BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

155 / 278
2019/06/16 姉妹と溺れる日曜日

 

 

 

「すぅー……すぅー………。」

 

 

 

日曜の昼下がり。

いつも何かと忙しく結局夜にならないと会話一つできない姉さんが珍しく家にいる。

そしてさらに珍しく、昼寝をしている。

僕の記憶の限り、この人が昼寝をしているところなんか見たことない。

逆に昼寝をしすぎて起こされる側だからね。

 

 

 

「んぅ……。……すぅー……。」

 

 

 

二人いる姉さんのうち、煩い方がいつも通り外出しているからか

親も出かけたこの時間はとても静かだ。

それこそ、紗夜ねぇの寝息が聞こえるほどに。

 

 

 

「……重い。」

 

 

 

そもそも今日は最初からちょっとおかしかった。

日曜なのに紗夜ねぇは6時半に起こしに来るし。

朝飯中もどこかぼーっとした紗夜ねぇは味噌汁ぶち撒かすし。

日菜ねぇが出ていくや否や僕の部屋に理由もなく来るし。

お説教で来ることはあってもあんな理由で来ることは普段ないからね。

 

凄いんだぜ。ノックもしないでいきなり開けてさ。

『……○○。お姉ちゃん、今日は○○と一緒にいたいなーって思って…その、きちゃった。』

 

誰かと思ったよ。

それで今に至るってわけ。

結局何かするわけでもなく仰向けで寝転がる僕のことをずっと見てた。

そのうち、胸のあたりに頭を乗せて寝ちゃった。

 

お陰で動くに動けないし、紗夜ねぇが身動ぐ度に擽ったいしで

何とも言えない時間を過ごすことになってるんだけど…。

 

 

 

「………。」

 

 

 

そういえば紗夜ねぇって、いつも眉間にすっっごい力入ってんだよね。

眠ってる紗夜ねぇの緩んだ眉間を見て、改めて思う。

…なんであんなに怒りっぱなしなんだろうか。

 

 

 

「もっと力抜いてる方がいいのになぁ。折角可愛い顔してんのにさ…。」

 

 

 

ピクっと。

紗夜ねぇの体が反応を返した気がした。

…起きてんのかな?

 

 

 

「おーい…紗夜ねぇ…?

 ……反応ないな。」

 

 

 

気のせいかな。

相変わらず規則的な寝息を立てている。

 

 

 

「……紗夜ねぇ、寝顔可愛いね?」

 

 

 

ぴくっ。

 

おっ。

予想通りだ。

 

 

 

「あー。紗夜ねぇは可愛いなぁ。

 可愛い可愛い~。自慢の姉さんだなぁ~。」

 

 

 

ぴくっぴくっぴく。

 

何だか面白くなってきたぞ!!

普段はできないけど、調子に乗って頭なんかなでてみる。

 

あっ。

…なんだよ、突っ伏しちゃったよ。

顔が見えないじゃんか…。

 

紗夜ねぇ髪キレーだなぁ…。

さらっさらだ。

手触り癖になりそう…。はぁ、たまに触らせてもらおうかな…。

 

 

 

「…………あの。」

 

「…え?」

 

「そ、その…そろそろ、恥ずかしいの、だけれど。」

 

「………。」

 

 

 

胸元から声が聞こえる。

正確には胸のあたりにある紗夜ねぇの頭から。

 

あっ。これぜってぇ怒られるやつだ。

早く手を退かさないと。

 

 

 

「……○○くん、何してるの。」

 

「!?」

 

 

 

僕の部屋のドア、確かに半開きだったけれども。

隙間からは物凄くどんよりとした眼が此方を覗いている。

あ、何だか深淵の話思い出した。多分そういう話じゃなかったと思うけど。

 

 

 

「○○くん、おねーちゃんにだけそういうことするんだー。

 あたしなんかくっつくだけでも嫌がられるのになー。

 そういえばさっき可愛いとか聞こえたような気がするなー。

 気のせいだったかなー。でもちょうどその辺から頭なでなでし始めたような」

 

「ひ、ひぃっ」

 

 

 

怖い怖い怖い怖い怖い怖い。

瞬き一つせず、それでいて部屋に入ってくるわけでもなく高速でブツブツ言ってる。

胸元のワンチャン怒られそうな姉さんよりあっちのモンスター級の恐怖を彷彿とさせる姉さんの方が早急な対処が必要なやつだ。

 

 

 

「さ、紗夜ねぇ…?一回退いてもらっていい?

 日菜ねぇが何かやばそうなんだけど。」

 

「……いや。

 お姉ちゃん眠いからまだ動きたくない。」

 

「ぇえ!?」

 

「あーやっぱり仲良しなんだー。

 いいなーいいなーおねーちゃんばっかりー。

 あたしも○○くんのおねーさんなんだけどなー。

 あんなに○○くんに優しくしてもらったことないなー。」

 

 

 

みしっ。

こちらが上の姉さんの対処に手間取っている間に、決して踏み込むことのなかった一歩が踏み出される。

魔物が来る。直感で思った。

 

 

 

「紗夜ねぇ!紗夜ねぇってば!

 日菜ねぇが!あぁもう!日菜ねぇ、その顔なんとかしてよ!!」

 

「あたしが居ない隙におねーちゃんとそんなことになるなんて、あでも朝からおねーちゃん変だったし考えてみたら色々辻褄合うかも、日曜におねーちゃんが家にいるのもおかしいしね、それにおねーちゃんもおねーちゃんだよ、あたしが寄って行っても邪険にするくせに○○くんには自分から擦り寄っていくんだもん、別にあたしもとかって訳じゃないけどやっぱり仲間はずれは許せないよねうんそうだよね。…えい!」

 

「ぐあぁ!」

 

 

 

唯一自由だった下半身に衝撃が走る。

胸元には紗夜ねぇ(動いてくれない)、腿のあたりには日菜ねぇ(全力で抱き抱えられている)

の構図が出来上がってしまった。

 

 

 

「……いやいや、お二人共、どいてくださいよ。」

 

「……す、スッゥー。…あーむにゃむにゃ」

 

「嫌!ずるいもんおねーちゃんばっかり!!」

 

 

 

退ける気はないみたいだ…。

こうして、貴重な日曜日は姉二人にホールドされ、やりたいこともできないまま浪費されることが決定したのだった。

 

 

 

 

―――日菜ねぇ、あんたはもうちょっと大人になってくれ。

―――紗夜ねぇ、寝たフリあまりに下手過ぎて笑いそうになるから勘弁して。

 

 

 

 




姉にあこがれがあります。





<今回の設定更新>

○○:日曜は全力で趣味に没頭する派。
   といってもこれといった趣味が無い為、その日その日で思いつきから行動している。
   日菜の闇を初めて見た。

紗夜:連日気を張り続けたことにより、久々の何もない日曜に壊れた。
   鉄面皮が剥がれた結果、弟と過ごしたい欲求が天元突破しこんな事態に。
   弟成分をたっぷり吸収したので翌週の動きのキレがやばかった。

日菜:とある用事から弦巻家に行っていたため昼過ぎまで家を空けていた。
   弟に伝えていなかったので、午後から構ってもらおうとルンルン気分だったが。
   弟も好き、おねーちゃんも大好き。
   でも今回は仲間はずれが何か嫌だっただけ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。