BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 - 作:津梨つな
お菓子も買った。ジュースも買った。着替えも持った…!!
今日はお泊まりなんだ。ふたりの部屋に。
「リサねぇ!ただいま~!!」
毎度のことながら、先に居て色々と準備をしていてくれるリサねぇ。…僕より後に学校が終わってるはずなのに、どういう仕組みで先にここに着くんだろう。ま、今日は買い物とかしてきたからアレだけど…。
「お、来たねぇ弟くぅん。…おかえり、外寒かった??」
「うん!結構冷えてきたねぇ。」
「そっかぁ。…あ、ホントだ。手、真っ赤だよ??」
「まだ手袋は早いかなーってさ。それにまだ、寒さの本番はこれからだしね。」
「ううむ、このままじゃ弟くんの可愛い手のひらが霜焼けになっちゃうよ…。」
「んしょ。……霜焼けはまだ早いって、リサねぇ。」
暖かいリビングまで入り、いつもの場所…ソファの脇に荷物を下ろす。今日は泊まりのグッズもあるため少々大荷物だけど、リサねぇと過ごすためだし仕方ない。甘んじて運搬しよう。
買ってきたものに関しては流石に床に置くわけにもいけないので、念のためリサねぇに確認。
「これ、買ってきたよ。…どこ置こうか?」
「ありがとね~。冷たいのは冷蔵庫で、お菓子とかは……いつものとこでいいや。流しのところ。」
「ん。…………………………おっけー、置いたよ。」
「ありがと。……ご褒美あげるからこっちおいで~。」
「ご褒美…?」
なんだろ。というか何に関してのご褒美?
声の方を見やると、ソファで隣の空きスペースをぽんぽんするリサねぇ。そこに座れってことかな。
「なぁに?リサねぇ。」
「手、見せてごらん?」
「手?……ぁい。」
手を開いてリサねぇに突き出すようにして見せる。ふむふむと頷きながらその掌を触って何かを確かめるリサねぇ。…大丈夫だよリサねぇ、僕はちゃんと存在しているよ。
「真っ赤っかじゃんかぁ……。寒い上に荷物まで持って…頑張ったね。偉いねぇ。」
「むぅ…」
すっかり眉をハの字にして、心配顔のリサねぇは僕を抱き寄せるようにして頭を撫で回してくる。擽ったい様な照れくさいような、それでいて落ち着く"お姉ちゃん"の手。…本当に、どうしてここまで可愛がってくれるのか未だに謎だけど、弟として好いてくれるならもうそれだけで全てがどうでも良くなるような気さえしてくる。
…要は、ここが凄く心地いいってこと。
「ほら、手貸して?………んっ。…んふふ、暖かいでしょ。」
「えっわっ、あっちょっ、あっちゃっあっ、ままままま、ままま、待ってリサねぇ」
「…ふふふっ、今更何照れてんの??…暖を取ってるだけなんだけどにゃぁ~??」
全く、その悪戯っぽい笑い方…。困らせようとして、わざとやってるな…?
僕の手が誘導されたのは、赤い毛糸のセーターにより暖められたリサねぇの体。…具体的に言うと、服の中、少し硬い下着を感じられる部分だ。ジッと顔を見つめてくるその上目遣いと世界史上最も柔らかいであろう感触にクラクラしてくる。
…確かに手は温まるけど、もう体中が火照ってくるというか、頭が沸騰しそうな…
「あっはははは!!弟くん!顔が真っ赤だよ~??……柔らかい?」
「……も、もうっ!!リサねぇのばか!!」
「にゃっはははは!!」
幸福の抗争は、小一時間続いた。
**
「はー、笑った笑った……。ところで弟くん?今日のお菓子は何を買ってきたのかにゃ??」
「………別に、普通だよ。」
「もぉー、拗ねないのー。……あっ、スナック菓子が多いね。」
「…気分じゃなかった??」
「そーじゃないいけどね。…例えば、ポテチってあるじゃん?」
「うん。…今日も買ったよ?のりしお。」
好きなやつ買っといでっていうから…。
「ふふっ、好きだもんね。…のり塩はアレだけど、ポテチ自体はおうちでも作れるんだよ??」
「…そ、そんなことが…」
「できるできる~。簡単だから、一緒に作ってみようか?」
「……いやでも、僕料理はあんまり」
不器用というか、そもそも料理に向いていないというか。前に一度、紗夜ねぇに教えてもらったことがあるけども、指は落としそうになるわ皿は落とすわフライ返しは溶かすわで散々だった。紗夜ねぇは「大丈夫よ」って言ってくれたけど、あの惨状は最早
「大丈夫大丈夫、料理なんて要は慣れなんだからさっ。」
「でも……。」
「あのね。…アタシの幼馴染の子がいてさ。友希那っていうんだけど、その子も料理とか全く出来ない子でね?」
「うん?」
「…でも、アタシの誕生日に向けて料理を練習したみたいでさ。……すっごくおいしい料理、作ってくれたんだよ。」
「………。」
「それを実際に見たアタシだから言えることだけど、弟くんにもきっとできる事なんだよ…料理なんて。」
「……ほんと?僕でも、できる?」
「うんうん、できるできるっ。…ほら、アタシのエプロン貸してあげるから、やってみよ?」
恐らく、これからやることは"料理"なんて大したものじゃなく、本当にちょっとした作業みたいなものなんだろう。…それでも、料理に関係する以上僕は萎縮してしまうし、リサねぇの幼馴染の話も当てはまるわけだし。
…結局、自分でもハッキリとした気持ちを決められないまま、リサねぇの誘うままにピンクのチェック柄のエプロンを身につけてしまっていた。
「…わ、本当にじゃがいも使うんだ。」
「そりゃぁね。ポテトのチップスなんだから。」
そう、僕はこのレベルだからね。ポテチなんか、じゃがいもを機械でどうにかこうにかして作るもんだと思ってた。
「んじゃまずは皮むきからね?…後ろ失礼します~。」
「わっわっ…」
「ほらほら、しっかり持って。大丈夫、アタシがちゃんと掴んでてあげるから、やって覚えるんだよ??」
後ろに回ったリサねぇに手の上からじゃがいもとピーラーを握られ、少しずつ皮を削ぎ落としていく。あ、ピーラーっていうのは僕がずっと皮剥き器って呼んでた謎の武器。古からの何かかと思ってたよ。
背中に当たる柔らかさに、さっきまで其れを直に…と邪な想像が脳を支配しそうになるが、飽く迄調理に集中する。…折角リサねぇが教えてくれてるんだ。そんな馬鹿な考えに乱されている場合じゃない。
「んふふ、当ててるんだよ。」
「確信犯なんだね…?」
…その後も様々なアプローチを振り払いつつ、何とか揚げる段階まで来た。
手元のバットには、薄くスライスされたお芋さん達が並んでいる。……あっ。
「ねえねえ、おねー…リサねぇ?」
「…別におねーちゃんって呼んでいいのに…。なあに?」
「思ったんだけど…これって、太く長くなるように切ったらフライドポテトになる??」
「んー……それだけだとただの揚げ芋になっちゃうんじゃないかなぁ。……紗夜に?」
「………うん。いつも面倒見てもらってばっかりで、何もお返しできてないからさ。
…もし家で作れたらって、思ってたんだ。」
「………もう!どうして弟くんはそう可愛いことばっかり言うのかなぁ…。君の方こそ、確信犯なんじゃないの?」
何やら複雑そうな顔のリサねぇが詰め寄ってくる。…紗夜ねぇの話題出したから怒ってるのかな。
「ええっと…」
「わかった。フライドポテトの作り方もお姉ちゃんが教えてあげちゃいましょう。…ただし!」
「う、うん?」
「……あんまり紗夜の方ばっかり構ってたら、こっちのお姉ちゃんだって拗ねちゃうんだからね?」
「そ、そりゃもう、わかってるよ…」
「…ほんと?」
「……ほんとだよ。」
「リピートアフターミー…「おねーちゃん大好き」。はいっ」
「おっ、おねえちゃんだいすき…」
「もっと元気よくっ!」
「おねーちゃん、だいすきっ!」
「んんんんんんんんっ!!!!………はぁ…ん。良い子だね、弟くんは。」
なんだか知らないけど許されたようだ。…その言葉が欲しいなら何度だって言ってあげるのに。
「でも、いつかは本当にアタシだけ見てくれたら……なんてね。」
「??」
「さっ、揚げちゃおっか!もうすぐ完成だよ~」
「!!…おっけぃだよ。」
………右腕の数カ所と引き換えに出来上がったお手製ポテトチップスは、中々に幸せな味をしていた。
久々のリサねぇですね。
<今回の設定更新>
○○:リサと一緒なら料理を始めとする様々なトラウマを克服していけそうな予感がある。
今はちょっとだけ、話で聞いたリサの幼馴染が気になっている。先人として。
リサ:甘甘お姉ちゃん党代表。実の弟?知らんな。
弟くんを揶揄うのも弄るのも心配するのも、全てお姉ちゃんであるアタシの特権なんです。
嫉妬はするけど重くはない、そんな素敵な女性です。