BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 - 作:津梨つな
「○○ー、昼飯どうすんのー。」
「あぁ?俺はつぐみの弁当あるけど。」
「相変わらず幸せそうで羨ましいっすね、アンタ…。」
相変わらず、と言うほど繰り返しているやり取りならいい加減訊かずとも覚えて欲しいものなのだが。夏野はやれやれと言った様子で立ち上がり、徐に「行くぞ」と告げる。
「…行くってどこへ。」
「学食。」
「聞いてなかったのか?俺は弁当だっつってんだろ。」
「んなこたぁ知ってるよ!でもこのままじゃ僕はボッチ飯を決め込むことになるだろうがぁ!」
「そうかそうか、で?」
「で?じゃねえよっ!お前もっ!一緒にっ!来るのっ!プリーズプリズンブレイク、ウィズミー!?」
「意味わかって言ってんのか。」
何故お前と脱獄せにゃならんのだ。
「いいから!とにかく僕は一人で飯を食うなんてダサい真似したくないんだよぉ!」
「…他のやつ誘えよ。」
「僕と飯食ってくれる奴なんていねぇよ!…○○、お前を除いてな☆」
「言ってて死にたくならないか?それ。」
「どういう意味だよ!?」
そのまんまだ。誰も一緒に飯を食ってくれないなんて…哀しすぎるだろ。
「なぁ夏野。…どうせなら俺みたいにむさ苦しい男じゃなくて、可愛い女の子囲んで食っちまえよ。」
「や、○○みたいに手は早くないし、囲むほどの女の子の知り合いなんて居ないし…」
「……。桜恋ぉー!夏野が一緒に飯食わないかってよー!!」
夏野が泣いて喜ぶ程可愛らしい容姿の女に声をかけてみる。遠くの席で弁当を広げようとしていた桜恋が何ともおっかない顔でこちらを向いたのが見える。
「ヒ、ヒィィッ!!お、お前!何て奴に声かけてんだよっ!!」
「あ?カワイイ女の子だろうが。飯のついでに桜恋も食っちゃえば、もう人生バラ色だぜ?」
「血の雨が降るわ!!」
泣いてキレられた。何だこいつ。
どうやらアホの夏野でもアイツに嫌われていることはそこそこ理解できているようで。…いや、厳密に言えば嫌われちゃいないんだが、少なくとも男としては見られていなさそうだ。
なら次の候補は…
「あー…じゃあ、ちょっと待ってろ。」
「お前が来てくれりゃ済む話なのに…早くしろよな!」
夏野を残して席を立つ。次に目を付けたのはあいつらだ。
「らーんー、どっちの方がモカってると思うー?」
「しらない。…モカってるって何?」
「「つぐってる」のモカちゃん版~。流行るかなー?」
「さあ。で、行かないの?購買。」
「ちょっと腰が重い気分ー。」
「なにそれ…」
桜恋程離れちゃいない場所で謎の会話を繰り広げる赤メッシュと銀髪。俺やつぐみの幼馴染でもある、蘭とモカちゃんだ。
近付いてくることに気付いたのか、うんざりしたようにモカちゃんの相手をしていた蘭が顔を上げた。
「どしたの○○。」
「よう、お二人さん。昼飯まだか?」
「ん。今から購買行こうとしてたとこ。」
「購買…もう昼休みも半ばだぞ?大したもん残ってねーだろ…。」
漫画やゲームでよくあるような暴動のような混み具合の購買ではないが、置いてある種類も量も飽く迄おまけ程度…本当に食事がしたい奴はまず立ち寄らないような購買だ。
昼休み開始から十分程度でまともな食べ物は消え失せると言ってもいい。…特にこのロングの銀髪が素敵なモカちゃんなんかは成人男性の七倍~八倍程の胃袋を持つ少女であり、あの購買にある物じゃ絶対に満たされることは無いと断言できる。
「えぇー??残ってないのー??」
「あ、あぁ…残ってない…んじゃないかな。」
「○○、わかりやすすぎ…」
「何か言ったか?」
「……いや。」
不服そうな声で露骨にがっかりするモカちゃん。モカちゃん今日も可愛い。
とそれに合わせるように不機嫌になる蘭…何か言ったような気がしたが聞き取れない上に教えてもくれないのでまあいいとしよう。
「つーわけで、だ。学食行かないか?」
「…一緒に?」
「おう。」
…と言っても一緒に行くのは俺じゃないが。…いやでも、モカちゃんが一緒なら同行するのもアリか?モカちゃんの何が良いって、美味いものを鱈腹食べている時のあのご機嫌な顔よ。
いやぁ何とも、食べっぷりのいい女の子は実に良い。見ていて飽きないというか、自然と心が休まる様な気がする。
「…いいよ、行こ。」
「まじか!」
「モカちゃんも行くー。」
「おぉ、そりゃいいな!…俺も行こうかな…。」
「えっ?」
「………何だよ蘭、間抜けな顔して。」
「…ちょっとまって○○。一緒に行くって誰の話?」
「夏野だが?」
今日の蘭は表情が豊かでいいな。大変元気である、うむ。
だが夏野の名を聞いてげっそりしたような表情になっちまった。…嫌われてんなぁ、アイツ。
「夏野…?マジ?」
「マジもマジよ。…おーぃ夏野ぉー!」
じっとこちらの様子を窺っていた夏野だったが、俺の声を聴くや否や恐ろしい程の身の熟しで近寄ってきた。犬かお前は。
「何!?ら、蘭ちゃんとモカちゃん、オッケィだって!?」
「まだ何も言ってねえだろ…。」
OKは出ているのだが。
「え、ちょっと待ってよ○○。○○は…その、来ないの?」
「あん?…俺はつぐみの弁当があるからな。学食に行く理由がない。」
「えー……」
「露骨に嫌な顔するなお前は…。頼むよ蘭、こいつ一人じゃ飯食えねえって言うんだ。可哀想だろ?」
「んなこと言ってねえよっ!」
言ってたろ。
「モカちゃんはさんせー。…なっちー、奢ってくれるぅ??」
「おご…っ。…ま、まぁ良いでしょう!普通なら一緒に食事ができるだけで貴重な体験だと思うが、今日は僕のサービス・デイだ!光栄に思って食べることだね!!」
「わーい。きもーい。」
「きも……っ!?」
お前は喜ぶのか調子こくのショックを受けるのかどれかにしろ。イチイチうるせえんだ。
何はともあれ夏野の昼休みに関してはこれで無事解決…やっと静かで穏やかな昼食の時間に入れそうだ。
「るんっ♪なんのおはなしー??」
「あぁ?夏野の昼飯相手を探してたんだよ。」
「なつの??○○っちのお友達?」
「あぁ、こいつ。」
「わぁ面白い顔だねっ!あたしも一緒に行っていーい??」
「おう行け行け。…やったじゃん夏野…っておい日菜。何自然に混ざってんだお前。」
解決した満足感に浸り過ぎていて気付かなかった。こいついつの間に乱入してやがったんだ?
「え"……生徒会長…さん?」
「そだよっ!よろしくねっ!なつのくん!!」
「……………。○○、ちょっとこっち来いや。」
「あぁ?」
肩を組まれ集団から引き離されたかと思えば、そのむさ苦しい顔を極限まで近づけられる。
…俺にそっちの気は無いんだが…つかさっさと行けよ学食。
「お前、生徒会長とも知り合いなの?」
「勘違いすんな、アレが一方的に絡んで来るだけだ。」
廊下で激突の一件以来、やたらとちょっかいを掛けてくる厄介な存在。それが変人生徒会長の氷川日菜…なんだが。
「…すっげぇな。」
「どういう意味だ。」
「知らねーの?あの人も頭おかしい部類の人だけどさ、見てくれは良いからか結構人気あんだぜ。」
「…物好きも居るもんだな。」
「ばっかお前!ウチのいいんちょサマも中々の人気だが、あの会長サマはもっとすげー…芸能界からも声掛かってるらしいぞ。」
「ほー。」
「「ほー」って!…「ほー」ってぇ!!」
うるせえ、二回も言うな。
「っかー!これだからお前みたいな天然ジゴロのパーリーピーポーは困るぜ!」
「何だそりゃ。日本語で言え。」
「あ?…ええと、えっと、自然にその、女子供をたらし込む、愉快…な?お祭り男がいぶし銀でギンギン!みたいな。」
「態々不自由な日本語で言わんでいい。」
「アンタが言えって言ったんでしょぉがぁ!!」
「五月蠅い、黙れ。」
「…くそぉ、調子に乗りやがって…。」
「で、何が言いたいんだよ。俺早く飯食いたいんだけど。」
全く要領が掴めない。ちらっと見た感じ、日菜と蘭とモカちゃんは楽しそうにお喋りしているし、変な間にはなっちゃいないが…こっちで夏野とくっ付いている意味はさっぱり分からない。
「…○○も、行こうぜ学食。」
「いやだから弁当が」
「頼むってぇ!あんなに美少女に囲まれちゃぁ、僕食事どころじゃないYO!!」
「良かったじゃん、昼飯代浮くな。」
「餓死しちゃうよぉ!!」
めんどくせぇ。…もういいや、イチイチ相手するのも怠いし。
それにこっちでグダグダとしょうもないやり取りをして蘭達を待たせるのも悪い。
「…わかったわかった。行きゃいいんだろ。」
「来てくれんの!?マジ!?」
「来いってしつこいのお前だろうが…」
「マジかよ!ヒャッホゥ!」
歓びのダンスを踊る夏野を引き摺り女性陣の元へ戻る。お腹を押さえて待ち草臥れた様に死んでいるモカちゃんと、若干険悪なムードを放っている蘭・日菜組。
「…今度は何があったんだ。」
「聞いてよ○○っち!」
「ちょ、○○に言う事ないでしょうが!日菜さん!」
「何。」
「蘭ちゃんがね、さっきまで行くって乗り気だったのに、○○っちが行かないなら行かないって言うの!」
「ちが、言ってな…いや、言ったけど…って、そういう遠慮の無さが苦手なんですって!」
「あーもうまた苦手って言う!!」
…何だこの動物園感は。こいつら大人しく飯の一つも食えねえのか?少しはモカちゃんを見習って静かに…あぁ、こりゃ空腹で死にかけているだけか。
兎も角、争点も原因もどうやら俺にありそうなのでここはできるだけ面倒の少ない方に進もう。
「わかったわかった…まずは二人とも落ち着け。」
「う……。」
「…………うむむ。」
「さっき夏野と話しててな…俺も一緒に行くよ。」
「…ほんと?」
「あぁ、つっても食うのは弁当だがな。」
「わー!じゃぁ○○っちも一緒だね!!」
「…あぁ。だからさっさと行こうぜ。本当に食う時間無くなる。」
「わーい!」と声を上げながら廊下へ飛び出していく日菜に飯の気配を察知したモカちゃんが続き、気色悪い位のるんるんステップを披露する夏野も出て行った。この状況はもう解決というか勝手にしてくれって感じだが、結局俺が行かないと学食でもまた揉め事を起こすんだろう。
残って赤い顔で見上げてくる蘭と暫し顔を見合わせた後、弁当を持って付いて行く事にした。
「…○○、無理してない?」
「してるかもな。」
「……その、ごめん。」
「いーっての。蘭こそ、そんな顔真っ赤になるほどヒートアップしてたのか?
言われて気付いた様に頬に両手を当てる蘭。その後にぷるぷると首を振ったかと思えばすぐさま俯き、「行こ」と呟いた。
うん、今日の蘭はやっぱり愉快な感じがする。
「おう。…しかし夏野にも困ったもんだなぁ。」
「そだね。……あたしは、夏野に感謝したいくらいだけど。」
「??…あぁ、あの時間から購買行っても無駄足だしな。…俺の提案も中々ナイスタイミングだったって訳か。」
「……そう…だね。」
「……お前、何食うの?」
「んー……○○のおすすめは?」
「カツカレー。安くてボリュームあるかんな。」
「ふーん。…じゃ、それにする。」
「蘭に食い切れるかなぁ…」
「……残しちゃったら、ちょっと手伝って。」
「…ちょっとだけな。」
「えへへ、やったね。」
いや、かなり変かもしれない。
**
「…ということがあってだな。」
「どうして私誘ってくれないの!!」
夜、つぐみに昼休みの居場所を問い詰められての会話。どうやら弁当に箸を入れ忘れたことに気付き俺を探したが見つからなかったそうで。
「悪いな。文句なら夏野に言ってくれ。」
「もー…巴ちゃんとひまりちゃんと、三人でずっと探してたんだからー…。」
「ごめんて。」
三人も居るならだれか学食まで探しに来たらいいのに。とは言わないが。
本当に心配をかけてしまったようで少し申し訳ない気持ちだ。ほんの少しだけど。
「それで、お箸どうしたの?」
「ん、隣に蘭が居たからな。スプーンとフォーク借りた。」
「蘭ちゃんも学食に行くって珍しいよね。今日はお弁当じゃなかったのかな。」
「まあ珍しいわな。」
「…ね、お兄ちゃん。」
「分かってるっての、今度はちゃんと誘うから。」
膨れ面を見りゃ言いたいことは大体わかる。妹だしな。
要は仲間外れにされた気がして寂しかったんだろう。ただでさえいつも一緒に過ごす幼馴染が二分されたんだ…その上実の兄である俺も見つからないとなると、それはそれは心細い…
「んーん、そうじゃなくて。あ、誘ってくれたらそりゃ嬉しいけど。」
…違った。
「蘭ちゃん、何か言ってた?」
「蘭?……特に何か言っていたわけじゃあないが、妙に表情が豊かだったな。」
「…それだけ?」
「うん。」
何だろう。何か用事か言伝でもあったのだろうか。
暫し難しそうに眉根を寄せるつぐみだったが、暫くして「ま、いっか」と納得していた。
…あっ、待てよ?
「そういえば、夏野の食い方汚いって指摘してた。」
「夏野くんは別にどうでもいいや。」
夏野……哀れな男よ。
つぐみメインの回無いですね。
<今回の設定更新>
○○:人望があるんだか天然の人たらしなんだか。
相変わらず妹には頭が上がらず、何だかんだで大事にしているようだ。
モカに対してデレデレしてしまう様だが恋心はない。
つぐみ:毎度出番が少ないようだが今日も目一杯ツグってます。
蘭:おやぁ?デレるのも時間の問題かぁ?
モカ:モカてゃんモッカモカ。
日菜:モテるらしいがとにかく煩い。そして面倒臭い。
夏野:扱いが割り箸のササクレ以下。