BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 - 作:津梨つな
「あのさ○○。…シチューにガラムマサラ入れたらカレーになるかな?」
「……うるせえ瀬田。黙って手を動かせ。」
「あっははー!○○っち辛辣ぅ~。」
一体どんな流れがあればこんなことに付き合わされることになるのか。
恨めしく隣の隣…ヘラヘラしている今井を睨むも、スマホで写真を撮られただけだった。何がしたいんだお前は。
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「女子力って、料理の腕だと思うのよね。やっぱ。」
「いきなり人の部屋で何だよ今井。」
バイト終わりだという今井が瀬田を連れてきたのは夜の23時。今まさに風呂を上がって着替えを済ませたというタイミングのことだった。
相変わらずヘラヘラ笑っている今井とエラく真顔な瀬田。頼むから玄関で止めてくれよ、親よ。
「い、いきなり来ちゃって…ごめんね?」
「謝るなら来んな。来たなら謝んな。」
「う、うん…ごめん。…あっ」
「あはははは!!いーねいーね!薫、可愛さ出てきたねぇ!!」
この手の話は突っ込み出すとループにしかならないから放っとこう。それよりも何だって?料理の腕だぁ?
…こっちはこれから寝る時間だってのに、まさか今から調理始める気じゃねえだろうな。
「おっ、察しいいじゃぁん!ママさんもいいって言ってくれてるしさぁ~」
「母親め…。息子の睡眠時間を何だと…」
「ご、ごめんね…?あっ、いや違うのこれはその……」
「お前も何だか面倒くさいなぁ…。」
「ひぅ!?……しぇ、しぇいくすぴあいわく…」
「偉人に逃げんな。別に悪いことしてるわけじゃねえんだから、堂々としてろってこった。」
「あぅ……うん、ありがと?」
釈然としない顔だな…。まぁ、現状お前も振り回されてるようなもんだしな。
同情するよ、瀬田。
「ねーねー、早く始めちゃおうよ??」
「うるせぇ主犯…。…つか、今井が料理得意なのは知ってっけどさ。
お料理教室ならお前んちか瀬田のところでやれよ。」
「えぇー?それじゃあ意味ないじゃーん。」
「あ?」
俺の健康的な早寝早起きスタイルが守られる、これ以上に意味のあることがこの世にあるのか?
逆に俺の家を利用する意味を教えてくれ。
「だってさ、薫が女子力磨きたいのは、○○に好かれたいからなんだよ?」
「で?」
「ってことは、わざわざ料理を作ってあげるのも愛する○○のためってわけだ。」
「ほー?そんで?」
「もー、これ以上はアタシの口から言えることじゃないしー。」
なんだろう。昼間とか、まともな話をする分にはこれ以上ないってくらい波長の合う相手の筈なのに。
今はもうただ只管に憎しみしか感じない。頼むからこういう頭の痛くなるような話を引っ掻き回さんでくれ…。
「あぁもう面倒だ。…要は料理作ったら帰るんだろ?」
「言い方~」
「次茶々入れたらてめぇの臍で茶ぁ沸かしてやるからな…今井。」
「???ごめん○○。それ全然面白くない。」
「うっせぇ!!」
「○○…かわいい…」
「てめぇの感性どうなってんだ瀬田ぁ!」
斯くして、ぎゃあぎゃあと騒ぎながらもキッチンに移動した俺たち。
どうしてこれで会話が成り立ってんのかって?俺が訊きてえよ。
**
んで結局クリームシチューを作ることになった訳だが……。
「あっ、違うよ薫!弱火から中火って書いてあるでしょ!!」
「んっ、えっ?…こ、こう?」
「それじゃぁ消えちゃってんじゃぁん!…薫って、不器用?」
「うぅ…ごめんリサ…。」
結論から言って、あいつに料理は多分無理だ。…何せシチューの隠し味に食器用洗剤をチョイスするような奴だ。
「あ、あれ??重くて混ざらなくなっちゃったよぅ。」
「あちゃぁ…これ焦げちゃってるねぇ…。」
「ごめんなさい…。」
「んっ、大丈夫大丈夫。どうせ食べるのアイツなんだし♪」
「聞こえてるぞ今井コラァ。」
「こわ~い!薫助けてぇ~」
ったく…。洗剤を回避したら今度は焦げかよ。
…つか、もう1時だぞ?何でもいいから早く寝かせてくれ…。……何もしないで待ってるのも、眠気が…限界…で………。
**
「………、……っ。」
………ん。なんだか、凄く首の下が柔らかい。……あれ?俺何してたっけ…。
薄く目を開ける。
「…○○っ。…お、起きた?」
ぼんやり見えたのは、綺麗な紫の髪にルビーのような瞳…。
「あぁ、
「!!……○○?寝ぼけてる?」
「寝ぼけてる??……あぁいや、うん。そうか…俺寝てたのか…。」
「う、うん。ごめんね、遅くなっちゃって。」
「……今何時?」
未だハッキリしない頭で、眠りに落ちる直前のことを必死に思い返す。俺の問いに薫は、バツが悪そうに笑い「4時半…」と小さく答えた。
「そっかぁ…。……お前、足痺れたりしねえの。」
「うん。心配してくれて…ありがと。」
「大丈夫ならまぁ…もう少しこうしてようかな……。」
「う、うん!ずっと、ずっとこうしててもいいよ?」
「ははは…朝には起きるさ。………サンキュ…薫……。」
「うん。…おやすみ。○○…くん。」
何か重大なことを忘れているような気がしたが、心地いい二度寝と洒落込むことに決めた俺。
この極上の枕を使えば、誰でもこうなるさ。
翌日。妙に爽快な寝起きのまま向かったリビングで。何やら凄まじく汚されたキッチンを見つつ食卓に着く。夜中のうちに何かあったのか…?
それはそうと、朝食として出てきたシチューが中々に独特な味だったんだ…。
うちの母親、舌でもおかしくなったんかな。
いやごめん。ちょっとシリアスっぽくしたかっただけで全部覚えてる。
…ただ、寝ぼけてアイツを昔みたいに呼んだことだけは、何だか気恥ずかしくって思い出したくなかった。
苗字呼びから名前呼びに変わる瞬間が一番キュンとします。
<今回の設定更新>
○○:夜はすぐ眠くなっちゃう。
薫が絡むと不思議とリサが邪魔に感じる。
薫:素に慣れてきた。
リサに振り回されている日々の中で、着実に何かが伸びている。
…よかったね。
リサ:アイアンハート。
主人公が寝落ちしたあとは、最低限の片付けまで手伝ったあと
空気を読んで帰った。
そして次の日全力で茶化した。そして彼女の臍はコンロになった。