BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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2019/08/07 物知り

 

「あ、そうだ。ねーねー、弟くん?今日の晩御飯、何が食べたいかなぁ?」

 

 

 

今日もまた、相も変わらずリサねぇの()()()()に来ている。今日は学校から帰った後、日菜ねぇに捕まりそうになったが何とか振り切ってこれたんだ。

まさかあんなに足が早かったなんて…。

 

そして恐ろしいのはリサねぇも同じだ。

僕は一応合鍵を貰っているから問題はないんだけど、来ていざその鍵を使おうとした時にはもう開錠済み。…要は既にリサねぇが居たってこと。

だってさ、リサねぇって基本的には自分の家、実家に住んでるんだよ。こっちの部屋は僕と二人で過ごすために借りたって言ってたし、つまり…。

 

 

 

「あのさ、おねーちゃん?今日何も連絡してないのに、僕よりも早くここにいたじゃん?」

 

「そうだね~。…それがどうかしたの?」

 

「…僕が来るって、知ってたの?」

 

「あったりまえじゃ~ん♪弟くんの考えなんて全部お見通しだよ~。」

 

「なっ……」

 

「いやぁ、愛の為せる業っていうか~?」

 

 

 

これだ。

他にもいろいろ疑問はあるんだけどね。問い詰めたところで結局全部、この"愛の為せる業"で片付けられちゃうからね。

気にしないのが一番だ。それはそうと

 

 

 

「ふーん…。えっと、晩ご飯だっけ?」

 

「そーそー!…まぁ?弟くんの好きな食べ物は勿論把握済みだけどさ?

 今日は何が食べたいかは、流石に訊かないと、ってね。」

 

「うーん…。因みに、僕の好きな食べ物って?」

 

「んー?んふふ、聞きたい?」

 

「全部合ってるんなら、是非。」

 

「よぉーしわかった。こっちおいで?」

 

 

 

向かいのソファで手招きするリサねぇの隣へ。

暑い時期ということもあって、肩やら腕やら、ちょっと肌色が眩しすぎるような気もするリサねぇ。ほんの少し汗ばんだその白い肌は僕の意識を逸らすには十分すぎるくらいで…。

いや、見るまい。そういう疚しい気持ちまできっとお見通しなんだ、この()()()()()()は。

今は好きな食べ物の話、好きな…。

 

 

 

「ん、素直に来てくれたね。えらいぞ~。」

 

「…んむ。」

 

 

 

座るや否やその流れで抱き寄せられる。薄い布一枚越しの胸が目前に迫る。

力を抜いても倒れる心配のなくなったその姿勢は僕の頭の中から"抵抗"の選択肢を否応なく奪っていく。…いつもの事だね。

諦めて顔を埋めると、いつもの落ち着きと安らぎを混ぜて安心を掛け合わせた様な香りが胸いっぱいに広がる。

あぁ、やっぱ素敵なお姉ちゃんだ…。こんな素敵なお姉ちゃんが僕の本当の

 

 

 

「…ふふっ、今「本当のお姉ちゃんになってくれたら~」とか考えた??」

 

「…なんで分かったの。」

 

「理由なんかわかりきってるくせにぃ。」

 

「…うん。」

 

「じゃあ、弟くんの好きな食べ物、知ってる限りで言うね??」

 

「どうぞー。」

 

 

 

殆ど誰にも話していないんだし、きっと全部は知っちゃいない。知っているなら神だ。姉神。

 

 

 

「前も言ってたプリンでしょ?あとは、カレーも好きだよね?それとハンバーグにエビフライも好きだよねえ。」

 

「ぅ…」

 

「意外と渋いところで、きんぴら系も好きなんだっけ?

 あ!おにぎりの好きな具はオーソドックスな梅と鮭、それもフレーク系じゃなくて形がしっかり残ってる奴。」

 

「む…………。」

 

「あと、これは忘れちゃいけないよね。ゼリー飲料が好きなんだっけ?マスカット味のやつだよね?」

 

 

 

…姉神だ。降臨なされたんだ。

 

 

 

「神様…。」

 

「うぇ??…あ、あはは、嫌だなぁもう!神様みたいに美しいなんて~」

 

「いってないよ、うっぷ。」

 

 

 

あぁもうグリグリしないで。リサねぇは頭を撫で回しているつもりなのかもしれないけど、されている僕側には色々なものが押し付けられてもみくちゃにされて…。

 

 

 

「えぇ~、でも思ってるでしょ??」

 

「うぅ?…えっと、はい、まあ。」

 

「もー。困らないでよーぅ。」

 

「ごめんって、おねーちゃん。」

 

「ふーんだ。「おねーちゃん可愛い」って言ってくれなきゃ、お姉ちゃん許してあげないもーん。」

 

「おねーちゃん可愛い!好き!」

 

「んんんんん…っ!!アタシも!弟くん、大好きだよぉ!!」

 

「うぁっ!?」

 

 

 

今度こそ体勢を変えて、改めて抱きしめられる。やめて!首筋の匂いを嗅がないで!!汗かいてるからぁ!

めっちゃ背中を上下に撫でられてるし、首周りの匂いを嗅ぎ回られる。

そのうち僕、食べられちゃうんじゃないかなぁ…。

 

 

 

「ぜ~んぶ、正解だったでしょ?」

 

 

 

ぴたりと動きを止めて耳元で囁かれた言葉に、僕は黙って頷くしかなかった。

 

 

 

**

 

 

 

『○○、まだ帰ってこないの?』

 

 

『ごめん』

 

『今日、友達とご飯食べて帰るから』

 

 

『え?』

 

『ちょっと待って』

 

『さっきはリサちーと会うって言ってたよね??』

 

 

『あー』

 

『そのあとで友達に会ってさ』

 

『そんな感じ』

 

 

『ふーん』

 

『おねーちゃんとおかーさんに伝えたらいい?』

 

 

『おねがい』

 

 

『わかった!』

 

 

 

…やっぱこういう連絡は日菜ねぇだな。

紗夜ねぇだと追求が長くなっちゃうし。

 

 

 

「…ふぅ。」

 

「おうちにちゃんと連絡できた?」

 

「うん、日菜ねぇに。」

 

「もー。…ここにいる間は、アタシだけがお姉ちゃんだって言ったでしょ?」

 

「あ、そうだった。…日菜()()()にちゃんと言ったよ。」

 

「…うん♪偉いね、弟くん♪」

 

 

 

晩御飯はハンバーグカレーだった。

 

 

 




お店のカレーより家庭料理としてのカレーが好きです。




<今回の設定更新>

○○:まとめると「小学生男子が好きなものは大体好物」
   正直、大体こいつのせい。

リサ:愛情補正が掛かっている。
   主人公のことは顔を見ていれば全てが透けて見える。
   今回も、結局晩飯のメニューは聞かずに作ったらビンゴだった。
   …着実に洗脳は進んでいる。

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