BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 - 作:津梨つな
2019/09/16 だめだよ、おねーちゃん
「○○……今、大丈夫?」
「?紗夜ねぇ…どしたの。」
夕食後、部屋で珍しく掃除に勤しんでいると、ドアから控えめな姉さんの声。
隙間を開け覗き込むように様子を伺っている紗夜ねぇ……一体何の用だって言うんだ。
「入ってもいい?」
「いいよぉ。」
「……お邪魔するわね。…ふぅっ。」
いつもの定位置、僕のベッドの枕付近に座り一息つく紗夜ねぇ。
いつにも増して険し気な表情をしているけど…何かあったのかな。
「…日菜、最近変じゃない?」
「日菜ねぇが?……そんな感じは…しないけども。」
「何だかね、距離を感じるの。」
「距離?」
あんなに人と至近距離でぶつかってくる日菜ねぇに距離だって?…あでも、確かにここ数日はスキンシップの一つもないような。それどころか…
「…あぁ、何だか妙に大人っぽいってのは感じるかも。」
「そうなのよ。……ま、弟の貴方に言われる程だからよっぽどなのだろうけど…。」
「直接訊いてみたら?何かあったのーって。」
「…そういうわけにはいかないのよ、○○には分からないかもしれないけど、難しいのよ。色々。」
ふーん?紗夜ねぇがそうだと言うならそうなんだろう。言われるとおり、僕じゃ何もわからないし。
「…じゃあ日菜ねぇにも色々あるってことなのかな。…あでも、紗夜ねぇまた怖い顔してたよ?」
「そうかしら。」
「すごかったよ。眉間なんか、こーんなに皺寄ってた。」
「あら……。」
眉を両端から指で寄せて見せる。それを見て、少し表情が和らいだみたいで少しホッとする。
「ふふっ、○○は優しいのね…私のことなんか、別に気にかけなくてもいいのに…」
「そんなこと言わないでよ…。紗夜ねぇだって大事なお姉ちゃんなんだから。」
「そうね。…ありがとう、○○。……おいで?」
微笑んでくれる紗夜ねぇ。…弟の僕が言うのもアレだけど、笑顔の紗夜ねぇは本当美人だ。…その顔でそんな、両手を開いた受け入れ態勢整えられちゃったらもう…
「ッ!!」
「あっ日菜ねぇ。」
その胸に飛び込もうかという瞬間、部屋のドアが開かれ
「ヒッ日菜っ!?…な、ななにかしら??」
「…紗夜ねぇ?」
「部屋…?…部屋に行けばいいのね?」
日菜ねぇと僕とを交互に見比べる紗夜ねぇ。…やがて小さなため息を一つ吐いて、不承不承立ち上がる。
「また後でね」と声に出さずに口を動かし、ウィンクを投げてくる紗夜ねぇは今日も綺麗だ。
「どうぞー。」
パタム。と扉が閉じられ、再び部屋には静かな時間が戻り、僕も掃除に戻る。
…部屋で何してんだろ。あの二人。
**
小一時間ほどかかって、掃除も終えた僕はベッドに倒れこむ。…紗夜ねぇ、戻ってこないなー。
「…何話してんのかな。」
ふと思い立ち、抜き足差し足…で日菜ねぇの部屋の前へ。扉にそっと耳を付け、中の様子に聞き耳を立てる。
……聞き耳成功。少しだが会話が聞こえるぞ!
???何の話だ?
想像していなかった緊迫のムードに、思わず固唾を飲み込む。
不幸?不幸とは?
…これは、聞いちゃマズイやつかな。流れから察するに、好きになっちゃいけない人を好きになっちゃった的な…?
すごいな、昼ドラみたいだ。見たことないけど。
にしても紗夜ねぇに好きな人かぁ…美人だから仕方ないけど、ちょっと複雑だよなぁ…。
…日菜ねぇが紗夜ねぇになる??どういうことだ??入れ替えどっきりとか?
詳しい状況は全く飲み込めないけど、本当にヤバイ相手を好きになったみたいだ。
…僕にも相談してくれたらいいのに。
**
何だか居た堪れなくなり自室で大人しくしていると、待ち人じゃない方が入ってきた。
「…日菜ねぇ。…紗夜ねぇは?」
「おねーちゃん具合悪くなっちゃって、今あたしの部屋で寝てるんだー。」
「えっ!!……だ、大丈夫なの?」
「うんっ!あたしがついてるからだーいじょーぶっ。
…それよりぃ……ねね、最近リサちーとはどうなの??」
「うぇっ?り、リサねぇと?別に普通だけど…。」
「うんうんっ、相変わらず仲良しってことだね♪…あ、恋のお悩み相談なら、おねーちゃんよりあたしの方が適任だからねっ?」
「な、何の話だよっ!!」
「あっははー。○○くん真っ赤になっちゃってるから、あたしはおねーちゃんのところに戻るね~。」
「もー!」
終始賑やかな様子で弄るだけ弄って帰っていった日菜ねぇ。…紗夜ねぇは心配だけど、やっぱり僕には関与できない話だったのかな。
少しもやもやしたが、気にしないことにした。
日菜ルートスタートです。
ギスギスシリアス…になりそうな始まり方ですね。
<今回の設定>
○○:みんな好き。まだ姉弟とか恋人だとか、"好き"に幅がない。
日菜:悟ってしまっている。でも弟は大好き。………辛い。
紗夜:弟大好き。好きすぎて…