BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 - 作:津梨つな
「ししょー!ご飯食べ行こ!!」
そんなアホみたいなテンションの電話が来たのが十五分くらい前。そして、謎の女性が訪ねてきたのが五分前。
今はその女性を部屋に上げ、一先ずソファで待ってもらっている。…何だこの状況。
「ええと、あこの知り合いなんでしたっけ?」
「…はい……。ええと、あなたは……あこちゃんの、お師匠様だそうで………。」
「え、ええ、まあ。…オンラインゲームの、ですけど。」
あこから電話が来た後、来ると言ったのに中々訪ねてこないあこを待っていた中、うちのチャイムを鳴らした謎の女性……確か名前は
大人しそうな佇まいに眠そうな表情、腰ほどもある綺麗なストレートの黒髪を纏う、色気のある女性だ。勿論初対面だったが、「あこにここに来るよう言われた」との事だったので上げてしまったが…本当に大丈夫なんだろうか。
そもそも飯に連れて行く件も了承した覚えは無いんだがな。あいつめ、何でもかんでも勝手に話を進めやがって…。
「そのオンラインゲームって……M.A.K.ですか…?」
「あっ、知ってるんすか?」
「私も………やってますから…。」
「…ほう?」
あこの関係者であれば大方その辺だろうとは思っていたが、まさかM.A.K.ユーザーだったとは。…果たして、騎士か魔導士か、どちらを繰り戦うのか…同じゲーマーとして、そこは確認しておかなくてはなるまい。
「白金さん…っだったっけ?」
「は、はい……。」
「ジョブは?」
「…ええと………括りが…」
「待って!俺当てたい!!」
「……どうぞ。」
「魔導士!!」
「……ふふふ、二つしか無いですからね………あたりです。」
「やったぜ!俺も魔導士でね、一応メインは
静かに笑うその姿を見て、いい歳こいて燥ぎ過ぎたんじゃないかと少し後悔した…が、好きなゲームの話をする時ってこうなる…よな?
白金さんが一体何歳くらいの女性なのかは分からないが、オッサンが一人盛り上がる姿を目の当たりにしているんだ。ま、多分引いてるでしょう。
「……あっ。…ええと……ごめん、何か燥いじゃいましたね。」
「いえ………少し、可愛いなって……思いましたよ?」
「可愛いって……オッサンに言う言葉じゃないですよ…。白金さん、役職は??」
「私は………メインで『陰キャ』をやっています……。」
「『陰キャ』…!!黒魔術師ですか!!…是非ご一緒したいっすね!!」
話題に挙がった『陰キャ』とは、決してリアルの過ごし方を揶揄して言う単語ではなく立派な
主に攻撃魔法を強みとする『黒魔導士』…その派生にあたる『黒魔術師』は、純粋な攻撃魔法ではなく状態異常や能力低下を伴う搦め手を得意とする役職であり、属する中でもその『陰キャ』は先に挙げた状態異常や能力低下…所謂"デバフ"
勿論基礎魔法レベルの攻撃手段は持っているが、如何せんソロプレイに向かない為好んで使うプレイヤーは一握り…これは非常に貴重な出会いとも言えよう。一応、各役職に一つだけ与えられている強力な『クラススキル』を唯一二つ持っていたり、魔導士陣営で唯一の必中即死スキル『闇討ち』を持っていたりと、優遇されてはいるのだが…。
因みにクラススキルは『ステルス迷彩・
「ぁ……はい、是非、私とシてください……ふふっ。」
「やったぜ。……あ、じゃあ連絡先交換しません?タイミング合えば連絡するんで。」
「……はい……私、男の人と連絡先交換って……初めてです…。」
「えぇっ……意外だなぁ…モテそうなのに。」
割とマジな感想だった。なんというか、男が好みそうな要素が詰まった人だなぁって感じだし。
それとも、連絡先を交換するって行為自体が最近は廃れてるのかな。
「私、男の人が苦手で……。」
「……よく男の部屋に一人で上がれましたね……。」
「ご迷惑…でしたか?」
「や、無理してるのかなーって。」
「………○○さん、でしたっけ?」
「はい。」
「……きっとあなたが、可愛らしい方だから………あまり気にしないで済んでいるのかもしれません…」
また可愛いって言われた。……ふむ、俺って意外とイケてる?可愛い系男子??
…近くの電子レンジに映る顔を見てみたが全くそんなことはなかった。
「ま、まぁ…取り敢えず交換をば………」
「??…はい。」
お互いのスマホにお互いを登録する。フリーのチャットアプリだが、ゲーム開始の連絡くらいならこれで十分だろう。
…どうやら全てを知っているアイツが到着したようだ。仮にも目上の人の家にお邪魔するんだから、もうちょっとツッコミどころを減らして欲しいものだが。
「……ししょー!!ししょー!!!」
「目の前にいるのに何度も呼ぶ馬鹿があるか。勝手に約束取り付けて勝手に来やがって……って、巴はどうした。」
確か姉妹揃ってご馳走になるとか抜かしていた気がしたんだが、目の前にいるのは紫髪のちびっこだけだ。…今日はサイドテールなのか。
「おねーちゃんね、「どうして学校以外であんな奴のツラ拝まなきゃいけねえんだ!」って言ってたよ。」
「あの野郎覚えとけよ…。」
「だからね、代わりにりんりんと一緒に行くことにしたんだ!!」
「……りんりん?」
そう言われて改めて覗き込むも、あこの後ろには誰もいない。果たしてりんりんとは…
「ぁ……りんりんです……どうも。」
「白金…さん?」
「はぃ……名前が、
「…あぁ、そう言えば苗字しか聞いてなかったですな。」
なるほどそれで前もって到着していたというわけか。…うん、それを予め連絡しておこうな?あこちゃんや。
「ねーししょーお腹すいたんだけどー。」
「お前はどこまでも勝手だな……何が食いたいんだ。」
「んー……いっぱい食べられるならなんでもいい!!あと、ししょーの奢りなら!!」
「一度でも自分で払ったことがあったかよ…。」
「ぁの……私は、別に……」
「あぁ、白金…りんりんさんは気にせずどんどん食べてくださいね。全部俺が持ちますんで。」
「…ししょー?あこと扱い違わない??」
「当たり前だろ。りんりんさんは貴重な陰キャだぞ?丁重にもてなして呵るべきだろ。」
是非とも仲良くなっておかなきゃいけないし、何より美人は優遇するのが俺のポリシーなんだ。お前みたいな子供じゃなくて、大人の…
「あー……りんりん学校だと暗いって言ってたっけ。」
「馬鹿、そっちの陰キャじゃねえよ…。……学校??」
「うん。あことは違う学校だけど、高校生だよ。…ねっ?りんりん。」
「うん……高校、ええと…花咲川女子学園に通っています……。」
「………まじ?こんなに大人っぽいのに…?」
まぁ、大人っぽいと思わせるのは大体一箇所のせいだと思うけど、これで高校生だなんて…。
「はははは!!りんりんおっぱいおっきぃもんねぇ!」
「そういうのは口に出して言うもんじゃねえぞ。」
「いーんだもんっ、女の子同士なんだから~。」
「………まぁいいや、飯行くか生徒諸君。」
何だか無性にやけ食いしたい気分になってきた。兎に角いっぱい食べたいらしいし、行き先はあそこだ…行きつけの大盛りで有名な店。
普通盛だと思ってレギュラーサイズを頼むと三人前来るような店だからな。
「ししょーししょー!いっぱい食べていい?いっぱい食べていい??」
「あぁ、好きに食え…。いっぱい食って、精々でかくなってくれ…。」
「…おっぱいの話?」
「ちげえわ!!」
「いっぱい食べなくても………大きくなるよ??」
「真面目に言わんでいいですわい。」
いっぱい食って大きくなったわけじゃないのか…。
結局このあと、バカが大量に注文して余しまくったものを俺とりんりんさんで処理し、パンパンの腹を抱えて帰ることになるまで食いまくった。
オムライスにドリアに芋に肉にパフェにアイスに……。恐ろしいのは、りんりんさんが俺と同じくらいの量をペロリと平らげたこと。…本当に栄養素が全部そこに詰まってるんじゃないか?流石に教職の俺がそんな発言できるわけないんだが。
何にせよ、結構な金額と引換にはなってしまったがこの陰キャさんと出会う機会をくれたあこ。少しくらいは感謝してやってもいいのかもしれない。
「…いっぱい食べている姿も、可愛かったですよ………?」
「……大人を誂うもんじゃあない。」
「ふふふ、じゃあ続きはゲームの中で………ね?」
そういう雰囲気も大人びて見える原因だかんな。
一応あこちゃん編なんです…。Roseliaメンバーと出会っていくのが導入編ですから。
<今回の設定更新>
○○:不良教師と呼ばれている。(主に宇田川+Afterglowに)
美人には目がないが子供はお呼びじゃない。
いっぱい食える俺が好き。
あこ:導入時期中は出番控えめ。たまに主役って感じ。
燐子:素敵なものをお持ち。声が艶かしい。
キャラもリアルも陰キャ。