BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

205 / 278
2019/09/14 暴食の女神 <De ventre deam>

 

『ししょー!あこ一回落ちるねー✩>ω</』

 

『あいよ。』

 

『さらばだー!』

 

 

 

画面から消える派手派手しいアバター。

今日は土曜日。MAKのイベント周回に勤しむ我々オンラインゲーマーの間に、教師も生徒もないのである。

時刻は二十時半。…宇田川家の飯はコレくらいだったか…。

理由は正直どうでもいいが、わざわざ一度落ちるくらいなのだから復帰までしばらくかかるだろう。さて、一人で狩り回るか別ゲーに顔を出すか…と、趣味全振りの贅沢な悩みに頭を捻っていると、

 

 

 

~♪ ~~♪

 

 

 

机の脇に置いたスマホから某秋アニメの主題歌が流れる。…誰だよ休みに電話なんか…。

 

 

 

「……もしもし。」

 

『あ!ししょー!あこだよー!』

 

「…………切るぞー。」

 

『えっ!?え、え、ちょ、ちょっとまって!!』

 

 

 

何だよ飯食ってんじゃねえのかよ。

若干の苛立ちを覚えつつ、適当に流して早く会話を終わらせることにする。

 

 

 

「…進路相談なら週明けでいいだろ?じゃあな。」

 

『そんなんじゃないってば!ししょー、晩御飯食べた??』

 

「あ?食ってねえよ。」

 

『よかった!!あこもね、これからご飯食べようと思ったんだけど、どーせししょー暇でしょ?

 独身だし、ぼっちだし。』

 

 

 

……なんだこいつ。態々担任をおちょくりに電話かけてきたのか?

 

 

 

「喧嘩売ってんのか。」

 

『にゃっははは!それでね、一緒にご飯食べよーよ!』

 

「否定はしないのな。…いや、普通に問題あるだろ。教師と生徒だぞ。」

 

『えー??でも、立場は置いといてゲーム仲間でしょ??

 休みの日くらいいーじゃんさー。』

 

「先生は休みじゃないの。…実家暮らしなんだから、家族とお食べよ。」

 

 

 

それにお前はぼっちじゃないんだし。…何なら姉貴もいるだろうに。

 

 

 

『あのねぇ、ずっと部屋でゲームしてて気付かなかったんだけど、うちに誰も居なかったの。』

 

「はぁ?」

 

『おねーちゃんもバンドの皆とラーメン食べに行くーって、さっき出てっちゃったみたい。』

 

「………で、俺に集る気か。」

 

『にゃっははは。だめぇ?』

 

「だめだ。」

 

『おねがぁい、ししょぉ…?』

 

「カワイコぶってもダメだ。普段からお前の姫扱いにも思うところがあったし、そういうので全部解決できると思ったら――」

 

『綺麗な人紹介するからぁ』

 

「仕方ないなぁ。」

 

 

 

………違うぞ?そろそろ結婚したいと思ったとかそういうのじゃないぞ?ただちょっと、一人で細々と飯食うのにもウンザリっていうか、可愛い教え子の頼みも聞いてやらなきゃっていうか…。

取り敢えず、半ば躓きながらも指定されたファミレスへ向かうことにした。

……本当に、期待とかしてないからな?

 

 

 

**

 

 

 

………あこてめぇ。

向かいに座る、確かに綺麗な風貌の目つきのキツイ女性を見て、心の中で弟子に全力で恨み言をぶつける。

 

 

 

「……それで?」

 

「それで、とは?」

 

「はぁ。貴方仮にも教師なのでしょう?…生徒に誘われたからといって簡単にプライベートを共に過ごすというのはどうなのかしら?」

 

「……全く以てその通りでございます。」

 

 

 

何故俺は公共の場で()()()に説教を垂れられているのか。

悪魔め、後で覚えとけよ。

 

 

 

「全く……んむんむ、生徒の見本として…もぐもぐ…風紀とは何たるかを示して…んむ?…むぐむぐ……いかなければいけない人間が何をやって……おいしーわね。」

 

「あの、ポテト食べるか喋るかどっちかにした方が…」

 

「あのねー!紗夜さんはねー、ポテトが大好きなんだよぉ!」

 

「黙ってろてめぇ…!」

 

 

 

目の前の"一見綺麗だが中身はただただ刺が鋭いだけのクール系美少女"さんはどうやらフライドポテトに目がないようだ。席に着いて早々に注文した二つの山盛りポテトを啄みながらも、説教が終わることがない。

…好きなもん食ってんならもう少し美味しそうな顔しろよ。無表情で食い続けやがって。

ええと確か名前は…氷川紗夜って言ったか。花咲川女子学園の風紀委員らしいな。…なんつーもん連れてきてんだよホント。

 

 

 

「…宇田川さん。この人とは一体どういう関係なの?」

 

「んっとねー、ししょーはねぇ、あこをデビュー…一人前にしてくれた人で、あこに初めてを教えてくれた人!」

 

 

 

あぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!!

テンプレみたいな誤解を誘う言葉チョイスしやがって…!!そのニヤケ面、わざとやってんな!?

…社会人相手にやっていいことと悪いこともわからんのか、えぇ!?

 

 

 

「…で、デビュー……?はじめて…??

 ……ええと、全く意味がわからないのですが、貴方の口から教えていただいて宜しいですか?」

 

「………まじか。」

 

 

 

まさかとは思うけどこの子、その類の冗句が通用しないレベルで真面目なのか?

…相変わらず小さい口でもくもくとポテト食べ続けてるし、何だか可愛く見えてきたぞ。

 

 

 

「??私、何かおかしなこと言いましたか?」

 

「いや、そんなことはない。……ええと、実はだな。」

 

 

 

この機を逃すまいと、正しいことに若干の補正を加えながら説明する。

生徒になる前からゲームを一緒にするような仲(ゲームで知り合った)であり、その頃から頻繁に飯など行くような(オフ会)家族ぐるみの(巴とも面識がある)関係であること。

話していくうちに、徐々に紗夜…さん?の顔から疑いの色が消えていくのが分かって一安心だ。…主犯は我関せずといった感じでハンバーグを解体している。聞いてすらいねえ。

 

 

 

「……成程。それはそれは、一方的に決めつけたような態度を取ってしまい申し訳ありませんでした。

 一方の話しか聞かずに人を糾弾するだなんて、私もまだまだですね。」

 

「あぁいや、気にしないで。大丈夫だから。…あこのこと心配してくれたんだろう?」

 

「ええ、まぁ。……宇田川さんは私にとって、大切なバンドメンバーですから。」

 

 

 

…ははぁん。あれだな、ええと…Roselia、だったか?あこの所属しているガールズバンド。その一員という関係で連れてきたのか。

 

 

 

「…あと、時々一緒にゲームもするので。」

 

「本当?…君みたいな子もゲームとかするの?」

 

「私みたいな……とは?」

 

「あっあぁ!ごめん、悪気は無いんだ。凄く真面目そうだし大人な感じがしたからさ…?

 そういう年相応の?一面もあるんだなっていう……いやほんと言葉選びが悪かった…」

 

「い、いえ、別にいいんですが……むぐ。」

 

「……………ポテトおいしい?」

 

「…は、はい…。……もぐもぐもぐ……おいしー、です。」

 

 

 

手に取ってから口に運ぶまでが滅茶苦茶スピーディなのに咀嚼クソ長いんだよな。まだ口の中に残った状態でヒョイヒョイ突っ込むから…あーあー、ハムスターみたいになってるよ。

 

 

ヒョイパク、ヒョイパク、ヒョイパク、ヒョイパク…ムグムグムグムグムグ

 

 

「…………。」

 

「ししょー、追加しても……って、何で二人見つめ合ってるの?」

 

「!!ふももほほほっふ、ももまままふふふふ!!」

 

「…いやぁ、なんか可愛くって。面白いし。」

 

「もっも、ままふへふぇままめめえももお!!」

 

「はははは、何言ってるかわからんぞ。

 …落ち着いて、飲み込んでから話そ。な?」

 

「もうむっむ…。」

 

 

 

パンパンの状態で無理に喋ろうとするからほら…。ただ、テンパってる時は表情出るんだな。

顔真っ赤にしちゃって…。可愛らしいけど何言いたいか全然わかんねえ。はははは!

 

 

 

「ごくん。……貴方、もしかして生徒にモテたりするタイプ…でしょうか。」

 

「はっは、そんな夢みたいなことにはなったことねえなぁ。…そう見える?」

 

「……い、いえ…別にそんなこと、思って…ないですけど…」

 

 

 

何故目をそらす。

 

 

 

「お、恐ろしい…流石は現世に破滅を齎す魑魅魍魎をも飼い慣らす

 古の無差別調教者<エンシェント ディストラクション ブリーダー>…。

 まさか紗夜さんまでししょーの毒牙に…!?」

 

「……お前は後で話がある。」

 

「えぇ??やだなー。…あっ、このスペシャルチョコサンデーと、ストロベリーマウンテンパフェとぉ…」

 

 

 

食いすぎだ馬鹿。

…あっ、紗夜ちゃんのことじゃないから、お代わり頼む度にそんな申し訳なさそうにしないで。

 

 

 

結局、あこは成人男性2~3人分程の量を平らげ颯爽と外に。財布の中身を確認しだした紗夜ちゃんを何とか説得し、大人の俺が全額もつ形で解散した。

…後日、俺とあこともう一人の知り合いで組んでいたパーティに、"✡SAYO✡"という暗殺者が加わることになるのだが、それはまた別のお話。

 

 

 




途中まで燐子を呼ぶ話にしようとしてました。




<今回の設定更新>

○○:もう次の給料まで贅沢はできない。
   古の無差別調教者(笑)
   実際、特に人気のある教師ではない。

あこ:暇つぶしの度が過ぎる。世間知らずということで大目に見てやってください。
   何しろ天使なので、人間の常識が通用しないんです。
   イザコザを呼び込む女。

紗夜:割とゲームを嗜む。ぷ○ぷ○とか。
   第一印象は警戒心の強いリス。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。