BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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2019/09/28 みんなお姉ちゃん

 

 

「〇〇。……もう朝よ?」

 

「んー………」

 

「もう、あなたが退けてくれないと、お姉ちゃん起きられないでしょ?」

 

「あぁ…うん、ごめんねぇ…。」

 

 

 

朝日が眩しい。…その光を受けてキラキラしている紗夜ねぇの髪も。

紗夜ねぇは毎朝こうして僕を起こしてから起き抜けていくけど、どうせ僕はここから二度寝するんだよなぁ。

 

 

 

「……もう、ふにゃふにゃしちゃって…可愛いんだから。」

 

 

 

僕の顔をなぞる様に指先を滑らせ、微笑む。

今日も女神のように綺麗だね、紗夜ねぇ。

 

 

 

「紗夜ねぇ…時間、大丈夫?」

 

「ええ、問題ないわ。」

 

「そっか。……じゃあ僕は、もう少し寝るね。」

 

「ふふっ、御寝坊さんね……。」

 

 

 

そしてまた二度、髪を梳くように撫でた紗夜ねぇは、頬にそっと口付けを残し部屋を出て行った。

ここ数日、すっかりお決まりとなった朝のひと時。

 

 

 

**

 

 

 

紗夜ねぇが寝床を出てから一時間ほど後、僕も学校へ行く準備の為リビングへ向かう。

…その途中にある部屋に寄り、寝起きの悪いもう一人の姉を起こすのは今やもう僕の仕事になりつつある。

 

 

 

「日菜ねぇ、起きないと遅刻するよー。」

 

「うぅぅぅぅむぅぅぅ。」

 

 

 

どんな唸り声だ。物凄く深い皺が眉間に刻まれている。

どのみちこのままじゃ起きないので……こめかみを突いてみる。

 

 

 

「うっ!?……むっ!!……うひゅっ!?……ぇわっ!!…」

 

 

 

相変わらず同じ発声器官が備わってるとは思えない声だなぁ…。

そしてここまでされても目を覚まさないというのは何なんだろう。眠り病的な、一種の奇病に罹っている可能性さえあると思う。

 

 

 

「ぃ、いたいよっ、〇〇、くんっ」

 

「あ、起きてたんだ日菜ねぇ。」

 

「今起きたのっ!」

 

「…おはよ、日菜ねぇ。」

 

「んー……」

 

 

 

折角目を開けたというのに、またしても目を閉じ仰向けに寝転がる日菜ねぇ。

 

 

 

「何。」

 

「んー………。〇〇くん、はやく。空気読んで。」

 

「空気読んでも分からないものは分からないんだよ日菜ねぇ。」

 

「おはようの…ほら、あれ…」

 

「…あぁそれのことか。…ごめんね、忘れてたよぅ。」

 

 

 

目覚めのキス。日菜ねぇ流に言うと、「おはようのアレ」。…先日行われた氷今(ヒーマ)姉弟連盟会談に於いて可決された「弟独占禁止法案」により、僕は()()のお姉ちゃんの共有財産という形で生活している。

それぞれの姉の要求を程よくミックスし、僕と触れ合う機会を均等化するという凄まじい状況の中に居るわけだけど。…これがまた何とも居心地の良い毎日なんだ。

勿論、要求やそれに伴う対価などは変更希望者が出るたびに開かれる会合で議論されるんだけど、今のところは「紗夜ねぇ=夜」「日菜ねぇ=朝」「リサねぇ=リサねぇが暇になり次第」と時間や状況で権利を分けているようだ。

何が言いたいかと言うと、日菜ねぇが毎朝求めてくるこれは、僕たち四人が幸せになる為に必要不可欠なものだってこと。

 

 

 

「…ん。」

 

「んんぅ………。ふふふ、今日もしちゃったねっ。」

 

「日菜ねぇがさせてるんでしょー?」

 

「嫌なの…?」

 

「ううん、僕も好きでやってることだからいいんだけどさ。」

 

「わーいっ!〇〇くんだいすきっ!」

 

 

 

今まで仰向けで寝転がっていたとは思えないほどの勢いで跳ね起き抱きついてくる日菜ねぇ。

寝起きがいいんだか悪いんだか…。

元気にるんるん言ってる日菜ねぇと手を繋いで一緒にリビングへ。

 

 

 

「あらおはよ。…あんた達最近随分仲いいわねぇ。」

 

「あ、母さんおはよ。…別に普通だよ。」

 

「ぐっもーにんまみー!そう見える?そう見えるっ?」

 

 

 

食卓に朝食を並べている最中の母親に会う。核心を突いてくる母さんと、妙にハイテンションな日菜ねぇはスルーだ。

 

 

 

「そう見えるよ。…ま、日菜と〇〇は昔から仲良しだったっけか。」

 

「えっへへー、いいでしょー。あたしね、〇〇と結婚するんだぁ。」

 

「……日菜ねぇ。」

 

「あっ。…ええと、今のは冗談で、ええと。」

 

「はいはい。いいからご飯食べちゃいなさい。」

 

 

 

幸い母さんが流してくれたからいいものの。

氷今姉弟連盟(H.I.M.A.)の中では、「結婚」のワードは禁句だ。誰も結婚できず、誰もが結婚しているような曖昧で危うい関係だから、らしい。

日菜ねぇだけが無駄に笑顔のまま、食卓でそれぞれの席に座り朝食をとる。あとで日菜ねぇを叱っておかないと。

 

 

 

「ね、ね、〇〇くん。」

 

「なに。」

 

「あーんしてあげよっか。」

 

「別にいい。時間ないし。」

 

「えぇー??…じゃああたしにして?」

 

「話聞いてた?…時間無いからやりません。」

 

「ぶー。」

 

「ん、ご馳走様。…じゃあ日菜ねぇ、先行くよ??」

 

「わ、わっ、待ってよ〇〇くんっ。…もー何でそんなに食べるの早いのー。」

 

「人の顔ばっか見てる日菜ねぇと違って食事に集中してるからね。」

 

 

 

日菜ねぇは、何が楽しいんだかずっと僕の顔をガン見している。そのせいで箸は止まるし、味噌汁は零すし…。

よかったね、紗夜ねぇが居なくて。

っと、本当にのんびりしている場合じゃないので、ぶーぶー煩い日菜ねぇを置いて外へ。

 

 

 

「母さん!いってきまーす!」

 

 

 

勿論、挨拶は忘れない。

家から歩く事数分、最初の曲がり角に差し掛かったところで―――

 

 

 

「おはよっ弟くん。」

 

「…おはよう、リサねぇ。」

 

 

 

いつもこうして壁に寄りかかって待っているリサねぇ。

そう、ここからはリサねぇの時間。

僕の学校に着くまで、僕の左手はリサねぇの物だ。

 

 

 

「今日もいつも通り可愛いねぇ!」

 

「リサねぇもね。」

 

 

 

()()()()()()()本当に良かった。

誰も傷つかない上に、三人もお姉ちゃんができるなんて。

 

 

 

 




とても幸せで、とても狂った世界。




<今回の設定更新>

〇〇:お姉ちゃんズと共依存にある関係。
   最初こそ自分の甘さに嘆いていたが、
   何も考えない事で永遠に中途半端な関係を続けていくと決めた。
   毎日甘々で、人格も変わりつつある。

紗夜:現状夜担当。決してやらしい意味ではない。
   飽く迄、睡眠時の弟に安らぎと安心を与えるのが仕事。

日菜:現状朝担当。朝はいつものアレが無いとエンジンがかからないようだ。
   担当と言ってもふわっとしていて夜に日菜が一緒に寝る日もある。

リサ:現状その他担当。決まった時間帯は無いが、隙あらばちょっかいを出す。
   結局誰と過ごしたいかは主人公のその時の気分に一任されるため、
   リサが何だかんだで強い。

H.I.M.A.:元おねーちゃん連合。苗字の頭文字を取ってこうなった。
     小難しいことは色々あるけど、要はみんなで弟を愛しましょうってこと。
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