BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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またしても新シリーズです。
コンセプトは「異次元(天才)とおせっかい(多弁)」です。


【花園たえ】目指せハナゾノマスター【完結】
2019/07/17 奴隷 in 花園


 

 

 

「聴いてる?」

 

 

 

宇宙の真理について考察を広げ過ぎていたようだ。

いつの間にか眼前にまで迫った()()の接近にすら気付かないとは。このボクともあろう者が、何たる失態。

だがここで慌ててはいけない。道行く有象無象共が思わず振り返ってしまう程の美貌を持つ彼女が視界一杯にその顔を広げる程近くにいたとしても、だ。

 

 

 

「花園…何だい?」

 

「だーかーらー。ギター。」

 

「ボクに、弾けと?」

 

「言ってない。」

 

「じゃあなに。」

 

「私は、聴いて感想が欲しいって言った。

 なのにずっとぼーっとして全然聴いてない。私おこ。」

 

「あー…。しかしだね、感想も何も、ボクは楽器なぞ経験もなければ興味もないわけだ。

 聴いたところで「スゴイデスネ」が関の山だぞ。」

 

 

 

そうだった。

そもそも宇宙の真理、世界の理にまで思考を深めていた原因はそれだった。

放課後の自由且つ有意義な時間を頻繁に奪いに来るこの少女は今日も今日とて音楽室なる牢獄にボクを連れ込み訳の分からない楽器を延々と弾く。睡眠の時間にしないだけ有難いと思って欲しいものだね。

 

 

 

「…それでもいい。それでも、○○に聴いて欲しかった。」

 

「……それじゃあ適当に感想だけ伝えるが、」

 

「だめ。さっきは聴いてなかった。

 …もっかいやる。」

 

「なっ…!いいかい?ボクはそもそも何も真剣に聴くつもりはないし答えるつもりもない。

 言った所で意味がないわけだからね?だから君が演奏を繰り返す意味はないという訳だ。

 だからほら、その紐みたいのを首に掛けるのは止め賜えよ。弾く準備もせずに――」

 

 

 

ギュゥィイイイーーーーーーーーーン

 

 

 

「――意地でも弾くということか。

 よかろう。君のその心意気!見せてみたまえ!!」

 

「うるさい。集中するからだまってて。」

 

 

 

しかと見届けてやろう。その上でしょーもない感想を言ってやろう。

 

 

 

**

 

 

 

「ちょ、ちょっとストップだ。演奏を止め賜え、花園!」

 

「むぅ?体が温まってきて、ノビも良くなった。

 …ここで止めるわけにはいかない。」

 

「その気持ちも理解できなくはないがね。外を見たまえよ。」

 

「そと?」

 

「すっかり日が落ちているだろう!あれから3時間も弾き通しだ。

 時間的にもボクの耳的にもそろそろ限界なんだ、わかってくれたまえ。」

 

「…まだまだ、練習不足。」

 

「君は家でも練習を続けているのであろう?であるなら学校での鍛錬はこの辺りで切り上げるべきだ!

 いや、素直に言う。ボクを開放してはくれないだろうか!」

 

「…まだ。感想をもらってない。」

 

「それは話すタイミングも間も作らなかったからだろう…。」

 

 

 

ジャァァアアアアアアアアアアア………ン

 

 

 

「人が話している時には無闇に掻き鳴らさないことだ。まずはそれを置き賜え。」

 

「不満…。」

 

「そしてケースを用意して、中に入れてご覧。」

 

「うぅ…でもこれじゃあ弾けない。」

 

「いいんだ、一旦入れてケースを閉じてみたまえよ。」

 

「…それで?」

 

「それを背負うんだ。落とさないように、慎重に、慎重に…」

 

「…こう?」

 

「…なるほど、センスがいいな。次は校門に向かうわけだが…。

 途中で難所がいくつかあってだな。」

 

「難所?…馬が要る?」

 

「どういった思考回路か未だ読めないな君は…。

 いいかい花園、その椅子を片付ける手を止めずに聞くんだ。

 まずはここの鍵を返しに行くこと。その手に持っている奴だな。」

 

「…あぁ、これ。いつのまに?」

 

「先ほどここを開けるために借りに行かせただろう。

 そうしたら次に大事なのは挨拶。それから次は靴を履き替える必要が有り――」

 

 

 

また突発的にあの刺激の強い音を鳴らされないよう、持ち前の多弁力で注意を逸らしつつ帰路を急ぐ。

こうでもしていないと目にも止まらぬ早業で演奏の体勢を整えてしまうからな。花園は。

 

 

 

「すごい…気づいたらもうすぐおうちだ。」

 

「今日は中々に要領よく帰って来れたな。花園。

 だが、家に帰るまでが下校だ。気を抜くのはいけないことだぞ。」

 

「うん、わかってる。

 …今日の演奏どうだった?」

 

「わかっているならばよろしい。そのまま、弁えていなさい。

 素人目ではわからないが、格好良かったのは確かだ。あ、そうだ、家に帰ったらまず最初にすることは何かね?」

 

「ドアあける。」

 

「次。」

 

「靴を脱ぐ。」

 

「次。」

 

「投げる。」

 

「並べて、次。」

 

「…寝る?」

 

「面倒がらない。手洗いとうがいであろう?ここを欠かすと人間にとって大切な免疫力というビジネスパートナーを失う事になる。

 これは人体にとって重大な損失と言える。」

 

「なるほど。びじねすぱーとなーさんはすごく背が高いよね。

 …演奏、どれくらい格好良かった?」

 

「何の話だ。君の持っている免疫力の身長には興味がないが…。

 そうだな、茶化せず見惚れてしまうくらいには魅力的だった。…ええと、何の話だったか。」

 

「パセリとセロリが好きだって言ってた。」

 

「免疫力と会話ができるのか…。まぁいい。

 とにかく、日常生活に於いてルーティンを組むことは大切だ。ひいてはそれが生活習慣となるのだからな。

 ギターとやらに執心するのもいいが、自分の身体も省みることだ。」

 

「わかった。目指せ生活習慣病…。」

 

「病はやめておきなさい。

 それではボクは帰るよ。アデュー。」

 

「うん、ばいばい。」

 

 

 

ふう、今日も中々に大きな仕事だった。

部活動に所属するよりよっぽどやり甲斐のある仕事だと思うよボクは。うん。

 

 

 

 




一応おたえちゃんでぇす。




<今回の設定>

○○:独特なキャラクターを作りたかった。
   共学化した花咲川にてたえちゃんに目をつけられる。
   クラスでの呼び名は、「異次元漂流者」若しくは「奴隷」

たえ:原作よりもよりぶっ飛ばすのが目標。
   もう、ちょっと変わってるとかそういう次元じゃない。

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