BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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2019/06/21 デリバリー氷川

 

 

 

どたどたどたどた……

階段を駆け上がる音が聞こえる。

さっきも玄関のチャイムが鳴ったとき、同じ音を響かせながら走って行ったんだっけ。

 

 

 

「全く。もう子供じゃないというのにあの子は…。」

 

 

 

僕の頭を撫でる手を止め、ドアの方を見やる紗夜ねぇ。

紗夜ねぇが僕に膝を貸しているという状況からも分かるように、現在廊下を走り屋よろしく爆走中なのが日菜ねぇだ。

恐らくあと1、2秒で部屋に…

 

バァン!!

 

 

 

「○○くん!おねーちゃん!ピザ、届いたよ!!」

 

 

 

ドアの悲鳴と共に現れたのは、髪をおでこの上で纏め、ピザ箱を両手に持った日菜ねぇだ。

器用なことに、その両手のピザ箱の上にはサイドメニューの袋やら取り皿が載っている。

…は?その状態で走ってたの?

 

 

 

「お待たせいたしました!ピザ屋さんの日菜ちゃんです!」

 

「日菜、もう夜なのよ。ご近所に迷惑だわ。」

 

「日菜ねぇはピザ屋さんじゃないでしょ。お金払ってんだから。」

 

「もー…二人ともノリ悪いなぁ…。」

 

 

 

人生初めてのデリバリーピザが余程嬉しいのか、普段に輪をかけてハイテンションな日菜ねぇ。

注文を決めたのも大部分は日菜ねぇだし、届いたものを見てもその張り切りっぷりがわかる。

断言できるよ、絶対食べきれない。

 

 

 

「取り敢えず、ほら、テーブル出しといたから置きなよ日菜ねぇ。落としちゃうよ。」

 

「うん!ありがとね!○○くん!」

 

「全く…私たちしか居ないからって、本来なら食卓で食べるべき物なのよ。

 それをこんな、○○の部屋でなんて…。」

 

「あ、いいんだよ紗夜ねぇ。

 三人で部屋で食べるってさ、何かちょっとわくわくするじゃん?

 …日菜ねぇも嬉しそうだし、ナイスな提案でしょ??」

 

「○○…。はぁ、それでもね、部屋や物には用途というものがきちんとあって」

 

「紗夜ねぇ…僕の部屋で一緒に食べるの、嫌だった…?」

 

「ッ……!」

 

 

 

今日は両親ともに急な用事で帰らないので、食事は僕らに任されていた。

そんな状況だ。確かに僕だって、日菜ねぇが喜んでいるのもあって乗ってしまったところはある。

だから紗夜ねぇが嫌なら、今からでも食卓に移動して…と言おうとしたが、紗夜ねぇに抱きしめられた為に続きは言えなかった。

 

 

 

「ちょ、紗夜ねぇ?」

 

「もう…弟と一緒にする食事が嫌なわけ無いでしょ。

 そういうズルい質問しないの…。」

 

「あーっ!またおねーちゃんばっかり!!

 あたしも仲間にいれてよぅ!!」

 

「い、いや、仲間とかじゃなくて…ほら、紗夜ねぇも一回離して…」

 

 

 

渋々といった様子で解放する紗夜ねぇ。

この人、この抱きつき癖なんとかならないかな…。

 

 

 

「ね、ほら。せっかく買ったんだから、二人とも食べようよ。」

 

「はっ!そうだった!

 …はいこれおねーちゃんのお皿ー♪」

 

 

 

相変わらず切り替わりはえぇ…。

日菜ねぇはテキパキと取り皿とか箸とかを配っていく。

その間紗夜ねぇと僕はおしぼりで手を拭いて待機だ。

 

 

 

「さて…と。

 うわぁあ!!すごいねこれ!豪華な感じ!!!」

 

「豪華かはわからないけど…。

 日菜ねぇ、座んなよ。ほら、ここ。」

 

 

 

僕の隣に置いた座布団をぽんぽん叩く。

 

 

 

「わーい!○○くんの隣だー!!」

 

「いつも食卓だと斜め向かいだもんね。

 今日は隣で食べよ?」

 

 

 

いつもの食事ポジションは、僕の隣が母さん、向かいが紗夜ねぇ、その隣が日菜ねぇ。

父さんは中々時間が一緒にならなくて、自分の部屋で食べているか明け方にここで一人で食べるからしい。

そもそも、最近は姉さん二人が忙しいこともあって、一緒にご飯を食べることすら珍しくなっちゃっているんだけどね。

 

 

 

「えへへー。今日は○○くん優しいね。

 おねーちゃんみたいにぎゅっ!てしていい??」

 

「流行ってんの…?

 …これからご飯食べるんだから短い時間にしてね。」

 

「やったぁー!…えいっ♪」

 

 

 

ぎゅぅぅぅうううううう、と音が出そうなくらい強めに抱きつかれる。

紗夜ねぇに抱きつかれているときは、ふわっとした感じで、()()()()感覚なんだけど、日菜ねぇの場合は締め付けられてるって感じだ。

おまけに日菜ねぇの方が…その、柔らかみ?があって、苦しいのと相まって変な気分になる。

紗夜ねぇだとあんまり気にしたことないけど、違いの正体は一体何なんだろう。

 

そろそろ、と日菜ねぇを引き剥がしつつ紗夜ねぇを見ると。

 

 

 

「………。」

 

 

 

物凄く無表情でこちらを見ていた。

瞬き一つしない。

 

 

 

「…さ、紗夜ねぇ?」

 

「終わったかしら?

 さぁ、さっさと食べてしまいましょう。」

 

 

 

ツーンとした様子で言うや否や、ものすごい勢いでフライドポテトを頬張り始めた。

そういえば好きなんだっけ、ポテト。

 

 

 

「わっわっ、まって、あたしも食べる!!」

 

 

 

負けじと日菜ねぇも食べ始める。

すげえや、掃除機が二台あるみたいだ。

特にスピードに拘らない僕は手近なところにあった、ピザを1ピース頂く。

 

……ん、やっぱピザといえばこのベーシックなミックスピザかな。

トマトソースにたっぷりかかったトロっとしたチーズ。

つぶつぶしたコーンと、その苦味と歯応えがアクセントになるピーマンに…って

 

 

 

「なに?二人とも。」

 

「んーん、見てるだけだよ。」

 

「ひひふぃふぁいふえまうぇわいまふぁみ。」

 

「紗夜ねぇ、ごっくんしてから喋らないと何言ってるかわかんないよ。」

 

 

 

二人が吸引(食事)を止めじっとこっちを見ている。

まあ、紗夜ねぇに至っては飲み込むスピードを凌駕する速さで手が動いていたけど。

 

 

 

「○○くん、おいし?」

 

「ん?…うん、おいしいよ?」

 

「えへへ…。ピザ食べてる○○くんも可愛いね。」

 

「…男に可愛いって、それ褒めてるの?」

 

「いーのいーの♪…うん。

 なんだか、るんっ♪て来たよ。」

 

 

 

その後ペースを落とした二人と楽しく喋りながら食べ進め、案の定残った分は明日の食料とすることになった。

食べる前とは逆で、片付けや食べ残しの保存は全部紗夜ねぇがやる。

ついて回ってラップ掛けとかは手伝ったけど、多分あの人1人でも滅茶苦茶効率良く終わるんだよね。

 

 

 

「日菜ねぇ?食べてすぐ寝ると牛になるんだって。」

 

「いーよいーよ。動きたくないんだもーん。」

 

「豚だったかな。」

 

「ぶーぶー。ぶたさん日菜ちゃんだぁー。」

 

「なんだそれ……じゃあせめて自分の部屋行ってよ。」

 

「いやーだよーぅ。○○くんのベッドで寝てやるんだー。」

 

「ふーん。」

 

 

 

そのうち本当に眠っちゃうし、仕方ないので今日は紗夜ねぇの部屋で寝ることになった。

僕の寝床問題は解決したんだけど、紗夜ねぇの布団で寝ていいか訊いた時に、紗夜ねぇが鼻血を出したのがちょっと心配だ。

急にすごい量出たんだから。

 

ピザを食べる前にしてもらっていたように、今度は僕が膝を貸してあげた。

暫く横になっていると出血も収まったようで何よりだった。

 

 

 

近くに誰かの存在を感じながら眠るのは久しぶりだったけど、これはこれで温かくて落ち着いて何かいいね。

 

 

 

 




ご要望があったために今日はこの組です。
いつも頼んでいるピザ屋さんに期間限定でデッカイピザが出ていたので頼んだら
案の定明日の食料に回りました。





<今回の設定更新>

○○:ピザに対して特に特別な気持ちはない。
   因みに冒頭の紗夜の膝枕は、紗夜がたまに強要してくる最早恒例の行事。

日菜:漫画で読んで、ピザを注文したい衝動にかられた結果こうなった。
   初めてってわくわくするよね。
   着痩せするタイプだと思ってます。

紗夜:ブラコンがもう隠せない。止まらない。
   日菜とも仲良く過ごしてるし、幸せな世界なのかもしれないね。
   学校でも最近柔らかくなったと専らの評判だが、
   ただ単にキャラがぶれているだけかもしれない。

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