BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 - 作:津梨つな
「あっ、ししょーもコレ買ったの!?」
「あんまり触んなよ。」
「ししょー!これやってもいーい??」
「そんな懐かしいゲームどこから掘り出してきたってんだ…」
「ししょー、このお菓子期限切れだよー?美味しかったけど。」
「勝手に食ってから言うな。」
大晦日も目前。生徒たちは冬休みに入っている為部活等担っていない教師は休日を過ごしている筈なのだが…おい弟子よ、貴様が何故うちにいる。
漸く一人の時間を満喫できると思ったらこれだ。巴も付いて来ている割には全く役に立たないし…妹が人様の家を物色してんなら止めろい。一緒になって冷凍庫のアイス見つけてんじゃねえ。
「あっはははは、大変だねぇ!せんせーも。」
「…
ドタバタと騒がしい宇田川姉妹を他人事のようにケラケラ笑って見ている隣の女生徒に目を向ける。…ううむ、何とも露出の激しい、一人暮らしの男の家に行くにはあまりに警戒心の無さすぎる格好だ。
所謂"ギャル"っぽい容貌の彼女だが、もう三年生。俺が受け持っている訳じゃない為進路だの何だのは知ったこっちゃないが、授業や職員室での面識位ならある。やたらフランクだが憎めない…それが彼女、今井リサという少女なんだ。
「あこがさ、「面白いとこ行くから一緒に行こーよー」って。」
「面白いとこが俺の家な訳か…。」
「いーじゃんいーじゃん、つまらないって言われるよりかは。」
「そういう問題じゃねえよ。休日にアポなしでって、ガキじゃねえんだから…」
あこに関してはまだ子供だが…保護者役が二人も付いていながら
「んふふ、でもせんせー独り暮らしっしょ?年の瀬に三人も美女が部屋に居て、ラッキーなんじゃないのかにゃ??」
「三人…?…今井はわかるとして、あの姉妹は"美女"って括りじゃないだろ。…どっちかってーと"野獣"サイドだ。」
「あー、いいのかにゃー?生徒を色眼鏡で見ちゃってぇ。」
「ぐっ…!ゆ、誘導尋問じゃないか…。」
「あっははは!」
大人びているのは外見だけじゃないらしい。この子、一丁前に揶揄って来やがる。
その間も○○家探検を進めている宇田川姉妹だが、ついにあこが禁止エリアに手を伸ばした。
「あっ!ししょー、MAKインしてたんだぁ。」
「あぁ?…おい、マクロ動かしてんだから触んなよー。」
「見てるだけだもーん。」
「……なぁ、あこ。これ…○○の普段使いのPCだよな?」
「???そうだよおねーちゃん。ほら、全部真っ赤に塗られて統一されてるでしょ?…ししょーはワインレッド大好きだから。」
「車だけかと思ってたけどパソコンも塗っちゃうのかよ…マメでキショいな。」
言い過ぎだぞ巴。オジサンだってそこそこに傷つくときは傷つくんだからな。若干グサッた俺を他所に隣の今井は大ウケ。ひーひーと息を切らしながらゲラゲラ笑っている。
「てめぇ巴…覚えとけよ…。」
「何だよ怒んなよー。ホントの事じゃんかよー。」
「本当だから怒ってんだろうに。」
「ところでさ、○○も大人の男な訳じゃん?」
「そう思うんならもう少し敬え。」
「……え、えっちなのとか、入ってんの?」
「!!!!」
あ、こいつ…!!ゲームに触れないという言いつけを遵守しつつ、探索の領域を俺のCドライブにまで広げようとして…!?
それだけはいけない。俺も一人の健全な男として、嗜む程度(2TB弱)のおピンクフォルダを所持している。家には一人だし訪ねて来る友人も男だけなので勿論カモフラージュも考えていない、文字通り裸のままのフォルダが…!!
…一応、「作業用」のフォルダの中には入っているが。
「ちょ、ちょっと二人ともー。せんせーは仮にも先生なんだからそんなのある訳………」
「巴。腹減らないか?」
「…えっ、あんの??ちょっと、せんせー??」
あぁあるよ!あるともさぁ!それの何が悪い!?
だから見ないでくれホントにお願いだから。
「……………いや、その」
「巴~、アタシも見たーい!」
「うぉい!!」
何とも軽い足取りでスタコラと愛機の前まで駆けていく今井。あのニヤケ面…あいつは絶対見る。あれはやると決めたらやり切る者の目だ。
最早手が届く距離を脱してしまった今井を止める術は残されておらず、巴も今井に満面の笑みを返している。…くそ、無駄に男前な爽やかさ出しやがって…!
「ダメだお前等!その…そう!プライバシーだ!お前等もスマホ勝手に見られたら嫌だろう!?」
「巴ェ!そいつも取り押さえろぉ!!」
「ししょー、お腹空いたぁ。」
「む!?…あこか。…ふむ、それじゃあお前に任務をやろう。」
遠くにばかり意識をやっていたら左側の腕を引かれる感覚が。視線を下げてみると紫髪の困り顔がそこにあり、稼動エネルギーのエンプティが間近に迫っていることを伝えてきていた。
丁度いいのでこの弟子も駒として利用させてもらおう。…そう、俺はえっちな画像も所持しちゃう悪い大人なのだ。
「にんむ?報酬は?」
「いつものファミレス…好きなだけ奢ってやろう…!」
「やるっ!!何したらいーですかししょー!」
「宇田川ポリスの巴隊員をサポートするのだ。今井リサの所持する秘密を暴け!」
「らじゃ!!」
説明しよう…怪力異の陣とは、対人型生命体一体に二人掛かりで挑むことで腕の数を倍にし手数で圧倒するという…言わばリンチである。
MAKではすっかり定番の戦法となっているが…実際に目の前で見ると酷いなこりゃ。押し倒される形で仰向けになり抵抗を続ける今井を馬乗りの巴が抑え、あこが真っ直ぐ今井のスマホに手を伸ばし…まさに数の暴力。
あんたら二人で陣なのか?とは思ったが、十分すぎる結果を残したらしい。因みにそのドタバタのお陰で俺の愛機は無事電源をオフることができた。
「…あー君達、もういい加減にしたまえ…。今井が可哀想だとは思わんかね。」
「……………。」
「どうした巴、凄い顔だぞ。」
今井のスマホを見詰め、引き攣った様な顔で固まる巴。指先は忙しなくスワイプとピンチ動作を繰り返してはいるが…何が入っているというんだ。
あこはスイッチが切り替わる様にテンションが落ち、寝室の方へと消えて行った。疲れたんだろう。
「はぁ……はぁ………と、巴…返してぇ…」
「…ほ、ほら、巴?もう返してやれって…」
「何…これ………!!」
目を見開いて凝視する巴の姿に興味が抑えられず…ダメだとは思いながらもつい覗き込んでしまった。
「……うぉぉ…」
確かにえっちじゃない。えっちじゃない…が、夥しい数の人の顔・人の姿。…そのどれもが同じ人物で、灰色…いや銀色の…。
「!!せ、せんせーのえっち!見ちゃ駄目だってばぁ!」
「……今井って、ガチな感じなん?」
「ガチって何さ!!」
「り、リサさん……後でこっそり送ってもらったりできたら…」
「あ、マジ??可愛いっしょー?」
「復活早ぇなオイ。」
「…せんせーも見たんでしょ。…でも、可愛くても男の人にはあげないからね。」
「あげなくて正解だと思うし俺はアイツの写真なんぞ欲しくも無いわ。」
恐ろしい程の容量を占めている湊友希那の写真。…俺の大事なものは守られたが、今井リサという一生徒の暗部を垣間見てしまった気がする。
…ほんと、
「あ、もうこんな時間だ。んじゃせんせー、帰るねー。」
「本当に何しに来たんだお前は。」
「あ、アタシも!リサさん、外出たらマジ送ってくださいよー??」
「いいよん。」
こっちはこっちで驚きの切り替えを発揮して、本当に帰って行った。…あいつら、好き放題荒らしやがって…片付けもしねえのか。
「…あっ。」
しかも、
すやすやと俺のベッドで眠りに落ちているあこの目が覚めるまで、漸く訪れた静寂の中パソコンに向かう。
…その後外が真っ暗になった頃に起きた弟子を家まで送り届け、自宅で一息付けたのは日付が変わる直前。教師に休みなし、とは言ってもこれは酷すぎるだろ…。
宇田川ポリスに敬礼!
<今回の設定更新>
○○:師走とは言えこれは酷い。
全員自校の生徒なだけにまた厄介。
隠し通したのはギャルモノと二次モノ洋モノ。コスプレ有。
敬礼!
あこ:弟子は厄介事と一緒にやってくる。
家だろうと何だろうと平気で乗り込む混沌姫。
かわいい。寝顔もかわいい。
けいれいっ!
巴:ソイヤソイヤッ!!!……ンン?
…ゴヨウダゴヨウダァッ!!!シュツドウノトキダァッ!!!
宇田川ポリス、トモエ巡査部長ノオトオリダヨッ!!
ケイレヒィッ!!
リサ:友希那大好きヤバい奴。ガチ。
けーれー!っと。