BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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2019/09/27 慈愛の姉神 <Elder sister of SOIYA!!>

 

 

 

「〇〇先生。」

 

「おう、どうした。」

 

 

 

職員室で次のクラスの準備をしていたところ、珍しく"先生"呼びの宇田川あこがやってくる。

何やらそわそわと落ち着かないご様子だが、今度は何をやらかしたってんだ。

 

 

 

「…先生助けてよぉ。」

 

「…だからどうしたと訊いているだろうに。」

 

「あこ、あこは……取り返しのつかない事を……」

 

 

 

涙目でぐしゅぐしゅ言っているあこに手を引かれ、そのまま三階の図書室や放送室などの特殊教室が纏まっているエリアに連行される。

果たしてこいつは何の用があってそんなところに?

 

 

 

「ここで一体何を……あっ!」

 

 

 

廊下の突き当り。各階の避難経路に設置されている「緊急避難はしご」。普段は鉄製の箱に収納されしっかりと封印されているんだが…

 

 

 

「あれ開けたの、お前か。」

 

「……うん…。」

 

「はぁぁぁぁ…。一体どうしたらあんなもの開けようと思うんだよ…。」

 

 

 

一般家庭用ならまだしも、学校の備品としてセッティングされているそこそこ高価なものだ。…たしか一度出してしまうと点検やら整備やらで数万は飛ぶって聞いたぞ…。

それが、デロン、と。一応窓は開けてあるものの、外には放り出されずに床にだらしなく広がっていた。

 

 

 

「だって、だってね、あこはね、きっと何か楽しいものが入ってると思ったんだよ。ほんとだよ。それでね」

 

「落ち着け落ち着け。…ゆっくり喋らないと、俺にも伝わらんぞ。」

 

「う、ん。…最初はね、おねーちゃんを探して図書室に来たんだけど居なくてね。それでね、廊下に出てみたらあの箱があってね。」

 

「気になって開けちゃったのか?」

 

「………でも、でもね、あこは、やっちゃいけないんだろうなって思ってたよ。」

 

「じゃあ何で開けんの。」

 

「…ぅ……うぅぇぇぇ……」

 

 

 

泣きたいのはこっちだよ本当に…。そもそも、言っちゃ悪いが巴が図書室に来るタイプかね。ありゃ和太鼓の前かラーメン屋のカウンターが似合う女だ。

いくら普段は師弟関係だとは言え、今この場では教師と生徒だ。大声でびーびー泣いてるあこを放置するわけにもいくまい。

 

 

 

「あーもう泣くな泣くな…。この場は俺が何とかするから、あこは取り敢えず泣きやんで待機。できるか?」

 

「うわあぁぁぁぁん……うえぇぇ……ぇぇええええん」

 

「お前、泣き止む気ないだろ。」

 

 

 

泣き声は大きくなっていく一方だ。只の休み時間と言うこともあって、周りの生徒が何事かと見てくる。迂闊なこともできないしなぁ…。

 

 

 

「よしわかった。俺は用務員さんにも報告しなきゃいけないし、ずっとここに居るわけにいかないけど、お前も一緒に来るか?」

 

 

 

もうただ只管にここを離れたかった。

 

 

 

「ひっく……ひっく………う"ん。」

 

 

 

漸く収まり、しゃくり上げながらも後をついてくるあこ。普段から変なキャラ作らないでこれくらい素直なら可愛いもんなのに。

廊下を渡り、階段に差し掛かる角を曲がったところで…

 

 

 

「アレ?〇〇じゃん!おひさー。」

 

 

 

()と遭遇した。

 

 

 

「とも…宇田川姉か。敬語を使えと言ってるだろうに。」

 

「はははは!固いこと言うなよ~。…あ?あこ、何で泣いてんだ?」

 

「何だか避難はしご出しちまってな。テンパって泣いてんだ。」

 

「梯子ぉ?……何をどうしたらそうなるんだよ…。」

 

「俺が訊きたいよ。」

 

「うぅぅぅ、おねーちゃん、ごめんねぇ!!!」

 

 

 

折角収まってきた涙を再度溢れさせ姉の足にしがみつくあこ。みるみるソックスの色が変わっていくが…こいつ涙で脱水症状起こすんじゃねえかな。

 

 

 

「おいおい、姉には謝んのか。」

 

「…ま、アタシにとってあこは最高の妹、そんであこにとってアタシは最高の姉だからな。

 お前じゃ器が足らないってこったよ。はっははは。」

 

「お前って言うな教師を…。」

 

 

 

相変わらずだな巴は。…いや相変わらずで流していい問題じゃない気もするんだけどさ。

姉妹としてこんだけ仲いいならそれだけでもいいと思うんだ俺は。教師として、間違いは正さなくちゃいけないが…

 

 

 

「まあいいこの件は俺が」

 

「あのさ、○○。」

 

「…あ?」

 

 

 

人が格好つけようとしてるところを遮りやがって。

 

 

 

「実はあの梯子、アタシが遊んじゃったんだ。」

 

「はぁ?」

 

「なんつーかさ、別に目撃者とかはいないんだろ?だからここは、アタシがやったってことでひとつ頼むよ、なっ?」

 

「お、おねーぢゃん??」

 

「……俺は別に、報告して直すだけだからなんでもいいんだけどさ。巴はそれでいいんか。」

 

「…まぁ、ね。まともな姉ならここは妹を叱るところなんだろうけど、アタシはあこが笑ってりゃそれでいいからさ。

 あ、信憑性を出すためにモカとひまりもいたことにしようか?」

 

「幼馴染を売るな。…まあ、巴がそれならそれでいいさ。」

 

 

 

何とも格好いい姉だな。いい所は取られた気がするが…あこも泣き止んでるしまあいいか。いい、のかな…?

 

 

 

「悪いな、見せ場盗っちゃって。」

 

「……なんのことだ。」

 

「さっき、あこを庇おうとしてくれただろ?」

 

「…しらんな。」

 

「何だよー、男のツンデレはきっしょいぞ。」

 

「何だその言い草は。」

 

「…つぐが言ってたんだ。」

 

「羽沢がそんなこと言うかよ。」

 

「悪い、本当に気色悪かったから…」

 

「てめえ!」

 

 

 

いい姉を持ったな。弟子よ。

でもな、俺もそこそこ怒られるから、学校の備品で冒険するのはやめような。

 

 

 

 




実際にやると滅茶苦茶怒られるのでやらない方がいいです。




<今回の設定更新>

○○:良いところを持っていかれる系教師。
   この後滅茶苦茶怒られた。

あこ:やっちゃいけないことはやっちゃいけないのです。
   流石に悪いと思ったときは素直。
   おねーちゃんがなんばーわ"んっ!

巴:格好いい。妹大好き。
  結局巴とモカとひまりで遊んで壊したことにした。

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