BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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2019/07/14 鍋食ってる場合じゃねぇ!!

 

 

鍋。

どんな季節に食べてもおいしい。

寒い冬には暖まるために。暑い夏にも熱さを楽しむために。

素敵な料理だ。

そしてその素晴らしい点はもう一つ。

家族で囲んで食べることができる点だ。

食事といえど、コミュニケーションがあるかないかで味も大きく変わる。

気持ちの問題と言われたらそれまでだけど。

 

要するに、一緒に鍋を囲む人間によって味や満足度も違うということなのだが…。

 

 

 

「もう、○○。お肉ばかり取らないの。

 お皿貸してごらん?お姉ちゃんがバランスよく…」

 

「はい!○○くん!!

 ○○くんの好きな鶏肉いっぱい入ってるんだよ!!あたしが取ってあげるから、○○はどんどん食べて食べて!!」

 

「いやあの、自分で取れる…」

 

「何言ってるの?自分で取ったら好きなものばかり取るでしょう?

 …○○が体を壊したりしたら、お姉ちゃん心配で死んじゃう。だからちゃんと栄養取るのよ?」

 

「う、うん…わかってるよ紗夜ねぇ…。」

 

「でもでも、筋肉にはやっぱりお肉だよねぇ。

 あたし、筋肉質な男の人って格好いいと思うんだぁ!だからいーっぱい食べるんだよー?」

 

「ひ、日菜ねぇ…。お皿に入りきってないよ…。」

 

 

 

目の前のお皿にはこれでもかとぶち込まれた鶏肉と波々満たされたスープ。

別皿にサラダのように盛り付けられた野菜たち…。

僕、鍋食べてるんだよな…。

 

 

 

「日菜、どうしてそうバランスを考えずに盛り付けるの?

 …結局のところ必要な栄養分は摂取しなくてはいけない訳で、ひいては健康を維持する…」

 

「もー、おねーちゃんもどういうつもり??

 男の子なんだから、いっぱいっぱい、好きなもの食べたいんだよ!!お肉は体にもいいしね!!

 それに一食バランス崩れたくらいで体調崩すようなヤワな子じゃないもん○○は。」

 

「ねぇ、食べようよ。美味しくなくなっちゃうよ?」

 

「○○、ちょっと待っててね?お姉ちゃん今頑張ってるところ。」

 

 

 

何をだ。

 

 

 

「○○くん?○○くんも折角だから美味しいもの食べたいもんね?

 あたしに任せといてっ!」

 

 

 

不安だ。

 

いつ終わるのかもわからない不毛な二人のやり取りを眺めていると、不意に体を後ろに引き倒された。

 

 

 

「うぉっ」

 

「大丈夫?弟くん。」

 

「…リサねぇ。いきなり引っ張ったら危ないよ。」

 

「もう、真面目だなぁ…。」

 

 

 

あれ?何でリサねぇが後ろに??

紗夜ねぇに接近禁止って言われて向かい側で食べていたはず…。二人が揉めてる間に移動したのかな??

というか!後ろから抱きしめられてるから、その…。いい匂い、するし…。柔らかいし。

 

 

 

「お姉さん二人が怖かったねぇ。…もう大丈夫だからね?

 お姉ちゃんがくっついててあげるからね?」

 

「リサねぇ…!だ、大丈夫だよ。子供じゃないんだし…。」

 

「アタシからしたらまだまだ子供だよ~。

 ほら!大人しくする!」

 

 

 

ぎゅぅぅぅぅっと力を込められる。

あぁ…埋まっていく…。

 

 

 

「今井さん?」

 

「リサちー?」

 

「んー??どうしたの二人共?」

 

「その状況は…何かしら?」

 

「どの状況?」

 

「今リサちーがやってることだよ!!

 どうして○○くんのことぎゅってしてるの!?」

 

「あなたには接近禁止を言い渡したはず…。

 ○○は私の弟です。あなたのそういった不乱次な行いは看過できません。」

 

「そーだそーだ!リサちーはなんかその…えっちじゃん!!」

 

「いや、ちょっと、二人共…。」

 

「あなたもいつまでそこにいるの!!」

 

「弟くんはここが落ち着くんだよね~?」

 

 

 

あぁ、板挟みだ。

そもそも接近禁止とか以前に、何故態々リサねぇを呼んだのか。

紗夜ねぇも日菜ねぇも、全く何がしたいんだかわかんない…。

 

 

 

「とにかく!喧嘩しないで!

 僕はご飯くらい一人でちゃんと食べられるから!!

 姉さん達も大人しくご飯食べてっ!」

 

「あっ……。」

 

「ッ…!」

 

「うぅ…。」

 

 

 

リサねぇの抱擁を振り払って立ち上がる。

ついでに喧嘩をしないようにもちゃんと言った。

 

 

 

「………。」

 

「…………。」

 

「…………。」

 

「…あれ?」

 

 

 

シーンとしてしまった。

分かってくれた?…訳ではなさそう。

 

 

 

「………う、ふえぇ…」

 

「!?紗夜ねぇ!?どうして泣いてるの!?」

 

 

 

あの紗夜ねぇがボロボロと涙をこぼし、しゃくり上げるようにして泣いている。

 

 

 

「だって…だって…ッ!

 ○○が…○○がぁ……うぇっ……ふぇえ…」

 

「僕がなに?僕がどうしたの?」

 

 

 

背中をさすりながら問うてみる。

 

 

 

「○○に…嫌われ、ちゃった…からぁ……

 ○○が、一人で…やるって…いうからぁ……。」

 

「う、うわぁ……。」

 

「日菜ねぇ、今は空気読んで。」

 

「あはは…こりゃ凄い愛情だわ…。」

 

「リサねぇも。」

 

「○○?…お姉ちゃんの、こと……ひっく、…嫌いになっちゃった…?

 いらなく、いらなくなっちゃ…うぇぇぇ……」

 

「なってないよ。ずっと要らなくなんてならないよ!

 紗夜ねぇのこと、ずっと大好きだよ!」

 

「…ぐすっ…ほんとう…?」

 

「本当だよ?…だから、泣き止んで。

 お鍋食べよう?」

 

「…うん。○○といっしょにたべる。」

 

「「!!」」

 

 

 

とりあえず今は紗夜ねぇを落ち着かせなきゃ。

こんな紗夜ねぇは初めて見る。子供みたいだ。それも僕よりもずっと小さい。

 

 

 

「紗夜ねぇの分、これでいいかな?食べられそう?」

 

「……○○、あーんして。」

 

「………。え、えーと…。」

 

「はやくぅ…」

 

「あ、う、うん。あーん…?」

 

 

 

あーん、と小さくだが開けてくれた口に小さく崩した豆腐を入れてやる。

 

 

 

「…どう?」

 

「…えへへ、おいしい。」

 

「「!!!!」」

 

「よかった…。」

 

「○○…もっと、もっとぉ」

 

「えー、もう自分で食べてよー…。」

 

「やだ。○○にあーんしてもらわないと食べられないもん。」

 

 

 

…振り切ってるなぁ。

と、まるで子供でもあやしている様な気分になったとき

 

 

 

「リサちー?」

 

「…うん。」

 

 

 

「「うわぁぁぁぁぁああああああああああん!!!」」

 

 

 

放置していた二人の姉が爆発した。

 

 

 

「○○…ここからが踏ん張りどころよ。」

 

「紗夜ねぇ…復活したんだね。」

 

「お姉ちゃんだからね。それよりもあの二人…何とかしなさい。」

 

 

 

鍋食べるだけでこんな騒ぎになるの?

 

僕、戦慄みたいなものが走ってるんだけど。

 

 

 




GAP




<今回の設定更新>

○○:意外と面倒見がいい。
   後で残りの姉も"看病"しました。

紗夜:弟に嫌われたら消滅する。

日菜:「なるほど…その手があったか…。」
   不思議と日菜がやっても効果は薄い。

リサ:色仕掛け担当。何故だか不思議艶かしい、リサねぇの甘やかし。

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