BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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2019/10/30 同衾の花園

 

 

 

「だーりんだーりん。」

 

「……んん…なんだね。……ってまだ起きるには早すぎる時間じゃないか…。」

 

「ねぇだーりん。」

 

「もぅ……もうすこし………寝かせて……。」

 

「…むぅ。」

 

 

 

ベッドを一瞬沈ませ、隣で寝ていた物体が起き抜けていく感覚。さっきチラと見た時計はまだ午前三時を回ったあたりだったし、こんな時間にどうして元気なのだあのこ(花園)は…。

やはり彼女と一緒に過ごしていると、ボク自身の常識というか日常というか、ルーティン的なものが次々壊されていくのだと、再度実感しつつも事の発端を振り返ってみた。

 

 

 

**

 

 

 

「……君の家はこっちじゃないだろう。」

 

「え?今日はこっちなんだよ。」

 

「…出たな花園節。」

 

 

 

すっかり日常となっている二人での下校。ここを右に曲がれば花園家…という交差点で、何故か折れずについて来た彼女。一応無駄と知りつつも真面目に質問したが、相変わらずの花園ワールド全回の回答で流されてしまった。

そのままスキップでもし始めん程の元気さで隣を歩く。どうせうちに来る気なのだろうと軽く考えていたのだ……実際に部屋に花園が上がるまでは。

 

 

 

「あら、おかえりおたえちゃん。○○に意地悪されなかった?」

 

「んーんっ、大丈夫だった!!だーりんずっと一緒にいてくれて…」

 

「事細かに話さんでもよいのだよ…。…で?また晩飯も共にしようというのかね?」

 

「今日ね、だーりんの部屋に泊まっていいんだって!!…ね?まま?」

 

 

 

………?泊まる?確か明日も普通の平日で学校はある。それに泊まるって言ってもウチには客間もないし空き部屋だって……ボクの部屋?

 

 

 

「えぇそうよ。ちゃんとお母さん達には言ってきた??」

 

「うん!!お母さんもお父さんも、失礼の無いようにって!!」

 

「そっかそっか。おたえちゃん良い子だからいつも通りで大丈夫だからね?…誘ったのも私だしねぇ。」

 

 

 

お前かよ…!!

 

 

 

「ありがとう!!まま、大好き!!」

 

「あぁ……やっぱおたえちゃん可愛いわぁ…。」

 

「う?……ままも可愛いよ??」

 

「…ねね、おたえちゃん。…○○とはいつ結婚するの?」

 

「やめい。」

 

 

 

延々と展開される頭の悪い会話に割って入る。このままではこの玄関で婚姻関係でも結ばれそうだ。

 

 

 

「んもう、どうして邪魔するのよいけずぅ。」

 

「うるさい。…行くぞ、花園。」

 

「お?およよよ??……引っ張らないで~だーりん~。」

 

「早く部屋に来るんだ。終わりが来ないぞこのコントは。」

 

「……お部屋で結婚式するの??」

 

「しません。…取り敢えず荷物置きたいだろ?…ボクは話が聞きたいが。」

 

 

 

そのままに花園を引き摺って自室へ放り込む。強めに閉めた扉は一応拒絶の意思を込めてのものだ。…多分伝わらないけど。

 

 

 

「…で?ボクはイマイチ状況が把握できていないんだが、何しに来たんだね?」

 

「ままが、泊まりにおいでって。」

 

「…あ、本当にその理由だったのか。」

 

「なんなら、そのままうちの子になっちゃいなさいって。」

 

「そう簡単になれるもんじゃあないよ。」

 

「でも、だーりんのお嫁さんになったらなれるって言ってた。」

 

「どういう意味かわかって言っているのかね…。」

 

 

 

花園が花園じゃなくなるということなのだよ。

 

 

 

「……じゃあちょっと保留にする。」

 

「そうしたまえ。」

 

 

 

花園がうちに来たとき、特に共通の趣味もないボク達は基本的に各々のしたいことをして過ごしている。そうなると花園はギターを弾いているか部屋の本を勝手に読み漁るか、無駄に部屋を散らかし出すか…。

今日も御多分に漏れず話したい内容が片付き次第それぞれの時間の過ごし方へ……移行できなかった。勉強机備え付けの椅子に座ろうとしたのだが、右腕にひしっとしがみつかれているせいで動くに動けない。

 

 

 

「…なに?」

 

「今日はだーりんと一緒にあそぶ。」

 

「なにして遊ぶつもりだね…ボクは読書して過ごす予定だったわけだが?」

 

「……そのご本読んで聞かせて。」

 

「……正気か?」

 

「うん。」

 

「………なら読書は中止だ。何か遊べそうなものでも探そう。」

 

 

 

そういえば、花園がこうして通うようになるまで、友人を家に上げる経験など無かった。元々他人と関わることを求めないボクだ。当然遊びの道具なんか何一つないし、そもそも遊ぶもの自体何を指すのかもイマイチわからない。

 

 

 

「あっ、だーりんだーりん!」

 

「どした。」

 

「あそこの引き出し!なにか入ってそう!!」

 

「……あそこは昔やり終わった問題集やテキストが仕舞ってある段だぞ…。」

 

 

 

何も無いとは思いつつ、かなり重くなっているその段を引出す……と。

 

 

 

「あった!とらんぷ!!」

 

「……マジか。」

 

 

 

誰かが置いていったものだろうか。割かししっかりしたケースに入ったトランプがひと組出てきた。…何故花園がこの場所を探し当てたのかはわからないが、何分常識の通じない未知の生命体だ。今更驚くこともない。

 

 

 

「…トランプ、わかるのかね?」

 

「七並べしたい。」

 

「七並べ…?とは?」

 

「はい、じゃあおたえ先生が説明しますので、ちゃんと聞くように。」

 

 

 

その後三時間に渡り、花園先生の指導のもと七並べを楽しんだ。…正直ただ数字を並べるだけの作業だったが、一挙手一投足何かしらのリアクションを起こす花園を見ていたせいか不思議と楽しめた気がした。

 

 

 

**

 

 

 

夕飯、入浴、就寝準備と一人の時とも変わらないような自然さで終わり、床に就いたのが丁度てっぺん辺り。

花園のその言葉通りボクのベッドで二人で寝ていたはずだ。

寝始めこそ心臓の鼓動が抑えられなかったが、眠気が強まるにつれてどうでもよくなっていったらしい。気づいたときにはその体温すら心地よく感じられ、深い安らぎに落ちて行って……まさかこんな時間に起こされるとは思わなかった。

 

 

 

「……しかしどこへ行ったんだあの子は。」

 

「だーりん、だーりん見て。」

 

「…今度はなんだ。」

 

「じゃーん。」

 

 

 

ほぼ真っ暗な部屋の中、少し目が慣れてきたのかぼんやりと浮かぶ花園の姿。……エプロン?

 

 

 

「あのねあのね、ご飯が炊けまして。」

 

「…こんな時間に?」

 

 

 

はて、そんな謎の時間にタイマーをセットするだろうか。

 

 

 

「まぁ私がしたんだけど。」

 

「何やってんだ……。」

 

「きっと夜遅くまで遊んでたらお腹空くと思って、夜食用にね。……でもくっついてるのが幸せすぎて寝ちゃったからさ。…おたえちゃん、読み間違えちった✩」

 

「そうかい。寝心地良かったもんな。」

 

「だーりんもそう思う?」

 

「うん、そうだね。…今日は夜食もなしにして、朝まで寝たらどうだい。…またくっつくと暖かいし幸せだろう。」

 

 

 

早く、早くまた眠りに落とさせてくれ。一度覚醒してしまうと暫く眠れなくなる体質なんだ。

 

 

 

「ほら、エプロンは机にでも置いといてさ。」

 

「う……ちょっと残念。」

 

「また作ったらいいさ。……ほら、こっちおいで。寝るよ。」

 

「……ぎゅってしてもいい?」

 

「いいとも。だから早くおいで…。」

 

「私が上になってもいい?」

 

「苦しくて眠れないじゃないか…普通に隣りにおいで。」

 

「えー…でも、でもね。新婚の夫婦さんはどっちかが上になって…」

 

「……たえ。」

 

「!!……は、はい。」

 

「そういうのは大人になってからでいいからね。今は布団に入って、二人でくっついて寝よう。…いいね?」

 

「…ん。わかった。」

 

 

 

もぞもぞと潜り込んでくる感覚。…どうでもいいが、()()は布団の足の方から入って枕側に顔を出すようにして布団をかぶる。お陰で髪はボサボサになるのだが、何やら本人は凄く満足そうなのでこれはこれでいいのかもしれない。

腕枕の要領で首の下に腕を差し入れてやる。少し頭を浮かせたたえはぎこちない動きで頭を下ろし、両腕でそっと抱きついてきた。そのまま存在を確かめるように胸板のあたりに顔を擦りつけている。

……あぁ、来た来た来た…心地よい……二度目の……眠気が。

そうしてボクは、たえと共に幸せな眠りへと落ちていったのだった。

 

 

 

「だーりん……なまえ……呼んでくれたっ…ふふふ。」

 

 

 

 




人と一緒だとすぐ寝ちゃうんですよね。




<今回の設定更新>

○○:人生初めてのトランプ体験だった。
   たえと一緒にいることで、何かが少しずつ変わっていく予感を感じている。

たえ:か わ い い 。
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