BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

19 / 278
2020/03/01 お出かけ

 

 

「お兄ちゃんと二人でお出かけって久しぶりだね。」

 

「ああ。」

 

「天気良くてよかったね~。」

 

「ああ。」

 

「今日はどこ行っちゃおっか?」

 

「ああ。」

 

「……お兄ちゃん?」

 

「ああ。」

 

「…………お兄ちゃんっ!」

 

「…あん?」

 

「もーやっぱり聞いてない…。」

 

 

 

有意義にゴロゴロダラダラと過ごそうと思っていた日曜日。だったはずなのに…。

巴と出掛ける予定だったつぐみがドタキャンを受け、その余波の被害にあったのがそう、この俺だ。特に宛のない放浪の旅に、兄妹二人…オチつくのかこれ。

 

 

 

「さっきから何やってるの?歩きスマホはダメって言ったでしょ。」

 

「うるせえな…お前は正しさの奴隷か。」

 

「なにそれ!ダメなものはダメなの!」

 

 

ピコン

 

 

「あっ、モカちゃんだ!…………ふふっ、暇だから逆立ちしてるって。」

 

「おいブーメラン。」

 

「ぶーめらん?…買いに行きたいの?」

 

「俺がそんなアウトドアに見えるかね。」

 

 

 

相変わらずズレた頭だ。しかしモカちゃん、暇な時間に逆立ちしてるとか…可愛いかよ。是非ともその様子を一度間近で見てみたいものだが…モカちゃんはあの健康的なお臍がけしからん。まっことけしからんのよ。

 

 

 

ゴスン

 

 

「に"ゃ"ぁああ!!!」

 

「!?」

 

 

 

お臍に思いを馳せている間に右後ろから何かが潰れるような悲鳴と鈍い音が。見れば額を抑えて尻餅をついているではないか、我が妹が。パンツ見えてるぞ。

出発前にもスカートが短いんじゃないかと散々指摘したのだが、タイツを履いているからいいとそのままで来てしまった訳だが…そのタイツ越しのパンツがもう…。

 

 

 

「おっと涎が。」

 

「あうぅぅぅ……」

 

「これに懲りたら歩きスマホなんかするんじゃない。な?」

 

「お、お兄ちゃんに言われたくないよっ!」

 

「俺は道端でポストにぶつかったりしない。」

 

「むぅ。」

 

 

 

真っ赤になった鼻の頭を摩りつつ立ち上がる。少しの間恨めしそうにスマホを見つめていたが、続けて鳴ることの無い愛機にため息。ポーチにしまいこんでいた。

 

 

 

「よしっ。」

 

「……鼻赤いぞ。」

 

「しってるっ。」

 

「痛かったか?」

 

「……………いたい。」

 

「帰る?」

 

「…………帰らない。」

 

「泣くほどか。」

 

「…………ん。」

 

 

 

コクリ、と頷く涙目の妹。いや痛いんかい。

凄い音したしな。そのまま進むのか帰るのか、俺の上着の裾を掴んで離さないつぐみがどうするのか次第なんだが。何故かガンとして動こうとしない。

 

 

 

「……んー、どうしよう。」

 

「歩きスマホ、よくないね。」

 

「身を以て知ったな。」

 

「……はい、ちょうだい。」

 

「は?」

 

 

 

一転、エラくキリっとした顔つきで右手を指し伸ばしてくる。…はて。

取り敢えず右手を突き出しその手を握ってみる。握手ってやつだ。

 

 

 

「……??」

 

「???」

 

 

 

ほわんとした表情。違うらしい。

それなら、と…左手を出して掌を合わせてみる。

 

 

 

「…ぎしき?」

 

「あ?」

 

「…これ、ぎしき?」

 

「何の??」

 

「わかんない。この前夏野くんが「儀式だよ」って言っておんなじ事してきたから。」

 

「あいつぜってぇ殺す。」

 

 

 

最近調子乗ってんだよな。とは言えこのままじゃ夏野と一緒だ。

合わせている左手を少し動かし指を絡めてみる…恋人つなぎってやつだな。

 

 

 

「……お兄ちゃん、妹相手にもそんな気持ちになっちゃうの?困ったちゃんですね。」

 

「………痛み引いたなら行くぞ。」

 

「ち、違うの!スマホ出してって言いたかったの。」

 

「なんで。」

 

「歩きスマホしたら、鼻ケガしちゃうよ。」

 

「つぐみじゃないんだから。」

 

「……お兄ちゃん鼻綺麗なんだから、怪我したらモテなくなっちゃうよ?」

 

 

 

余計なお世話だし今もモテねえやい。鼻一つでそこまで変わるとも思えないし、その程度の負傷で形が変わるなら今頃お前の鼻は……

 

 

 

「なるほど、鼻が綺麗なのは遺伝だな。」

 

「ふぇ?」

 

「つぐみも綺麗だよ。」

 

「あぅ……ありがと…。じゃなくて!私と一緒なのにスマホばっかり見てるから…没収です!」

 

「……マジかよ。」

 

 

 

最近生徒会だの風紀委員だの手伝いで引っ張りだこらしいからな。確かにつぐみは真面目だし責任感もある。

ただ嫌とは言えない…断りきれない性格もあってか自分のキャパシティをオーバーしてでも頑張ってしまう。以前倒れたこともあるし、無理はさせたくない…って蘭が言ってた。倒れたのかこいつ。

 

 

 

「という訳でお前を頑張らせるわけには」

 

「だめです。今日のデート中は没収します。」

 

「デートて……つぐみこそモテるんだから、そういうことは彼氏とやれよ…。」

 

「い、いないよっ」

 

「まじかぁ……枯れてんなぁ。」

 

「お、お兄ちゃんこそ、彼女さん作らないの?」

 

 

 

俺はつぐみと違ってまるでダメだからなぁ…。告白の一つもされたことねえし。

つぐみに「上手な振り方」を相談される度に胸痛んでんだからな。

 

 

 

「気配すらねえよ。」

 

「ふーん……ところで今日は誰からメッセージ来てたの。」

 

「え。」

 

「さっき。歩きスマホしてたのって、返してたんでしょ?連絡。」

 

 

 

よく見てんな…。

ええと、今日朝から煩い連中は…。

 

 

 

「夏野。」

 

「夏野くんは別にいいから。」

 

 

 

相変わらず可哀想な夏野。

 

 

 

「桜恋と蘭。」

 

「ほら……。」

 

「ほら?…あぁあと、日菜からも来てんな。」

 

「…………。」

 

「や、別に大した内容じゃねえからいいんだけどさ。」

 

 

 

暇つぶしの雑談めいたメッセージばかりだったし、俺が望むのはモカちゃんくらいなものなんだが、ちーっとも来やしない。

モカちゃん、君は今も逆立ちしているのかい?

 

 

 

「どんな?」

 

「あん。」

 

「内容。どんなおしゃべりするの?」

 

「あー……ほれ。」

 

 

 

説明も面倒なので画面を開いて渡す。

内容としては本当に大したことなく、桜恋は「暇なら付き合え」だの「別に声聞かせてくれてもいいよ」だの、矢鱈と上から目線で暇つぶしに巻き込もうとしてくる。

日菜は只管に遊びに行っていいかとか出かけるなら付いて行っていいかとか、勝手に休日のスケジュールをpdfファイルで送りつけられたりしている。何がしたいのかサッパリだが、アレが意味不明な行動を取るのは今更だろうし。「私を知って」だぁ?そんな暇人じゃねえっての。

蘭は……如何せん口数が少ないのはチャットでも同じで、基本的に俺が話しかけたことに対して「うん」とか「そう」とか……ただ話が終わりそうになると向こうから話題を振ってくるんだよなぁ。そうなるともう止めようがない。上手いんだあいつ。

 

 

 

「………っしゅう。」

 

「んあ?」

 

「没収します!!」

 

「えー。」

 

「そして今日はお説教です!」

 

「えー?」

 

「まずはお昼ご飯だよ!お兄ちゃんの奢りね!」

 

「うぇー…。」

 

 

 

なぜ俺が。

 

 

 

「お兄ちゃん、碌な死に方しないよ…?」

 

 

 

このあと、滅茶苦茶買い物とウィンドウショッピングに付き合わされた。…小言付きで。

 

 

 




短め




<今回の設定更新>

○○:そこそこに整った顔をしている。つぐみにソックリなんだから当たり前か。
   妹相手だとあまり強気になれない。モカちゃんラブ。

つぐみ:鈍感とよく言われるらしい。
    蘭と桜恋によく相談事を持ちかけられている。
    タイツもイイ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。