BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 - 作:津梨つな
「…は?」
「だーかーら!しりとり!!あこの中でブームが来てるの!」
「俺の中では来てない。食事中にはしない。そもそも公共の場でそんなアホみたいなことはしない。以上。黙って飯食え。」
「えぇー!?やろうよーしりとりー!しーしょーぉー!!」
何度来たかわからないほど通ったファミリーレストラン。相変わらず俺を師匠と慕うちびっ子に集られるようにして外食に来ている、仮にも教師の俺。
…どうやらまた俺にお友達を紹介してくれるようで、俺の正面、料理には大して手をつけずに俺とあこのやり取りを見つめている銀髪の無表情少女。
あこの話だと、
「第一、この友希那ちゃんって先輩なんだろ?…先輩捕まえてしりとりしましょうってお前…。いや、担任捕まえて言うのもどうかと思うけどよ。」
「だって楽しいじゃん。」
「やかましい…。」
「やろ?ね、ね?…じゃあ一回だけ、一回だけやらせて?ししょーおねがーい!ねぇーえ!やりたいのー!やらせてよぉー!」
「店で勘違いされるような発言はやめろぉ!」
あと右腕を離せ。ブンブン振り回すせいでハンバーグがフォークごと飛んでっただろうが。…これだけ目の前が騒々しいことになっているのに無表情を崩さずに手元のサラダ皿に鎮座するプチトマトをツンツンしてる、この子もこの子で怖い。
「また昼間から如何わしい話をしてあなた達は……あら、湊さんもいたんですか。」
…そしてその無表情の横にすっと座る、途中参加の紗夜ちゃん。…聞いてはいないが、どうせあこが呼んだんだろう。
「おぉ、紗夜ちゃん。…知り合いなの?」
「ええ、まあ、ちょっと。」
「ふーん…?……今日もいつものでいいの?」
「あ、はい…すみません…。」
はにかみつつ答える紗夜ちゃんに笑顔を返し、店員を呼ぶ。…
「ししょー…しよ?」
「…かわいこぶってもダメだ。」
「…何の話なんですか?」
途中参加の紗夜ちゃんにはついていけない話だよな…。
ここまでの流れを掻い摘んで説明する…といっても、大して濃い内容じゃないんだけど。
「そうでしたか…いつもこの子が迷惑かけてすみませんね、○○さん。」
「まあ…慣れっこだよ。」
「もー!お話はいいからやろうよ!!あこ、しりとり欲が溢れてはち切れちゃいそう!」
どんな状況だ。ちょっと見てみたいわ。
「……一度でいいんでしょう?あこ。」
「友希那さん…!!…うんっ!やろう、友希那さん!!」
「…あなたも、一度だけ付き合ってあげてくれないかしら?ええと……○○さん。」
「君がそう言うなら……あれ、ちょっとまって。すごく今更だけど、君、
友希那…そう、確かそんな名前だった。特に素行や人間関係に問題があるわけではないのに半数以上の日数を欠席している生徒…。学校のお偉いさん方が話しているのを少し聞いただけだから詳しくは知らないが、確か音楽の方でえげつない才能を発揮しているとかだった気がするぞ…。
「?…ええ、湊…友希那よ。あなたとは何処かで会ったことがあったかしら。」
「いや、お前が通ってる学校の教師だよ。」
「……
「ねーねー、はやくっはやくっ。何からにする?しりとりのり?それとも、ぽ?」
お前…折角、問題になりつつある生徒から色々聞き出せそうだったのにしょーもない割り込み方しやがって…。
「ぽ」はどこから出てきたとか、お前はしりとりジャンキーかとか、ツッコミどころは満載過ぎるくらいなんだが、こうなったらさっさとしりとりを終わらせて、再度話に…
「そうね、やりましょうか。…あぁそうそう、しりとりと言えどれっきとした勝負よね?」
「そーだよ!」
「ふふ…それなら、勝敗に賭け物をしない?」
「湊さんっ!仮にも教師である○○さんがそんなこと…」
「休日に生徒とプライベートで逢うような不良教師だもの…そのくらいどうってことないでしょ?」
ぐっ…こいつ、痛いところを。
眠そうな目ぇしやがって、強烈なこと言いやがる。
「…で、何を賭けんだよ。」
「○○さん!?」
「あなたが勝てばあなたの言うことを何でも聞くわ。」
「ぶっ…!」
「湊さんっ!!いくらなんでも…はしたないですよ。」
「こんなのタダの戯れよ、落ち着きなさい紗夜。……でも、私が勝ったなら、私のしていることに口出ししないで。登校するもしないも自由だもの、そうでしょ?」
成程。余程つつかれたくない問題と見える。
「…OK。乗った。」
「ふふっ、それでこそ一人前の男よ。」
「……わ、私は何を賭けたら良いでしょうか…?」
無事始まると思ったのに、変なところで生真面目な紗夜ちゃんが震える声で挙手をしてしまった。
…あっ、手は上げているけどちゃんとポテトを持ったままだ!
「……別に君は賭けなくても」
「い、いえ!目の前で風紀が乱れているのに正せないならば風紀委員の名折れです。…それはもう共犯とも同義…ならば私も大切なものを賭けて挑むのが道理なのです。」
あちゃあ、変なスイッチ入っちゃったな。
こうなると目的を達成するまで止まれないのが風紀委員という精密機器…紗夜ちゃんの性質なんだ。
「…○○さん、何か適当に賭けさせなさい。」
「適当ってなんだよ。…湊が何とかしろよ、友達だろ。」
「友達…そんなんじゃないわ。」
「いいから何か適当に…」
「じゃあさ、紗夜さんは負けたらししょーのお嫁さんね!で、ししょーが紗夜さんに負けたら今日のご飯代おごりで。…早くやろうよっ!」
いやいや…釣り合いが取れてないどころの騒ぎじゃないぞ。何だその悪質な取引は。
「わっ……わかりました。」
「紗夜ちゃん!?」
「いいんです…私は、戦いますから…!!」
「聞いちゃいねえ!」
「それじゃぁ、
高らかに宣言する
無駄に緊張感を演出するような鋭い目つきで何故か俺を睨みつける紗夜ちゃんに、不敵な笑みを浮かべる湊。どうでもいいけど、湊さっきから啄いているハンバーグ…俺の皿から持ってってるよね。
「じゃああこから行くね!!…ええと…「漆黒のぉ…堕天使」ぃ!」
「自由か。…まあいいや、じゃあ「し」な?」
取り敢えず順番は時計回りでいいとして、次は俺か。
「し…し…「しょうゆさし」。」
目に入っちゃうもので済ませるのが楽でいいやな。
俺の順番が終わり、次は湊なんだが……醤油差しと聞いて斜め向かいの紗夜ちゃんが「来た文字で返すとは…そういったテクニックもあるんですね…!」とクソ真面目な顔で感心していたのが少し可愛かった。やったことねえのかな、しりとり。
「ふふん、なかなかやるじゃない。」
「そうかい。そりゃどうも。」
「中々嫌いじゃないわ、あなたのワードセンス。」
「そりゃよかった。」
「………。」
「…………。」
「…………。」
「…次、湊さんでは?」
「え?どうしてよ。」
「…あこ、○○さん…と来たら時計回りでしょう?」
「じゃあ次、紗夜じゃないの。」
「??」
「??」
「??」
「…みんな揃って変な顔。」
おや、この子…馬鹿かな?
時計回りとか、小学生レベルの…
「まあいいわ。文字はなんだったかしら。」
「し。」
「し、ね。…し………うん、ないわ。」
「いや、無いじゃなくて。」
「いやでもほら…「し」は、もう無いもの。」
「無くねえよ。」
「友希那さぁん、いっぱいあるよぉ?「笑止」とか「衝撃」とか…あと、「シャイリング・ザンパー」とか!」
「最後のは何なんだ。」
固有名詞はこういう場合…まぁ突っ込むのも野暮だな。相手はあこだし。
「あぁ成程。…「笑止」!」
「言われたのはダメだろ。」
「でも「し」から始まってるわよ。」
「そういう問題じゃないでしょう。」
「だって他には…あっ、「しょうゆさし」!」
「「言ったよ。」」
机の上にあるから言いたくなるのはわかるけどさ。そんな「ここにあったやん!!」みたいな笑顔で言われても、その手は直前に使っちゃいました。
つか、一度言った単語をもう一度言ってアウト…って一週目で出るもんじゃねえだろ。
「言ってないわよ!」
「俺が言ったよ、直前に。」
「しょうゆさしはダメなの??」
「言ったからだよ。」
「何よ…じゃあ、「衝撃」。」
「案をパクんじゃねえ。」
「パクってないわよ。」
「パクってるよ。」
「あこが言ったやつはだめだよぉ。」
「言ってないでしょう。」
「言ったよ!!」
こいつ、脳みその容量恐ろしく少ないんだな。揮発性メモリか。
「……じゃあ、「ハンバーグ」。」
「変わっちゃったよ…。」
「??変わってないわよ。」
「なんで勝手に「は」にしてんだよ。」
「違うわよ、「ハンバーグ」の「ぐ」よ。」
「そもそもお前は「は」じゃなくて「し」だろうが。」
「そうですよ、○○さんの「しょうゆさし」から来てるんですから。」
「知ってるわよ。」
「じゃあハンバーグはおかしいでしょ…。」
「ハンバーグ?今は「し」でしょう。」
「友希那さんが言ったんでしょ!」
「言ってないわよ。」
「「言ったよ!」」
「何言ってるの、今「し」じゃないの?」
「「「し」だよ!!」」
「知ってるわよ。」
「じゃあ早く言ってください、湊さん。」
「私は「ハンバーグ」って言ったでしょ。」
「「し」だっての…。」
か、カオスすぎる……。この生き物、さっきまであんなにイキってたのにしりとりを理解してなかったのか…。
思いついたワードを適当に口走るゲームじゃないぞ。
「………んー…もう、湊の負け!!」
「あっー!!!」
埒が明かない上に説明も面倒ということで、もう湊の負けにした。やってられるか。
「ちょっとまってみんな。私が負けなのはいいけど、一人ズルをしているわ。」
「は?」
「…紗夜よ。何も言ってないもの!!」
「そりゃお前が何も言えなかったからだろ!!」
「あっあっ…あっー!!」
**
「…という訳で、負けた湊はちゃんと毎日学校に通うこと。来ねえ理由についても追々問い詰めるからちゃんと答えること。」
「ふふん、その勝負…乗ったわ!」
「もう終わったんだよ。君の敗戦でな。」
「…そんな……ッ!!」
「ねーねーししょー、またこのパフェ食べてもいーい?」
「ダメっつっても食うんだろ。好きなだけ食え…んで早くでかくなってくれ。」
「えー?ししょーのえっちー。」
「身長だ馬鹿。姉貴がバカみたいにデカいんだからなんとかなるだろ。」
「おねーちゃん背は高いからね。おっぱいは…あれだけど…。」
んなこと一言も言ってねえんだよな。
一方紗夜ちゃんは今だに浮かない顔だ。
「…紗夜ちゃん?どうしたの。」
「……なんでも、ないです…あなた。」
「ぶふぉっ」
「…あなた?」
「………///」
「???紗夜さん、どーしちゃったの??」
「少し早い…嫁入りなんです。…くっ。」
目一杯嫌そうな顔するやん…。
それを言われる俺の身にもなって欲しいが、そもそも…
「紗夜ちゃん負けてないでしょ。」
「え?…だって、私は何も言えてないですし。」
「あの状況で言えてる方がヤバイでしょ。」
「そーそー、紗夜さんはまだ順番じゃなかったし。」
「???」
「まあ取り敢えず、負けたのはこっちの不良娘だけだから、紗夜ちゃんに罰ゲームはないってこと。」
「??…ま、まあ…負けてないならいいですけど。」
こっちはこっちで勝ち負けの概念がわかってなかったのか。どうやら、一見クールや真面目な奴ほど些細な遊びができないらしい。
とんでもなく貴重な体験だった気がする。
「あっ!!」
「……なに。」
「「塩辛」!!…「し」があったわ!ほら、メニューに!!」
「「遅いよ!!」」
なんつータイミングでぶっ込んでくるんだ。
「…じゃ、じゃあやっぱり私の負け…」
「もう終わってるから!!」
お待たせしました、再開します。
<今回の設定更新>
○○:まだ結婚とか考えてない。
紗夜ちゃんが見た目的には好みらしいが…
あこ:回を追うごとに影が薄くなるメインヒロイン
先輩方を舐めくさってる。
友希那:天女は下界の戯れに無知すぎる。
学校に来ない理由は、「朝起きても眠いんだもの。」
紗夜:かわいい。
罰ゲームが嫌だった理由は、「罰なんかじゃなくちゃんとしたかった」から。