BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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2019/10/12 俺「休憩取りたいがために煙草吸ってんだよ」

 

 

 

「……すごく、怒られてましたね………。」

 

 

 

もうすぐ退勤時間だというのに、酷く怠く重い体。別にこれといって体調が悪いだとか何処かを痛めたりはしていない。

()()()()この、喫煙所(回復ポイント)に逃げてきたってわけだ。

 

 

 

「あぁ、……今日も中々に理不尽な怒られっぷりだったぜ。」

 

「ふふ、見ていてちょっとスカッとしました………もっと言ってやれーって、思っちゃったり……」

 

 

 

ここの所幾度となく激突しているあの"悪のお局さん"。てっきり燐子は味方サイドで応援してくれているもんだと思ってたのだが、どうやら心の中であちらさんを応援なさっていたらしい。

…最近意地悪しすぎたかな。

 

 

 

「スゥー………フハァァ……。で?…燐子は吸わなかったよな?タバコ。」

 

「……副流煙…ってやつが、結構好きなんです。……○○さんの匂いって、感じで……。」

 

「お前、早死するぞ……。」

 

「○○さんには、言われたくないです……ふふっ。」

 

 

 

何が面白いのか、くすくすと笑みを零す黒髪の同僚さん。

本当に侮れないんだからな、タバコの煙ってのは。…いつかは君の肺も、その素敵な髪の毛のように真っ黒に…

 

 

 

「でも……何だか、久しぶりな気がします………。」

 

「ん。……フゥゥゥ。………タバコか?…昔ワルやってましたってか?」

 

「…いえ………○○さんと、二人きりで……ここに居るのが、です。」

 

 

 

その言葉に最近の職場での対人関係を振り返ってみる。

最近謎の権力を駆使して俺のいる部署に異動して来たちびっ子上司。…新しく入ったピンク髪のおっぱ…快活な直属の後輩。

その二人に絡まれる日々を送りつつ、偶にお局に精神を木っ端微塵にされ……あぁ、確かに燐子とは全然一緒に居られてないな。飽く迄ただの同僚だし、一緒に居るのが普通な関係でもないから仕方ないっちゃ仕方ないんだけど。

 

 

 

「フヘェェェ…。……んしょ。」

 

「あと、二本ですよね……?」

 

「お、よくわかったな。」

 

「いつも、見てます……から…。」

 

 

 

短くなった二本目を捻り込むように揉み消す様を見て、鋭い観察眼を発揮してくれる彼女。

こういった細かい部分の理解だとか、癖や思考の把握だとか、流石はここに入社して以来の付き合いだ。"結局燐子"といった安心感がある。

 

 

 

「ふむ。……悪くないなぁ燐子。」

 

「………おいしいです?」

 

「はっはははは、確かに君と一緒に吸う煙はまた格別かもなぁ。」

 

「じゃあ毎日、ここで……」

 

「それはだめだ。」

 

「えっ……ど、どうして…です……?」

 

 

 

簡単な話だ。

 

 

 

「ほら、副流煙っつったって体に悪影響が出る危険性はあるわけだろ。」

 

「ええ。」

 

「そして君は、まだ未来のある若い女の子だ。」

 

「……体の不調を懸念してなら…別に気にしませんが…。」

 

「そんなこと言うんじゃないよ。……もし将来に響くような不調が表われたら、俺は将来の旦那さんに申し訳が立たねえんだ。」

 

「……言っている意味が、よく………。もう少し、わかりやすくおねがいします……。」

 

「あー………。…君さ、将来的に子供は欲しい?」

 

「………それは、プロポーズ的な……ですか?」

 

 

 

てっきりセクハラ方面で取られると思ったんだが…どうしてそうなった。俺と作ろうだなんて言っていないし、口が裂けても言えないよ。

 

 

 

「違う違う……。純粋に、子供が好きなのかどうか~くらいの質問ってこった。」

 

「あぁ……。」

 

 

 

何を期待しているのかはわからないが、露骨にシュンとなってしまう彼女。…その猫背も心なしか一回り程小さく見えるぞ。

 

 

 

「……貴方との子供ならば、そうですね……一姫、二太郎という言葉が……」

 

「話聞いてる?…まぁいいや。子供は欲しいってこったな?」

 

「ええ、好きですから…。」

 

「なら尚更だ。ただでさえ非喫煙者の君をこんなところに頻繁に連れ込む訳には行かない。今後は」

 

「嫌です……ッ!」

 

 

 

今後は何か対策を…と提案したかっただけなんだが、珍しく大きめの声を出すもんだから甘んじて遮られてしまったよ。

その真剣な表情と声色に、思わず心が揺れる。

 

 

 

「私にとって……この匂いと、〇〇さんの煙草を吸う姿が………幸せに感じられる……のです!」

 

「…どうしたの、そんな壊れた子だった?受動喫煙だよ?体に悪いんだよ??」

 

「私は……何度止められても、ここに……〇〇さんの傍に、来ますから…ッ!」

 

「燐子……君は、」

 

 

 

全く。そんな潤んだ目で見つめられたら煙草どころじゃなくなっちまうだろうが。…ただ、一つ言わせてもらうとするなら、

 

 

 

「取り敢えず話は最後まで聞きなさいな…。」

 

「あぅ…。」

 

「いいか?俺は一つ提案をしようとしたんだ。それは君の体調にも関わることだし、俺のライフスタイルにも影響が出ることだ。

 ところが君はそれを阻止してしまったわけだな?つまりはこの素晴らしい提案をすることができないと、まあそう言う訳なんだ。」

 

「………わざと分かりづらく話しているでしょ……」

 

「…否定はしないが。」

 

「いじわるな〇〇さん………ちょっとだけ、嫌いです…っ。」

 

「まぁじかぁ…。」

 

 

 

虐めすぎて嫌われるのは困るなぁ…。ただ、燐子って不思議と虐めたくなる雰囲気あるんだよな。なんでなんだろ。

自分のサディスティックな目覚めを感じつつも、提案しようとしたことを素直に口にすることにした。

 

 

 

「今後は俺も色々考えないとなってさ。…ここに来るのも構わないけど、やっぱり俺の吐く煙で君を傷つけたくないんだ。

 …だから、さ。」

 

「…はい。」

 

「……電子タバコ、あるだろ?ニコチンとか含んでない奴。」

 

「??」

 

「あぁわからないよな、まああるんだそういうのが。」

 

「べいぷ……?でしたっけ…??」

 

「お、多分そんなやつだ。……それを一本買ってみようと思うんだが……俺に似合いそうなやつを一緒に選んじゃくれないか?」

 

「!!!……是非、一緒に…行かせてください…ッ!!」

 

 

 

理不尽に怒られて散々な気分になた日だったけど、次のデートが決まったのは大きな収穫だったかもな。

 

 

 




VAPECCINOのレッドが私の相棒です。




<今回の設定更新>

〇〇:ヘビィスモーカー。その気になれば一日でカートンが飛ぶ。
   すっかり「燐子」呼びにも慣れてきたが、友希那のニヤニヤと
   ひまりの膨れっ面にはまだ慣れないご様子。

燐子:非喫煙者。副流煙が好きって結構あるよね。作者もそうです。
   他の重役が煙草を吸いだすと、露骨に殺意の篭もった表情をするらしい。
   燐子さんは子供が欲しい。

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