BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 - 作:津梨つな
「〇〇くぅん、やろーよー!」
「やーだよー。」
日菜ねぇが今流行りの動画配信者になりたいと言い出したのは突然の事だった。何でも、暇潰しに有名な動画サイトを漁っていたところ、偶々知人だった元アイドルの女性の動画を見て触発されたらしい。
それ自体は正直好きにしてくれたらいい問題なんだけど、こうして只管後ろをついて回るのは恐らく僕を巻き込むためだろう。…それだけは勘弁なんだけど。
「いじわるー!やってくれたっていいでしょー!」
「嫌だよ…。…というか、トイレまでついてくる気なの?」
「え?……うーん、あたしは気にしないけど…」
「僕が気にするの!早く出て行って!」
「トイレ配信…」
ボソッと不穏な言葉を残す日菜ねぇを力づくで追い出す。…全くもう、どうしてそんなに僕を巻き込みたいんだか。僕も見せてもらったけど、日菜ねぇが触発されたそのアイドルの人の動画は本人一人だけで色々な事を取りあげていたんだよ。
それをやってみたいと思うなら一人でやってみるのが道理じゃないか。こんな見た目に華があるわけでも無い僕を巻き込んだっていい事なんか…
トイレから出ると、そこに日菜ねぇの姿は無かった。やっと諦めてくれたかと一安心したのも束の間で…
「こーらっ。〇〇。」
「??紗夜ねぇ?」
何故かご機嫌ナナメの紗夜ねぇにコツンと頭頂部をノックされる。はて、僕はまた無意識に何かしてしまったろうか。
「どうして怒ってるの?」
「どうしても何もないでしょう。…さっき聞こえてたわよ。」
「さっき?」
動画配信の勧誘を、かな。
「その…「ヤろう」とか「ヤらない」とか……えっ、えっちな、お話、が…。」
「えっち?」
「仮にも姉弟なんだから、もう少しこっそりとね…?」
「動画投稿がえっちなの??」
「動画…ッ!?…却下です。お姉ちゃん許しません。」
おかしいな。どうしてより怒りが加速してるんだろう。動画がそんなにいけなかったんだろうか。
「…もし却下だとしたら日菜ねぇに言わないと」
「やっほー!紗夜ー、弟くんー。」
「あ、リサねぇ。」
いい機会なので紗夜ねぇの却下を以て日菜ねぇを止めて貰おうと提案しようとしたんだけど、ニッコニコのリサねぇの乱入により遮られてしまった。…いつの間にうちに来てたんだろう。
「いやー、バイトが終わって帰ろうとしたらおばさんに会っちゃってね。「遊びに来たら?」って言うもんだからお言葉に甘えちゃった。」
「そっかー。」
「ふふふ、弟くんは今日もかあいいねぇ。…ほら、おーいで。」
「リサねぇも相変わらず可愛いよ。……ん。」
そっとハグしたリサねぇからは、ほんのり外の香りと冷たさが伝わってきて。体を離すのが少し惜しかったけど、あまり長く抱かれているとリサねぇに堕ちてしまいそうな気がして距離を離す。…やっぱり少し名残惜しくて、後でもう一度ハグしようと決めた。
挨拶を終えたリサねぇに紗夜ねぇが駆け寄る。
「わっ、とと…。どしたの紗夜。」
「聞いてください…。………、………。」
耳打ち。別に僕に聞かれるのは問題ないんだろうけど、内容が内容だけに大声で話しにくいんだろう。…多分さっきの件だろうし。
「ふんふん……えぇ?……ヒナが?マジ?」
「おまけに、……。…………!!」
「……はぁ!?それって、ハメ撮りってことぉ!?」
「~~~~///」
おや。おやおやおやおやおや?
真っ赤になって何度も頷いている紗夜ねぇだけど、四方や紗夜ねぇに限ってそんな勘違いは…と思った僕が馬鹿だったみたい。
要するにアレだ。日菜ねぇが僕に向けて連呼していた「やろう」を「ヤろう」だと思って注意しに来たのに、僕が「動画投稿」だなんて零すもんだから…淫らに乱れで上書きした状態になってしまったらしい。
それを聞いたリサねぇも複雑な表情で固まっているし、これはどう収集を付けたものか。
「…おっ、〇〇くーん!!おトイレ終わったぁ?」
「日菜ねぇ!!」
恐らく一番状況的にマズい人が現れてしまった。元凶と言っても過言ではないお姉ちゃんが。
日菜ねぇは能天気な声のままトテトテと歩いてきて、二人の鬼の前で僕に抱きつく。むぎゅぅぅぅ…と言っているのは日菜ねぇの口だ。
「日菜!!」
「ヒナ!!」
「え?…なあに??…あっ、リサちーだ!!」
「そんなことはどうでもいいのよ、あなた一体どういうつもり!?」
「どうって?」
「どうでもいいってのは頂けないけど、ヒナにはちょーっとお話があるかなぁ。」
「リサちーまで?…どしたの二人とも。」
この状況で全く物怖じしないのが凄い。わっと二人分の言葉の奔流を受けているというのに、日菜ねぇ本人は至って涼し気な笑顔のままだ。確かに現実問題勘違いから怒っているのはお二人サイドだけど、普通その状況だとビビっちゃうよね。多分僕なら泣いてるもん。
「あなた、〇〇と何しようって言うのよ!」
「…えー?まだ深くは決めてないけどぉ…あ、お外で何か探すってのも面白いよね!」
「そ、外……。」
「それにほら、お外で遊ぶと色んな人に出逢えるでしょー?そういう人たちも巻き込んで出来たらなーって。」
「複…数…!?」
質問に答えるたびに紗夜ねぇの顔から煙が出ている様な錯覚を覚える。実際紗夜ねぇにしてみたらそれくらいぶっ飛んだ話に変換されてるんだろうけど…おもしろいからもうちょっと黙っておこう。
「しかもヒナ、動画撮るってマジなの?」
「あったりまえじゃーん!撮影も編集もあたしが何とかするから、後はそれを投稿してぇ…」
「いやいやいや、流石にマズいよヒナ。もしかしたら学校とか特定されちゃったり、変な人に絡まれるかもしれないでしょ??」
「あ、確かにそれは怖いよね…。モザイクとか?…でも結構みんな顔出してるんだよなぁ。」
「よそはよそ、うちはうちでしょ??」
「あははっ!リサちーお母さんみたーい。…リサちーも一緒にやる??」
「三人…で??」
あぁぁ…リサねぇももう駄目みたい。日菜ねぇの問いに沸騰寸前って感じだもの。
因みに紗夜ねぇは早々にダウンして僕の手を握ってる。落ち着くんだって、これ。
「おねーちゃんも居るから四人かな!!」
「四人………ヒナ、弟くんの干物でも作る気なの?」
「えぇ?そんな企画は受けないと思うよ??」
「企画じゃなくて!そうなっちゃうよって話だよ!!」
「んー……どゆこと?」
リサねぇも敗北か。…やっぱり天災児の日菜ねぇには誰も敵わないみたいだね。
…そろそろまとめに参加してあげようかな。
「日菜ねぇ、あのさ」
「まぁ…アタシは別に、やってもいいんだけど。」
「ほんと!?」
「弟くんが…やりたいなら、かな。」
「なっ…今井さん、いけませんよそういうのは!」
「だって…アタシ弟くん好きなんだもん…。」
「そんなこと言ったら私だって好きです!」
「じゃあ紗夜も参加したらいいじゃん?」
「う…………、分かりました、私も参加します。」
「いや、ちょ、二人とも」
「やったぁ!!四人でできるんだぁ!!」
うわあ……どうしよう、頼みの綱のしっかり者二人がこれじゃあいよいよ手の施しようがないぞ。しれっと僕も頭数に入れられてるし、このまま四人で…そ、そういうことやらなきゃいけないのかな??
「あのね、多分みんな食い違ってると思うから確認なんだけど…。」
「う?…〇〇くん?」
このままだと本当に干物にされ兼ねないので、恐る恐る危険地帯に足を踏み入れることにする。
日菜ねぇの首を傾げる姿に"可愛い"以外の感情を持ったのは久しぶりだ。
「……紗夜ねぇとリサねぇはその…僕とそういうことがしたいって、事なんだよね?」
「………えぇ。私は……したい、わ。」
「…本気なんだ。」
「アタシもしたいよ。今でも毎日会えてるわけじゃないし、少しでも弟くんを感じて居たいから。」
「………ごめんね、リサねぇ。」
何だかとても申し訳ない気分になる。きっと男としてこれ以上ないくらい幸せな状況なんだろうけど、それを今から正さなくちゃいけないから。
多分相当酷い顔をしていたとは思うけど、近年稀に見る程ご機嫌な日菜ねぇに視線を送る。
「…で、日菜ねぇは動画配信者になりたいんだよね。」
「そうだよ!あたしも"
「…………遊チューヴァー?」
気の抜けたような声を漏らしたのはどちらだったか。
…"遊チューヴァー"と言えば、誰もが知っている動画共有サイト『
「……えっとさ。紗夜?アタシら、すっごい恥ずかしい事言った?」
「…そうみたい…ですね。今井さん。」
「………ねえねえ〇〇くん、おねーちゃんたちどうしてこんなに落ち込んでるの?」
「日菜ねぇのせいだと思うけどな…。」
イマイチ理解の追い付いていない日菜ねぇに、二人の勘違いとさっきの宣言の意味を耳打ちで教えてあげる。
話し終わって耳から口を離すと、何とも言えない目で二人を見る。その若干見下すような視線に、日菜ねぇのイメージとはかけ離れた冷たいイメージを覚えた。
「……おねーちゃん達、欲求不満なの?」
「「うるさい!!」」
……結局、日菜ねぇの気紛れと言うことで動画デビューの話は無かったことになったが、そこから暫くギスギスした姉弟間の空気を味わう事になったのは言うまでもない。
チューバ―へのあこがれはまったくないですね。
<今回の設定更新>
〇〇:タイプの違う三人の姉の相手をしていることで段々と察する能力が
育ってきた。
動画とかにあまり興味はない。
紗夜:えっちな話題に耐性が無い。…が耳年増。
恥ずかしくなると険しい顔になる。
日案:ミーハーなタイプ。
多分何でも出来ちゃうせいでどんどん新しいことに手を出さないと
死んじゃう病なんだと思う。
リサ:久しぶり。
えっちな動画も普通に見るし、知識もそれなりにある。
知識は。