BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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2019/08/24 瀬田薫劇場 -肆幕-

 

 

 

「あのさぁ、いい加減アポ無しで来るのやめない?」

 

 

 

ほんの少しいつもより忙しい土曜の夜。

よりにもよって、一番対応がめんどくさい連中が来やがった。しかも何やら知らない顔と有名な顔を連れて。

 

 

 

「ふふん、照れ隠しかい?愛い…愛いよ○○。」

 

「話聞けよ、つかどうやって親を突破した?」

 

「あぁ、それはね。…千聖。」

 

 

 

名前を呼ばれ、不機嫌そうに後ろで控えていた金髪が視線を向けてくる。

 

 

 

「私を巻き込んだのがそういう目的だったとはね。

 ○○、私を覚えてる?」

 

「……詐欺師のチサトか。こりゃまた懐かしい顔を連れてきたな。」

 

「…当時からその呼び方するの貴方達だけだからね。」

 

 

 

どうやら、現在すっかり有名人になったかつての同級生を巻き込むことで、両親を買収したらしい。

そりゃ芸能人が同級生を訪ねてきたっつったら常識外の時間でも通すか。…いや通すなよ。

 

 

 

「で?そっちのエラく露出激しいあんたは?」

 

「あ!私、上原ひまりっていいます!…薫先輩のファンなんで、着いてきちゃいましたぁ…。」

 

「…ね?」

 

「ね、じゃねえよ。ファンとイチャイチャするなら他所でやれ…。」

 

「だ、大丈夫です!イチャイチャなんて、烏滸がましすぎてできませんから…。」

 

「あんたどういう心境で喋ってんの?」

 

「ところで、忙しそうだったが何かの最中だったのかい?」

 

「ファンスルーすんなよ、案外冷たいなお前。」

 

 

 

烏滸がましいまで言われてんぞ。ある意味すげえわ。

まあ、松原も連れてきてくれたことだけは褒めてやろう。唯一の癒しだ。何度か来て漸く慣れたのか、にこにこと遣り取りを見守っている松原にも視線を向ける。

 

 

 

「…?…えへへ。」

 

 

 

おぅ。含羞む顔も可愛いなぁおい。

 

 

 

「ところでよ、瀬田?忙しいから帰れっつったら帰るのか?お前は。」

 

「うーん、難しい質問だね…。帰れと言われたら帰りたくなくなるし、帰るなと言われたなら応えてあげるべきだろうし…。」

 

「帰る気ゼロじゃん。」

 

「ははは。少しでも長く君の傍に居たいんだ。わかるだろ?」

 

「一生分かる気しねぇ。」

 

 

 

勘弁してくれそんな状況。

できるだけ早く帰ってもらえるようにと、何か口実がないか探すも、そもそも接点がないこいつにどう説明したら"納得"というものをしてくれるのか。

こいつを言い負かすことが不可能なのは今までの経験で学んだ。こいつのメンタルには凹むという状態がないらしい。

助けを求める気持ちで奴の同行者を見ると、さっきとは打って変わって不思議そうな顔で小首を傾げる白鷺千聖と目が合う。

 

 

 

「…なんだよ。」

 

「貴方、そんな感じだったかしら。」

 

「どういう意味だ。」

 

「もっとこう思いやりがあったというか、優しかったイメージなんだけど。」

 

「誰かと勘違いしてんじゃねえの。」

 

「いいえ。事あるごとに薫のこと気にかけて、上手く意見できない薫の気持ちとか聞き出すのって、いつも貴方の役目だったじゃない?」

 

「そーなんですか?」

 

「ええ、上原さん。…この男、今はこんな荒みきった様子だけど、それはそれは優しく周りに気を配れる素敵な人だったのよ。」

 

「ふわぁ…!…じゃあ、何でこんなんなっちゃったんですかねぇ?」

 

 

 

()()()()言うなピンク。

それにな、別に何も変わってねえんだよ。

 

 

 

「わ、わたしはっ、今の○○さんも素敵だと、思うよぉ?…ふぇぇ。」

 

「や、別に落ち込んでないから、励まさんでいい。」

 

 

 

…必死さも可愛いけどな。

でもどうせ言われるなら、気を使わずに心から言って欲しいもんだ。

 

 

 

「…別に、励ましじゃないんだけどなぁ。」

 

「ん。」

 

「な、なんでもないよぉ。」

 

「こら、○○。私の前であまりイチャつくんじゃない。

 花音といえど、あまりいい気はしないぞ?」

 

 

 

やめろ割り込んでくるな。あとそのイケメンヅラで頬を膨らませるな。

何か気味がわりい。

 

 

 

「もぉ、○○さん?折角薫先輩に言い寄られてるのになんなんですかその塩対応は!

 羨ましい…そして憎らしい…っ!!」

 

「うっせぇピンク。」

 

 

「はっ…!なるほど、わかったわ…っ!」

 

 

「瀬田、いいからあんまり引っ付くな。

 お前でっかいんだから、暑苦しいんだよ…!」

 

「ふふん、内心嬉しいくせに…。抱きついてきても埋めてきてもいいんだぞ?んー?」

 

「だー!もうめんどくせえおっさんかお前は!!」

 

「薫先輩!私も、私も混ぜてください!!」

 

 

「………。」

 

「千聖、ちゃん??…仲間に入りたいんだね?」

 

「…………。それはないわね。」

 

 

「いいかお前らぁ!俺は今忙しいの!

 明日までに仕上げなきゃいけねえんだから!」

 

 

 

騒がしさのあまり忘れるところだった。明日までに、明日の誕生日までにプレゼントを仕上げなきゃいけないんだった。

巴投げの要領で瀬田を退かし、絡み付いてくる上原を引き剥がす。

 

 

 

「きゃぅっ!?……んん"っ。何を、仕上げるんだい?」

 

「素の声出てんぞ。…誕生日プレゼントだよ。」

 

「へぇー!!そういういことはできるんですねぇ!」

 

「どういう意味だ上原。」

 

「なんかぁ、○○さん冷たいからぁ、他人に興味とかないのかと思ってぇ。」

 

 

 

マジでなんだと思ってんだお前。

ムカつく喋り方しやがって…。

 

 

 

「…ちょっと、○○?プレゼントって、誰に?」

 

「チサトに言っても分かんねえと思うよ。…高校入ってから知り合ったんだし。」

 

「そんなの、聞かなきゃわからないでしょ。」

 

「………お前こそ、そんなキャラだったかよ。」

 

「何か言った?」

 

「はぁぁ…。…今井っていう子なんだけどさ。バイトが一緒の子。」

 

 

 

今井リサ。――バイト先のコンビニで知り合った。もうバイトはしてないからあまり接点がないんだけど、連絡取り合ったり遊んだりはたまにする。

別に頼まれたわけじゃないが、去年も渡したから何となく惰性で今年も渡そうとしてるだけだ。

 

 

 

「今井……。リサちゃん?」

 

「えっ…。チサト、知り合いなんか?」

 

「ええまあちょっと…。…にしても意外ね。ああいう子が好みなの?」

 

「そういうのじゃねえよ。友達なら祝ってやるのが当たり前だろ??」

 

 

 

いいから早く帰ってくれ。まだ時間がかかりそうなんだ。

 

 

 

「ふ~ん?…まぁいいわ。そういう理由があるなら邪魔しない。

 ほら、薫。帰るわよ。」

 

「千聖。」

 

「なによ?」

 

「その、り、リサちゃん、っていう人は可愛いのだろうか?」

 

「…んー…。派手目な感じの、女子力高そうな感じよ。…そうよね?○○。」

 

 

 

なんだよ、帰ってくれそうな雰囲気だったのに急に渋ってんじゃねえぞ瀬田。

そんなのどうでもいいだろうがい。

 

 

 

「派手…ではあったかな。」

 

「そ、そうか…○○はそういう感じが……」

 

「ふえぇ…私とも程遠いよぉ…」

 

 

 

そういやすっかり松原を忘れてたよ。君は君である意味派手だかんな?

 

 

 

「…で、まだ帰」

 

「帰ろう。千聖、花音。」

 

「えっ?…えぇ…。いいの?薫。」

 

「………邪魔するわけには、いかないもんね。」

 

「おう、帰れ帰れ。あ、このピンクも忘れんなよ?」

 

 

 

なんかしょんぼりと肩を落としている瀬田が、ちょびっとだけ気にはなったが。

帰ってくれるならもう何でもいいや。

 

 

 

「……今まで、ごめんね、○○。」

 

パタム

 

 

 

瀬田がまともに謝ったのなんて初めてじゃなかろうか。

まぁ、何にせよ、これで明日に向けての製作を頑張れそうだ。

 

 

 




人間関係って、何かの犠牲の上に成り立ってる気がするんですよね。




<今回の設定更新>

○○:意外と手先が器用。
   去年喜ばれたピアスを製作中。
   昔の千聖もよく知っている。

薫:初めて打ち拉がれた。
  もうダメかもしれない。

千聖:普段は伊達めがねをかけている。
   主人公の両親にはサインをあげた。

花音:可愛い。ギャルギャルしてないことをめっちゃ気にしてる。

ひまり:鬱陶しい。
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