BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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2019/09/24 同僚のウザ絡みに辟易する件

 

 

 

「ねーねー!……ねーってばぁ!」

 

「氷川うるさい。まず手を動かしなよ。」

 

 

 

白鷺主任(愛する人)のいない職場に何の価値があるというのか。隣の騒がしい大きい子供の世話が業務になりつつある今日この頃。

帰りたさMAXな内心をポーカーフェイスで抑えつつ、定められた勤務時間を会社で過ごす。…嗚呼、何とも無意味な時間か。

とは言え、千聖さんが"お嫁さん"として家にいる以上稼ぎ頭はこの私……ということになる。ううん、ジレンマに苛まれつつも、私は何だかんだで頑張るしかないんだなぁ…。

 

 

 

「冷たいなぁ〇〇は…どーせまた千聖ちゃんの事でも考えてたんだろうけど。」

 

「冷たくない。ちさ…白鷺主任のことを考えてたのは間違ってないけど。」

 

「もー……今の主任はあたしでしょー?」

 

「私にとって永遠の主任は白鷺主任だけなの。」

 

「じゃあ、あたしは?」

 

「小煩い馬鹿。」

 

「名前も入ってない!!」

 

「じゃあ白菜馬鹿。」

 

「それは千聖ちゃんが書き間違えたやつでしょ!!…あと馬鹿って何さ!」

 

「白菜でもいいじゃん。あんたにアホ毛立たせたようなもんでしょ。」

 

 

 

たかだか点が一つあるかないかで随分な騒ぎようだ。あの人から何かを貰ってるだけで羨ましくて妬ましいってのに。

もっと誇るべきだと思うよ、()()

 

 

 

「…〇〇ってさ、あたしのこと嫌いなの?」

 

「今更?」

 

「そっかー…。」

 

「何傷ついてんの。…悪口なんて、それこそ今更でしょ?」

 

「んー……。もしも、ね?〇〇が本気であたしを嫌ってて、千聖ちゃんと仲良くするのに邪魔だって言うなら、大人しく身を引こうかなって。」

 

「…本気で嫌いなわけないじゃん。邪魔は邪魔だけど。」

 

「ほんと?」

 

「ほんと。」

 

「………ほんと?」

 

「しつっこいなぁ…。」

 

「じゃあ、あたしとも付き合ってくれる?」

 

「――――は?」

 

 

 

言われている意味がわからない。二十代後半で彼氏の一人も出来たことがないと、こうも焦るものなのだろうか。

にしても見境が無さ過ぎる。

 

 

 

「私、女だよ?」

 

「でも、千聖ちゃんを好きになった。でしょ?」

 

「う。」

 

「…これは想像だけど、きっと千聖ちゃんも○○の事好きだよね。」

 

「うぅ。」

 

 

 

鋭いじゃん、氷川のくせに。…でも考えてみたら、千聖さんの私に対する好意を煽ったのも酔っ払った氷川だったっけ。

どうしよう、意外と使える馬鹿なのかも。

 

 

 

「…でもさ、あんたと付き合うってことになったら白鷺主任を裏切ることになるよね。

 …それは絶対に嫌なんだよ。」

 

「……じゃあ付き合う一歩手前!それならどう?」

 

「どうって言われても。意味わかんないし。」

 

 

 

訂正。…やっぱ氷川は氷川だ。

 

 

 

**

 

 

 

昼休み。唯一私物のスマホで白鷺主任と繋がれる時間。職場で過ごす日中のたった一つのオアシスのような時間だ。

 

 

 

『お仕事頑張ってますか?』

 

 

『はい、真面目にやってます!』

 

 

『頼もしい!』

『今日は変わったことありますか?』

 

 

『あ、また納品書の件で事務局が揉めてましたね。』

『あとは氷川がうるさいくらいです。』

 

 

『ふふ、相変わらずの無能組ですね。』

『日菜ちゃんが?○○ちゃん、何か言われたの?』

 

 

『何か、付き合ってほしいって。』

 

 

『そう』

 

 

『ええ』

 

 

『あれ?』

『忙しくなっちゃったんですか?』

『千聖さん?』

 

 

 

あれ。…また昼休みは半分以上残っているというのに。唐突に千聖さんが既読もつけなくなってしまった。

何時もなら二分と経たずに返信が返ってくるというのに。

 

 

 

「ヒェッ」

 

 

 

……?

右側から空気の抜けるような間抜けな音が聞こえる。誰かのしゃっくりとかかな?…慌ててご飯を掻き込んだりすると空気も飲み込んじゃって…っていうあるある的な。

それはさておき、音のした方を向くと…

 

 

 

「あ、あわわわわわわわ」

 

「何震えてんの氷川。」

 

 

 

青い顔をした氷川が、口元で忙しなく左手をバタつかせながら震えていた。右手にはスマホ。…いったい何を見たというのだろうか。

 

 

 

「………!!……!!」

 

 

 

声が出ないほどの衝撃だったんだろう。口をパクパクと、まるで金魚のようで面白い。…写真撮っとこ。

カッシャァッ

 

 

 

「…で、どうしたってのよ、青い顔して。」

 

「………ち、ちちちちちち」

 

「ち?」

 

 

 

いくら相手があの氷川と言っても日本語を忘れるなんてのは今までで初めてかもしれない。このままじゃ埓もあかないし、申し訳ないが画面を覗かせてもらって…

 

 

ピコン

 

 

 

「あっ、ち、千聖さん!?」

 

ビクゥッ

 

待ちわびていたその通知音に慌てて画面を確認する。…あぁ!やっぱり千聖さんだぁ!

 

 

 

『ごめんなさいね』

『ちょっとトイレに行ってたのよ』

 

 

『あっ、全然大丈夫です』

『もう大丈夫なんですか?』

 

 

『ええ、()()()()()()()()と思うわ』

 

 

『そうですかぁ』

 

 

『ねえ○○ちゃん?』

『私のこと…一番大事?』

 

 

 

「ふはっ…!」

 

 

 

なにこの意表を突いたどストレート…!私を昼休みに永眠させる気ですか??

大好きですええ大好きですとも!世界で一番、いや宇宙で一番愛してますよぉぉおおお!!!

 

 

 

『勿論じゃないですか。』

『千聖さんの居ない人生なんて、もう想像できませんよ!』

 

 

『ふふ、ありがとう』

『浮気しちゃ…嫌よ?』

 

 

 

「あっは……!!」

 

 

 

だめだ。だめだだめだだめだだめだ…!今すぐ駆け寄って抱きしめたい。布団の中で昼間から朝まで愛してあげたい…!!

どうしてそんなに可愛いの?どうしてそんなに……嗚呼、私の女神さま!!

 

 

 

「よっし。…ごちそうさまでした、っと。」

 

 

 

そうしている間に、昼休みも終わりが近づく。色々な意味でご馳走様の私は、すっかり忘れていた氷川の方を見やる。

 

 

 

「むー…………。」

 

 

 

もう青くもなく震えてもいなかったが、大量の滝汗をかきながら頬を膨らましこちらを睨みつけている。

描写が大変だからもう少しシンプルな状態でいてくれないかな。

 

 

 

「なに、膨らんじゃって。」

 

「○○ってさ、恋すると盲目になるっていう少女漫画みたいなタイプ?」

 

「……そうかもね。」

 

「ふーん。…じゃあさ、すっごく難しくてクリアできないゲームがあるとして、今のままじゃどうやってもスッキリできないの。そんな時、○○ならどうする?諦めちゃう?」

 

「今度はゲームの話?……そんなの、レベルでも上げて頑張ったらいいじゃん。勝てないまま終わるなんて嫌だし。」

 

「…へへ、やっぱりそうだよね。」

 

 

 

氷川の突拍子のなさは今更だけど、さっきまでのショックは何処へやら。…すっかりいつもの調子を取り戻したようで、午後の勤務もまたウザく絡みつかれるままに終業時間になってしまった。

帰りがけにも「あたし頑張るからっ!」って言ってたけど、本当何だったんだろう。……ま、いいか。私も帰ろ、千聖さんの元へ。……へへへへへへ。

 

 

 

 




千聖ちゃん、出来る子。




<今回の設定更新>

○○:女性にモテるタイプ。格好いい系ではない。
   千聖とメッセージの遣り取りをしている最中は気色悪い素の笑いが出てしまうため
   周りから察されている。

千聖:"主人"の帰りを待つ良妻。
   浮気を未然に防ぐのも良き妻の務めです。

日菜:鋼のメンタルは打ち込まれてこそ輝くというもの。
   日菜、負けないっ。

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