BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 - 作:津梨つな
「こらこら、そんなに何でもかんでも買っちゃいかんのだよ。」
「えーだって、きれい。」
買い物にやってきた花園とボク。母親に頼まれて、花園のバースデーパーティグッズを買いに来たのだが…。何故その買い物に花園本人がついてきてしまうのか。これではサプライズもへったくれも在らず、本末転倒というやつじゃないのかね。
しかも、買いに来た店が百円ショップというのがまた悪かった。ボクとしてはキッチン用品と飾りつけの雑貨が欲しいだけなのだが、花園は目に映るガラスやプラスチック商品を片っ端から持ってきてしまう。カラスかね君は。
「いいから、置いて来なさい。」
「やだぁ。」
「やだじゃない。持ってきても今日の買い物リストに入っていないものは買わないのだよ。」
「そんなリスト持ってないでしょ。だーりんの嘘つき。」
ぷくっと頬を膨らませる花園。そうまでしてそのギラギラした気色悪い髑髏が欲しいかね。…だいたいそれは…貯金箱なのか。なるほど。
「そりゃあ持ってはいないけど、ココに入ってるからね。」
トントンと右のこめかみを突く。それを見て何を思ったのか、真似するように自分のこめかみを叩く花園。
「んっ…んっ……何も入ってないよ。だーりんやっぱりうそつき。」
「はっはっは、花園の頭は空っぽだからなぁ。」
「だーりんきらいー。」
「はっはっは。」
結果何も出てこなかったようで、さっきの倍くらいに膨れる花園。フグみたいだ。
嫌いだの何だのと言いながらも離れようとしないのは一体何なのだろうね。
「だーりん。」
「…なんだね。」
「買って。」
「買わない。」
「…………むぅ。」
ションボリと肩を落として売り場に戻る花園。さすがの鉄壁っぷりに諦めたのか、両腕いっぱいに抱えたものを戻し始めたようだ。
店内で流れる「きよしこの夜」のメロディも相まって酷く切ない絵面に映るが…それでも買わないものは買わないのだ。厳しくしないとヤツは付け上がるからな。
「……むむ。」
商品を戻す手が…止まった。
何事かと思いそのまま眺めているとその視線に気付いたのか、チラリとこちらに視線を寄越す。…だから、そんなに見たって買わないというのに。
「むむむむ。むむむー。」
唸りながら…というより、最早"む"としっかり発しながら近づいてくる花園。そんなに気に入ったかその置物が。
「わかったわかった…。じゃあその二つだけ買うことを許そう。」
「ほんとっ!?」
「……コロッと表情変わるんだから…。本当だから、今は一旦置いておきたまえ。」
「う?…やっぱり買わない?だーりんいじわる??」
「違う違う。ガラスの置物ならば割れるのが心配であろう?…買うものはまだあるのだから、最後にカゴに入れようじゃあないか。」
レジに行く前にカゴの中で粉微塵…ではあまりにも悲しすぎるだろう。折角買うと決めたものなのだから、最後まで綺麗な形で手に入れたいものだ。
ただそれだけの安直な考えなのだが、花園にとってはノーベル賞ものだったようで。
「…だーりん、もしかして天才??」
「……気づくのが遅かったね。」
「すごいっ!!じーにゃす!じーにゃす!!」
恐らく
「それじゃあ、必要なものを買い揃えてしまうぞ?」
「さんせー!じーにゃー!」
もう原型がわからないじゃないか…。
**
楽しい時間というのはすぐに過ぎ去ってしまうもので。
花園が騒ぎに騒ぎまくったパーティは、体感時間にして数分で終わってしまった。実際も2~3時間と、それもほぼウチの両親と花園の交流会のような様相を呈していた会だったが。
今は片付けを母親に任せ、自室で二人寛いでいるところだ。
久々に食べ過ぎたせいか体は重く、それに比例するように瞼も存在感を主張し出している。花園は泊まるということだからさほど面倒を見なくても良いのだが…流石に部屋に上がってすぐに寝るというのも失礼な話だろう。
それも、今日の主役を手持ち無沙汰にさせて、だ。
「…だーりん、おねむ??」
「己の胃袋の許容量を少々見誤っていたようでね…。」
「そっかぁ。」
「…………ぁ。」
そうだった。結局あの騒ぎの中でプレゼントを渡せず終いだったのだ。日付が変わる前に気付けて良かった。
これを渡さなければ、何も祝わずに過ぎ行く只の日常のワンシーンになってしまうところだった。
「おいで、花園。」
「う?……んしょ、きたよ。」
おいでといってもさほど空いていない距離を詰めるだけだが。膝先を擦るようにしてずりずりと寄ってくる花園と向かい合うように座り、正面から首の後ろ側へと手を廻す。ハグと勘違いした花園が抱きついてくるが、正直ボクのしたい作業に影響は出なかったので続行。
「どしたのだーりん?甘えんぼ?」
「いいから、おとなしくしてなさい。」
「ぎゅぅぅぅ……」
「………よし。思ったより手こずったな。」
「ぅぅぅぅぅぅぅ……」
「もういいよ花園。終わったから離れても。」
「や!」
「なんだと…?」
予てより用意してあったシルバーのネックレス。飾りとしては然程大きくないリングが二つ連なっているだけのシンプルなものだが、友人としては妥当なものだと思う。きっと似合うと思って購入し、なかなか渡すタイミングが無かったというのが本音だが……。
いや、今は開放してくれないことを心配すべきか。
「こらこら花園、もう済んだから離してくれても…」
「花園じゃないもん。」
「うっそだろ。」
じゃあ一体誰だというのか。
「"たえ"って呼んでくれなきゃやだもん。」
「えぇぇ…?なに、君自分の苗字嫌いなの?」
「そうじゃない!だって花園は、花がいっぱいで楽しいねうふふって意味だから。」
「うんまあ今は突っ込まないでおくとして…それはアレか?これからは名前で呼べ的な…要求?」
参ったな。女性を下の名前で呼ぶなどボクにはハードルが高すぎる事態なのだが。
しかし今日は花園の誕生日…要求されたものくらいは渡せずして何が男かね。
「そうだよ。だって、ずっとずっと名前で呼んで欲しかったのに、だーりんは花園花園って…。お父さんもお母さんも返事しちゃうよ?」
「わかった。…わかったよ。」
流石に親の前で呼ぶつもりは無かったけどもここは腹を決めよう。
「……たえ。」
「!!!……はぁい。」
「…っ!結局離してないじゃんか!!」
「だって、嬉しい時は誰かを抱きしめて、喜びを分かち合うもんなんだよ。」
「それは誰の言葉だ…?」
「おたえちゃんでぇす!」
「ああもうどうにでもしてくれ…。」
相変わらず予想のつかない子だ。
因みにネックレスについてはその後、満足した花園が改めて喜んでくれた。
「あれれ?私、こんなの着けてたかな??」
「…それ、ボクからの誕生日プレゼントね。それを着けようとしてたんだよさっきは。」
「そーなんだ!!…にはは、輪っかが可愛いの。」
「そうかい。気に入ってくれたなら何よりだ。」
「だーりん大好きっ!にははっ!!」
……まぁやっと渡せたしいいか。
にはは。
<今回の設定更新>
○○:気づけばおたえと過ごすのが普通になっている。
いつも二言目には「花園」と出てくるのをよく矢口にからかわれる。
…矢口、覚えていますか?
たえ:どんどん幼児退行が進んでいるような…。
好きな相手にはこうなのかもしれませんね。
名前で呼んでもらいたい派。