BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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2019/12/17 一線?一戦!?

 

 

 

「結局のところさ。」

 

「…?」

 

 

 

最早氷川家(我が家)の一員であるかのように食卓を囲み深夜まで居座るリサねぇ。今も結構な夜更けだというのに僕の机で呑気にネイルアートに勤しんでいる。

そんな()()()()()()()が誰に言うでもなく唐突に切り出す。

 

 

 

「……姉弟でデキたらどうすんの?」

 

「………できる、とは?」

 

 

 

返事を返したのは僕の頭を膝に載せて只管に撫で繰り回す作業で時間を浪費している上の姉さん、紗夜ねぇ。僕はリサねぇの言わんとしてることが察せたから黙ってたけど、無垢で純粋な紗夜ねぇは反応してしまったらしい。…きっとまた()()()()の話で餌食にされるんだろう。

 

 

 

「いやさ、実際問題としてどこまで行ってるかはわからないけどぉ……紗夜とかもうヤっちゃってても不思議じゃないじゃん?」

 

「…行く?……やる…っていうのは??」

 

「…はふぅぅぅ。紗夜ってホント可愛いよねぇ。」

 

「???…全く意味がわかりません。」

 

 

 

爪を塗りたくる作業を一旦止めリサねぇが振り返る。…あぁ、あのニヤニヤした顔、完全に玩具を見つけた悪戯猫の顔つきだ。一瞬目が合った時に何やら良くない気配がして悪寒まで覚えてしまったので、寝返りを打つ要領で顔を紗夜ねぇのお腹側に。はぁ…太腿気持ちいい…。

 

 

 

「ぶっちゃけどうなん?紗夜ってモテるっしょ?」

 

「さぁ……そういった事はよくわかりませんね。何分女子校ですし、私には○○が居ますし。」

 

「ふぅ~ん?……んじゃあ、弟くん相手にさ、こう…ムラムラっと来る事とかなぁい?」

 

「むらむら…ですか。」

 

 

 

少し身動ぎしたかと思えば、顎に手を当て考え込む紗夜ねぇ。多分話題的にそんなに真剣な表情になることはまずないと思うのだが、恐らく"ムラムラ"の意味が分からないんだろうな。

 

 

 

「そそ、一人でシちゃおっかなーみたいなさ。」

 

「一人でする…というのは、むらむらをですか??」

 

「や、ムラムラっていうのは気持ちというか、概念というか……ムラムラするから一人でシちゃうって流れかにゃぁ。」

 

「ふむ。むらむら発信なのですね。……結局、一人でするというのは、何をするんです?今ここでも出来ることでしょうか?」

 

「ぷふっ。」

 

 

 

しまった。あまりの純真さに噴き出しちゃった。…だって、今ここでも出来ることですかって、正気の質問とは思えないんだもの。

だがそれがいけなかったようで、僕の頭を撫でる手がピクリと反応し移動する。そのまま僕の顎を持ち上げるようになぞり、つられて見上げた先で紗夜ねぇの真剣な目と合う。…言えないよ、シモの事なんて。

 

 

 

「○○は知っているの?」

 

「……ま、まぁ…あでも、女の子の事は分かんないからリサねぇに訊くのがいいと思うな。」

 

「…ということは、男の子のそのむらむらがあるということ?男の子も一人でするの?ねえ○○?」

 

「……う。」

 

 

 

あんまり顔を近づけないでほしい。直前にそういう話をしているわけだし、紗夜ねぇだって実の姉さんとは言え極上に美人なわけだし、その匂いや顔や体に変な想像をしないとも限らない訳だし…。

 

 

 

「…こらー、あんまり二人の世界に入らないの。…紗夜、やってみる?一人で。」

 

「えぇっ!?」

 

「……どうして弟くんが驚くかな。」

 

 

 

だって、そんな、ここで、一人でなんて、紗夜ねぇの、そういう…

 

 

 

「…出来る物なら、是非。」

 

「だ、駄目だよ紗夜ねぇ!!」

 

 

 

神妙な顔で思い切る紗夜ねぇの腰に、堪らず抱きつく。思い切り体を捻じる形になって酷く背中が突っ張って痛いが、何だかそれはとても見たくない光景だったのだ。

…ただ、抱きついた場所が場所だけに、再度その行為を想起してしまう。目の前に迫っているデルタゾーン。勿論短いキュロットパンツを穿いている為に直接は見えないが、中身を想像できないほど僕も初心じゃない。

フェロモンと表現して凡そ間違いではなさそうな匂いに、思わず体を"く"の字に折り曲げる。…そこを悪戯猫姉さんは見逃さなかった。

 

 

 

「…おやおやぁ?弟くんが先にするのかなぁ?」

 

「なっ……!○○、実際にやって教えてくれるって事なの!?」

 

「ち、違うよ!?絶対やらないしっ。」

 

「…後でするんでしょ?」

 

「リサねぇ!!」

 

 

 

嫌だこのお色気担当さん。今日に限ってはちょっとお下品だもの。

間で話に付いて行けずにキョロキョロしてる紗夜ねぇも少し可愛いし、出来れば紗夜ねぇに知られたくない事だけど……そういえば、散々煽って見せるリサねぇはどこまで知っているんだろう。勿論、経験として。

 

 

 

「リサねぇこそ、ここでやって見せてあげたら!?同じ女の子なんだし!」

 

「…ふむ、確かに一理ありますね。先程から聞いている限りだと、どうやら男女で違いが」

 

「はぁっ!?や、やらないよっ!?……ま、まぁ、弟くんが見たいって言うなら…二人きりで見せてあげてもいいけど。」

 

「ぶっ!!言わないよそんなことっ!」

 

「○○、汚いわよ。…あぁもう、涎が…」

 

「…ごめん紗夜ねぇ…。」

 

 

 

何てこと言うんだ。ありゃもう悪戯猫どころの騒ぎじゃない。女豹だ。

そりゃちょっとは見てみたいって思うけど、実際見せられたらもうまともに会話もできなくなっちゃうんじゃなかろうか。

 

 

 

「……でも何となくわかったわ。」

 

「え"」

 

「……え、えっちな…お話、してる…?」

 

 

 

僕の口を拭き終わり、またリサねぇの方をキッと睨みつけるように見やる紗夜ねぇ。少しの間を置いて、意を決したように震える小声で言ったのが上の言葉。

言い終わる頃には、顔から火が出るというより顔色が最早紅蓮の炎であるかのように真っ赤に染まっていた。

 

 

 

「……あっははははははは!!!!」

 

 

 

その顔を真下、至近距離から見上げていた僕は何も言えなかったけど、僕の学習机にセットで備え付けてあるキャスター付きの椅子で背中を反らせていたリサねぇは、その姿勢で強調する様に突き出していた形のいい胸を揺らして笑う。

 

 

 

「ひー…ひーっ……いやぁごめんごめん!まだ紗夜にはちょっと早い話題だったねぇ…。…何なら、最初の疑問すら愚問だったにゃ~。」

 

「????…リサさん?…今、凄く馬鹿にしてません?」

 

「してないしてない。…凄く羨ましいだけだよ。」

 

「羨ましい??」

 

 

 

今度はエラく頓珍漢な言葉が出た。

 

 

 

「アタシや弟くんが知ってて紗夜が知らない…それだけ聞くと紗夜が何か足りないみたいに聞こえるけどさ、結局のところ、知らなくても良い事ってあるんだよね。」

 

「……はぁ。」

 

「今回の事だって、全く知識が無いのに弟くんのことを愛してるって言い切る紗夜は本当にすごいと思う。……汚れた心じゃなく、打算でも欲望でもなく、純粋に一人の男の子が好きってことでしょ?」

 

「…まぁ、○○のことは、世界で一番愛してますけど。」

 

「そうそう、そういうところね。……だからさ、アタシも揶揄っちゃって悪かったなーって。……ちょっぴり反省。」

 

 

 

ペロっと舌を出し困ったように笑うリサねぇ。いい意味で何も知らない綺麗なままの紗夜ねぇを、流石に弄り過ぎたと言う事だろう。

…というか、そもそも紗夜ねぇは知識が無さすぎて、恥ずかしがったり勘違いするラインまで達してないんだよね。どんな匂わせ方しても純粋に"?"で返してくる、そういうところはまるで子供みたいな人だから。

その気泡一つない氷の様な澄んだ心が羨ましいと、世俗に塗れ、欲望に汚れてしまったリサねぇは言いたいんだろう。

……ただ一つ、リサねぇは知らない紗夜ねぇを、僕は知っている。…何なら、それよりももっと放置しちゃいけない魔物も知っている。

 

 

 

「そう…ですか。私は今はよくわかりませんが、そのうち自然と知ることができるのでしょうか。」

 

「うんうん、紗夜ならだいじょーぶだよ。そのままでいて。」

 

 

 

……大丈夫じゃないんだよなぁ。

 

 

 

「リサねぇ。」

 

「なぁに、弟くん。」

 

「……最初の質問だけど、もしデキたらどうしたらいいのかな。」

 

「…………………にゃ?」

 

 

 

僕の(恐らく)爆弾発言に、間抜けな声を出して固まるリサねぇ。話が終わったと思って油断していたんだろう。

たっぷり一分ほど沈黙を保った後に、爆発した。

 

 

 

「んんんんんっ!?弟くん!?ど、どういうことかな!?」

 

「ええと、どこから話したらいいか…」

 

「最初?…あぁ、できるってやつでしたっけ。」

 

「し、してるってこと!?紗夜と!?ずる…いやダメでしょ!」

 

「あの、できるってどういう」

 

「多分、紗夜ねぇはそういう自覚無いと思うんだよね。」

 

「おぉぅ…それはまた…そっかぁそっちタイプかぁ…。」

 

「あの、何をしてるんでしょ」

 

「まって!どこまで!?最後まで!?」

 

「…多分、大体は僕が寝てる間だから何とも言えないけど…」

 

「うっわぁ…えっぐぅ…」

 

「寝てるとできるんですか?ねえリサさん、○○。」

 

「朝起きると妙に気怠いんだよ。」

 

「あっちゃぁ………えぇー?もう手遅れだったらどうしよう!?」

 

「や、今のところは多分、大丈夫だと思うけど…。」

 

「確かに、寝起きで疲れが残っているのは手遅れかも知れませんね。…○○、ここは今日もお姉ちゃんと一緒に」

 

「だめ!!紗夜は今日は紗夜と弟くん一緒に寝るの禁止ぃ!!」

 

「えっ……。ちょ、ちょっとリサさん?それはいくら何でも…」

 

「紗夜が正しい知識を身につけるまで、弟くんはヒナと寝なさいっ!」

 

「日菜!?日菜ならいいんですか!?…またあの子は、私のものを…」

 

「あのね、リサねぇ……日菜ねぇはもっとやばいとおもう。」

 

「ん"ぅ!!」

 

「だって、あっちは知識もあって…その上で、本気だもん。寝ぼけてたフリとかするし。」

 

「日菜は知ってるのね…。あの子、帰ってきたらただじゃ置かないわ。」

 

「もうっ!!!……今日は弟くんはアタシが連れて帰ります!!」

 

「「ええっ!?」」

 

 

 

確かにリサねぇに関しては未知の領域だけど、氷川に棲む二体の怪物を相手にするよりはいいだろう。今はまだ来てる紗夜ねぇも、いつ来なくなるか分かったものじゃないし、日菜ねぇに関しては何仕出かすか分かったもんじゃないし。

紗夜ねぇとシンクロする様にして驚きの声を上げた僕だったけど、二時間後にはリサねぇの布団の中で甘い香りにで抱き締められていた。

 

 

 

後日、リサ大先生仕切りによる保健のお勉強会と久々の氷今(ヒーマ)姉弟連盟会談が開催されたのは言うまでもない。

…あぁ、リサねぇってちゃんとお姉ちゃんだったんだなぁって…凄く、実感しました。

 

 

 




しあわせなせかいは今日も倫理観を見失う




<今回の設定更新>

○○:幸せなんだか不幸なんだかわからない弟。
   実はけっこうやることやっちゃってた…いや、襲われてた被害者。
   とは言え大好きなお姉ちゃん相手ということで拒むことも出来ない。
   …うーむ、ファンタスティック。

紗夜:知識は無いが本能的な愛が凄い。
   弟の事を思い浮かべるだけで迸るマウンテンデューが何なのか知らないまま
   気づけば騎乗スキルを発揮していたとの事。
   ハイヨォ、シルバァーッ!

リサ:この場では唯一の良心。
   混ざりたい気持ちを必死に堪えて、姉弟を正しい道へと誘導した。
   だが結果として可決された新法案は「リサちーもまざればいいじゃん」
   だったために、結局理は崩れ往く運命なのだ。
   因みに中々の熟練者。

日菜:不在。

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