BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 - 作:津梨つな
「っじゃーん!お姉ちゃんが来たよっ!!」
「………ぇ?あ、ごめん…。…何?日菜ねぇ。」
早朝。時間で言うと6時を回ったところ。
徹夜で"怖~い動画"を友人と見ていたら、部屋のドアを吹き飛ばしつつ日菜ねぇが入ってきた。
友人とはヘッドホンをつけて通話中だったので、僕も気づかない日菜ねぇの声を友人に教えてもらうっていう…所謂ヘッドホンあるある。
一言断りを入れて席を立つ。
「う~ん…お邪魔だったかなぁ??」
「どうかなー。」
「ぶー…せっかく何もない土曜日だからって早起きしたのにぃ…。」
「や、こんな時間にこられても何もできないしさ。」
「やーだーやーだー!!○○くんと遊ぶのぉー!!」
「日菜ねぇ?…普通にうるさいよ?」
「なんでそんなに冷たいのー!?お姉ちゃんのこと嫌い!?」
嫌いじゃないけど…と思いつつチラリとPCに視線を移す。
ミュートにしてないから全部聞かれてるんだろうな…。相手は、よく二人の姉をベタ褒めしては会わせろとか結婚しないのとか喚いてくる奴だ。迂闊なこと言っても面倒なことになるのは目に見えてるし…。
「まぁ、無条件で大好きってわけじゃぁ、ないかな…。」
「………!!」
「……日菜ねぇ?」
「そうだったんだ…。…ごめんね。あたし、○○くんも好きでいてくれてるって思ってやりすぎちゃったね…。
…ぐすっ。」
「わ、わー!!なんで泣いてんの日菜ねぇ!?」
リアルなショックを与えてしまったようで、目にいっぱい涙を湛えて俯く日菜ねぇ。
あぁ、これいつもの構って欲しい時のじゃなくてマジ泣きのやつだ…。まだ2回くらいしか見たことない…。
これはこれで人様に聴かれるのはまずい状況なのでは??
「ち、ちがうんだよ日菜ねぇ…。えっと、えっと…。」
「いいの…ぐすっ。あたし、よく迷惑がられてるみたいだし…いろんな人に。」
…あぁ、気づいてたの。
まぁ紗夜ねぇとかは隠すつもりもないみたいだし普通気づくよなぁ…。
「○○くんだけは、あたしのこと見捨てないでくれてると思ってたけど、やっぱりそんな上手く行かないよね…。」
「日菜ねぇ…。」
そして始まる脳内会議。
議題は、「日菜ねぇとの関係をとるか友達から弄られるネタと姉の片方を失うか」。
…うわぁ、どっちもどっちだなぁ…。
「今までごめんね…。本当にごめん…。」
「日菜ねぇ…。」
「………。」
「…………。」
「っ!?」
あのバカ…!
ヘッドホンから友人の怒号が聞こえてくる。いくら聞こえるからって入ってくるなよ。ってかどんな声量だ。実家暮らしだろお前。
びっくりした様子でヘッドホンを凝視している日菜ねぇ。…こう言っちゃなんだが、おもちゃに興味を持った猫みたいだ。
日菜ねぇ、ヘッドホンは噛み付いたりしないよ。
「…も、もしもし…。」
あぁ!マイクを見つけてしまったか…。
恐る恐る話しかける日菜ねぇかわいい。
「…??……ふーっ。」
ヘッドホンから反応がないことに気づき、マイクにとりあえず息を吹きかけてみる日菜ねぇ。
大丈夫、機械トラブルじゃないよ。多分向こう悶えてるだけだから。
「はぁ……。」
「??……わぷっ。」
折角なんでヘッドホンを日菜ねぇに装着させてあげる。
そのまま続けてマイクに「余計なことだけは言うなよ。」と念を押した上で、
「日菜ねぇ、僕のクラスの友達。
変な人じゃないから話してみてもいいよ。」
と促してみる。
人見知りしない日菜ねぇのことだ、直ぐに仲良くなるんじゃないかな。あんまりなって欲しくないけど。
「……ひ、日菜っていいます。…○○くんのお姉ちゃんの妹のほうです…。」
「何故そんなややこしい言い方を…」
「…えっ?……うん、嫌われちゃったみたいで……。
ち、違うよっ?………うん。…いつもどんな感じなの??」
「うん。………わっ、そうなの??」
「は?たっくん、それどういうこと。………ふーん…。
そうなんだ。それは初耳だなぁ。」
急に顔つきが紗夜ねぇみたいになったな。何言ってるんだあいつは…。
それにしても、めっちゃ盛り上がってんね。僕と通話してる時は8割が生活音のくせに…。
「…!!ふぇ?…えへへへ…そうかなぁ…えへへ。
……う??………うん、あたしも好き。……うん。」
…"好き"?
「…うんっ!…ありがと。たっくん。
………そうなんだぁ!………試してみるね。」
「…?」
「るんっ♪○○くんっ!!」
「えっ…な、なに??」
さっきまであまりにしょんぼりしていたから忘れていた。相手が日菜ねぇだということを。
完全無防備な僕にずいっと顔を近づけた日菜ねぇは…そのまま僕の唇を奪った。
「……んむっ!?」
「……………んふぅ…♪」
「ぷぁっ。……ひ、日菜ねぇ!?」
「えへへ……どう?」
どう?って……。
なんて幸せそうに笑うんだこの姉は。…いや、そうじゃなくて。
「日菜ねぇ、姉弟でこういうこと、しちゃいけないんだよ!!」
「えぇー?嬉しくなかった??」
「う"……。」
嬉しくない、といえば嘘になる。
そりゃ姉弟でそういうことをしちゃいけないとか、好きな人とすべきだとか色々建前はあるけど。
…日菜ねぇは正直可愛いし、僕だって何だかんだ言いながら、好きだし…。
「そりゃうれs」
「それに、別に初めてってわけでもないもんね?」
「…えっ。」
「初めては、リサちーにあげちゃったんだもんね?残念だなー。」
「ひ、日菜ねぇ?」
「……でもいいの。」
「…??」
「○○くんが誰とちゅーしたとか、リサちーの家にたまに行くとか、ちょっと嫌だなぁって思うけど…。
でも、学校で
「惚気けてる…??ちょっとまってて」
日菜ねぇからヘッドホンを回収。
すぐさま
「お前、何言ったんだよ。」
『あぁ…ほら。今井の姐さんとの話…しちゃった☆』
「あ?ふざけんなよ。」
『めんごめんご…。だから代わりに、お前がお姉さんのことめっちゃ好きってしょっちゅう惚気けてるってことにして取り繕っといたから!』
おいおいほんとヤメロオマエハ…。
リサねぇのことはいつかバレてもおかしくないとは思っていたから仕方ないものの、でっち上げてきやがった内容に関してはどうしたもんか…。
『でもさ、お姉さんが好きなのは本当だろ?』
「はぁ?」
『頻繁に惚気るってのは作り話だけど、「結婚するなら姉みたいな人がいい」って言ってるのは本当だろ。』
「それは僕のことをよく知ってるからって意味で…」
『はぁ?じゃあ日菜さんは俺がもらってもいいのか?』
「ダメに決まってるだろ!日菜ねぇは僕のだ!……あ」
「…○○くんっ!!」
しまった。何て巧妙な誘導尋問だ。
後ろから抱きついてくる体温高めの重さに意識を移す前に、ヘッドホンの向こうからは「お幸せに~」という嘗め腐ったような声と通話を終了する音が聞こえた。
文句を言う相手もいなくなり、気の抜けた僕はそのまま床に引き倒される。
「○○くん!あのねっ、あのね!お姉ちゃんもね!お嫁さんになるなら○○くんのがよくってね!○○くんが大好きでね!○○くん大好きなの!おねーちゃんも好きだけどおねーちゃんよりも○○くんの方が好きかもしれない!ううん○○くん大好き!」
「ちょ、ちょっとまって日菜ねぇ…」
馬乗りになった日菜ねぇに顔をホールドされた状態で捲し立てられる。
何言ってるか多分本人も自覚できてないんじゃないかってくらい早口だし、なにより声量がすごい。鼓膜が持って行かれそうだ。
それにこの姿勢、さっきのことも考えると次いつ奪われるかわかったもんじゃない。
確かに日菜ねぇのことは好きだけど、家族・姉としての話だからね?異性としてじゃないんだから、そういうことはしちゃいけないとはやっぱり思うし
「またちゅーするね!!…えいっ」
「――――ッ!?」
ほらきたぁー!!
足を踏み鳴らして部屋に入場するや否や怒りの声を張り上げる紗夜ねぇ…が視界に映ったのは一瞬で、現状を把握した紗夜ねぇは後ろにゆっくり倒れ、鈍い音と共に沈黙した。
「ぷはぁ。……えへへ、またしちゃったね♪
…あれ?おねーちゃん?何でそんなところで寝てんの??」
「さ、紗夜ねぇえええええええ!!!!」
朝っぱらから何やってるんだろう。僕。
**
分岐点です。氷川姉妹それぞれ独立したシリーズもいいかもしれませんねぇ…。
※すいません、脱字を治そうと思ったら焦って丸々消しちゃいました…。
<今回の設定更新>
○○;恐らく徹夜なんかせずにおとなしく寝ていれば…
惚気けた事実は勿論無いが、シスコンの気はあるかもしれない。
…いや確実にある。
日菜:やる時はやる子。ただ人を純粋に信じすぎる傾向あり。
たっくんの言うことを100%信じている模様。
…別に今後リサとの雰囲気が悪くなったりはしない。
紗夜:このあと滅茶苦茶昏睡した。
拓馬:今回の戦犯。
恐らく一番仲がいい。絡むことが多い。
後日マジで怒られた。