」

 

「…あぁ、賢く逃げてきたって訳だ。」

 

「…はい。」

 

「もう安心していい。あれも含め、俺以外の社員は全員帰ったよ。

 後は俺と、警備の人くらいだ。」

 

「〇〇くんは…まだ…?」

 

「そうだなぁ……スゥーッ………ふぅぅぅぅぅぅぅ。

 もうちょい、かな。」

 

 

 

最後の一吸い。

いつの間にやらフィルターのすぐ近くまでを灰にしてしまっていたようだ。

備え付けの灰皿にぐりぐりと押し付け、その命の灯を消す。

…うーん、もう一本、かな?

 

 

 

「そう、ですか……。」

 

「……白金、まだ帰らんの?」

 

「特に用事も…ないので……。」

 

「アレもイベント終わっちまったしな…。」

 

「えぇ。……暫くはログインゲーです…。」

 

 

 

白金の何を考えているかわからない、それでも真っ直ぐと見つめてくる深い海のような瞳を眺めながらもう一本(次の回復薬)に火を灯す。

どうでもいいかもしれないが、このマッチを擦るという動作。これも実は拘りがあって、必ず手首をスナップする様に反して擦るんだ。この方が何か格好つくやん?伝わらないか。

 

 

 

「スゥーッ………ふひゅぅぅぅううううう。

 そんな見つめんなよ。照れるだろ。」

 

「ふふっ………実は照屋さん、とか…?」

 

「あぁ…シャイボウイだからな。」

 

「…シャイボーイなのに、…男女問わず、人付き合いがお上手なんですね…。」

 

 

 

あれ、ちょっとムッとしてる?

視線は相変わらず真っ直ぐ射抜いてくるし、眉も特に寄せられてはいない。…あっ。

 

 

 

「…白金って、そんな顔もするのか。」

 

「…どんな顔ですか。」

 

「驚いたな。…気づいてないのか?……頬、膨れてるぞ。」

 

「えっ…??」

 

 

 

あ、崩れた。

あわあわする動きもゆっくりなんだな。まぁ、それも白金らしくて面白ぇや。

 

 

 

「ははははは!!なんだ白金、結構表情出すじゃんか!!

 …怒ったのか?んー?」

 

「も、もう…知りませんっ…」

 

「はははは!やっぱ白金は飽きないなぁ!

 …さて、と。」

 

 

 

右手の煙草、その命が尽きようとしている事には何となく気付いていたが。

今度は少し早めに、まだ一吸いはできるであろう所で揉み消す。

少々勿体ないが、良い物を見せてもらったので気分はハッピーだ。

 

 

 

「もうちょっとだけやってくけど、よかったら待っててくれないか?」

 

「……どれくらい?」

 

「そうだなぁ…。30分はかからんと思うよ。

 終わったら飯か飲みか行こうぜ?」

 

「………20分で片づけましょう。…手伝い、ますので。」

 

「おっけーおっけー。

 なーんか怒らせちゃったみたいだし、今日は俺の奢りにしてやろう。」

 

「……別に、怒ってない…ですし……。」

 

 

 

再び入り組んだ道を通って仕事場へ。

さっきと違うのは、肺から全身へ活力が行き渡りやる気が回復している事。

それと、廊下に響く足音が二つになっているってことだ。

…今日の晩飯が楽しみだな。

 

 

 

「…で?何で人付き合いが得意だと嫌なんだ?」

 

「………しりませんっ。」

 

 

 




喫煙所ってどうも苦手なんですよね。(非喫煙者)




<今回の設定更新>

〇〇:喫煙者。本当は葉巻が吸いたい。
   残業にもすっかり慣れてしまうようなポジション。
   人付き合いが美味いというより、素で誰とでも仲良くなれる系男子。
   決して仕事ができるわけではない。

燐子:非喫煙者。副流煙大好き。
   人の話を聞くときは相手の目をガン見する。
   人付き合いの意味が分からない。
   黙々と集中してこなすせいか、仕事は出来るし早い。頭も回る。
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