BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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2019/08/13 花園 in 仮想現実

 

 

普段何も用事のない日や、何のタスクにも追われていない日は趣味のビデオゲームをして過ごすことが多い。

そのせいもあってか視力は低下。中学生の頃にはすっかり魅惑のメガネボーイになっていた。まぁそんなことは置いといて。

 

 

 

「科学力の進歩っていうのは全く…。

 人を虜にしてやまない娯楽を日々世に出しているというのだから…。本当、堪らないよ。」

 

 

 

今まさに、起動音を響かせブルーの光で周囲を照らす機械。ヘッドマウント型のディスプレイを前に、思わずうっとりとした声を漏らすボク。

…そしてそれを無表情で見つめる花園。

 

 

 

「…だーりんは私の虜?」

 

「その呼び方定着させる方向で行くのかね?そもそも意味わかって言ってる?

 あと、話の何を聞いてそう思った?」

 

「じゃあ、トリコ?」

 

「安心したまえ、イントネーション変えなくてもちゃんと聞いているよ。

 …結論から言うと、ノーだ。」

 

 

 

おかしい。家にまで上げるつもりではなかったのだが気づけばここにいる…。

今日で言うならば、花園の家にご両親が居なかったのが問題か。せっかく送って行ったのに。

というか居ないなら最初に言っておくべきだろうに。

家についてドアノブを回したところで「あっ」だもんな。さすが花園、彼女らしいといえばそれまでなのだが。

 

 

 

「その機械は?」

 

「あぁ、これ。ゲームだよ。中に画面があるのさ。」

 

「…えっちなやつ?」

 

「断じて違う。」

 

「でも、誰にも見せられないやつだから…」

 

「はぁぁぁ……いいかい花園?これはVRといって、その構造も仕組みもプレイヤーに更なる没入感を与えるために」

 

「難しい話嫌い。」

 

「…知ってるとも。」

 

「でもだーりんは好き。」

 

「またブっ込むね君は。あまり手放しには喜べないがね…。」

 

 

 

あの花園に好かれるだって?何も知らない愚かな男どもなら単純に歓喜なのかもしれないがね?まぁ、黙っている分にはただの整った外見の大人しい少女だ。無理もない。

ただ、花園たえという人間の"中身"を数ミリでも知っている者ならそうはならないだろうよ。

実質、解き明かされていない宇宙を一つ任されるようなものだ。並大抵の根性じゃあやっていけまい。

斯く言うボクも何故このような関係になってしまったか、もう覚えてはいないのだが…。

 

 

 

「おぉ、これはすごい。」

 

「目を離した隙に装着してみせるとは。装着方法はわかったかい?」

 

「ん、私天才。」

 

「表情はイマイチ見えないが誇らしげな雰囲気は伝わるぞ。

 えらいえらい。」

 

「にははっ……!」

 

 

 

相変わらず独特というかどう発音しているのかわからない笑い声だな。

…さて。それじゃあここからどうなるのか。天才さんの行動も見ものであるな。

 

 

 

「……ぅ??………むぅー。」

 

「…くくくっ…。」

 

「…むむ???………んあ??……ぅう…」

 

「……っ。…ふふっ…。」

 

 

 

困ってる困ってる。

そりゃそうだ。現状システムが立ち上がっただけ。肝心のゲームはここから選び、自らの手で始める必要があるのだよ。

その為にはこの、ボクが両手に持っているスティックかコントローラーが必要なのだが。流石に動作だけで操作が完結する段階までは進歩していない。

おいおい花園。傍から見ている分にはすっかり道化ではないか。なんだいその珍妙なポーズ集は。

 

 

 

「…あっ?」

 

「…だーりん、馬鹿にしてる?」

 

 

 

いつの間にやら不思議な踊りをやめて装置を脱ぎ捨てた彼女は、仁王立ちでこちらを見下ろしていた。

ご立腹か。ご立腹なのかね。ボクはとても愉快だよ!!

 

 

 

「その棒使うんでしょ。」

 

「ご名答。流石は天才といったところか。」

 

「ちょうだい。」

 

「どうしよっかなぁ…。」

 

「ちょうだい。」

 

「因みに言うと、これ使わなくても君のその綺麗な声でも操作はでき」

 

「ちょ う だ い」

 

「……やれやれ。」

 

 

 

全く。そこまでVRに拘るかね。

確かに?ヴァーチャル・リアリティ…。この甘美な響きよ。ボク以外にも魅了される者が居たとしても何らおかしくは…

 

 

 

「私が、ギター以外で遊ぶの、や?」

 

「はぁ?何でそうなる。」

 

「だーりん、いじわるするから。」

 

「いや、君のギター聴かされるよりはよっぽどマシだよ、この状況の方が。」

 

「………。」

 

 

 

腑に落ちない顔をするんじゃない。君が振ってきた話ぞ。

 

 

 

「…そんな顔するんじゃないよ。たかがゲームだろうに。」

 

「…たかがじゃないもん。」

 

「…まぁ、確かにそうだな。ボクとしたことが、至高の嗜好を蔑むような発言をしてしまうなんてね。

 …ぷっ、至高(しこう)嗜好(しこう)だって!プークスクス。」

 

 

 

全く…今日のボクは一体どうした。ギャグのセンスもキレッキレじゃないか。

 

 

 

「だーりんとお揃いの遊びだもん。…たかがとか言わないで。」

 

「うっ………。」

 

「だーりんは、大人しく私にゲームを教えるの。いい?」

 

「……致し方ないね。」

 

 

 

全く…今日の君は一体どうした。まるで女の子のような表情を見せるじゃないか…。

 

 

 




天災が仮想現実で暴れまわるが如く。




<今回の設定更新>

○○:その気になれば普通に喋れる。
   ゲーマー。
   今回のモデルはP○VR。
   それ以前にさらっと女の子を家に上げてるってどうなの。

たえ:別にぼっちじゃないが。主人公を、有象無象の中で唯一構ってくれる人間だと認識している。
   あれ、この書き方だとまるで人間じゃないみたいだね。
   果たして今回の様子はデレの始まりか、混沌の前振りか…。

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