BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 - 作:津梨つな
「ん。」
夕食を食べている最中、自宅ということで最近サイレントマナーモードにしっぱなしのスマホに灯が灯る。
少々行儀が悪いが、箸をくわえたまま手を伸ばし…
「こら、○○。」
「んぇ?」
「お行儀が悪いでしょう。ご飯食べ終わってからにしなさい。」
「…でも紗夜ねぇ、今さっき食べ始めたばっかりだよ?待たせるのも悪いし、返信してすぐ置くからさ。」
「……もう。じゃあさっさと返信しちゃいなさい。」
最近また険しい顔をすることが多くなった紗夜ねぇに怒られつつも、素早く画面の通知を確認。…案の定リサねぇだったために、素早く「ご飯中だからあとで」と返す。
「…誰からだったの?」
「別に、誰からでもいいでしょ。」
「ふーん?…まぁ、あたしもおねーちゃんも予想は付いてるからいいんだけど。」
「予想ついてるなら態々訊かないでよ。…リサねぇから。」
「やっぱり?」
「……チッ。」
相変わらずぽやんとした様子の日菜ねぇと、何故か舌打ちを返す紗夜ねぇ。
「紗夜ねぇの方が行儀悪いじゃんか…舌打ちなんて。」
「打ってないわよ。」
「チッて言ったじゃん。」
「してない」
「舌打ちしたよ」
「打ってない」
「じゃあ何打ったの。」
「……し、舌鼓。」
何だか最近増えたなこういう小さい喧嘩みたいなやり取り。
……舌鼓は不意打ちだったけど。あと日菜ねぇ、「ぽん」とかホント要らないから。こういう時ばっか空気読まないで。
「てゆーかさー。」
「なんだよ日菜ねぇ。」
「○○くんの、その"~~ねぇ"っていうの、お姉ちゃん呼ぶときに付けてるんだよね?」
「そうだけど。」
「じゃあ、リサちーに付けるのおかしくない??」
「えっ…今更?」
もう何ヶ月それで呼んでると思ってるの。日菜ねぇはお茶碗に山盛りのおかわりを盛ってきたようで、とても女の子とは思えない豪快な箸捌きで掻き込んでいる。
フードファイター日菜……悪くないかもしれない。因みにその横で紗夜ねぇは、自分が咄嗟に出してしまった失言に悶えている。…それ以上秋刀魚をバラさないであげて。もう内蔵だか身だか分からないくらいぐちゃぐちゃだから。
「てっきり流された話題だと思ってたのに、今になってどうして…」
「んー……○○くんはさ、リサちーの弟になりたいの?」
「えっ?……どうなんだろ。考えたことはないけど…。」
「折角他人なんだから、恋人とか目指すのが普通なんじゃないの?」
「日菜、やめなさい。」
「おねーちゃんだっておかしいと思うでしょ?リサちーがお姉さんなんて。」
「……いいから、それ以上はダメ。」
「何の話?全く見えないんだけど。」
双子で盛り上がってるところ申し訳ないけど、当の僕本人が全く話についていけてないですよ?いいんですかね?放置で。
「要するに、○○くんはリサちーの弟にはなれないってこと。」
「……一応訊くけど、なんでさ。」
「だって、リサちー弟いるし。」
「!?…ゴフッゴホォッ!」
恐ろしく予想外の答えに、僕の気管が謀反を起こしたようだ。幸い口には何も入っていなかったが、息を吸う暇がないほど咽る。
さすがの紗夜ねぇも心配になったのか、背中を摩りつつ「何やってるのよ…」と呆れ顔だ。
「ふー…ひー……日菜ねぇ、それどういうこと?」
「どうもこうも、いるんだよ。歳の近い弟が。」
「……え、だって、一人っ子って、聞いてるんだけど…。」
「んぅー。何か都合があって言い出せなかったとか?わかんない。あたしリサちーじゃないもん。」
どうしてリサねぇが僕を騙すようなことなんか…。まさか最近になって急に弟ができたなんてバカなこともあるわけないし…。
**
その後、暫くリサ…ねぇとチャットを交わしたが、そのことについては訊けず。
ただひとり、モヤモヤとした気持ちのまま眠りに就くのだった。
久しぶりの短編。うーんギスギス難しい。
<今回の設定更新>
○○:衝撃の事実。大丈夫、私もだよ。
ご飯はよく噛んで食べるタイプ。
日菜:ずっと前から知ってるけど何となく今言いたくなった。
一食あたり3合程の米を消費する驚異の胃袋。
着痩せするタイプ。
紗夜:気まずい。今ちょっと弟とどう接していいかわからない。
割と少食。魚を食べるのがちょっと苦手。かわいい。