BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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2019/12/20 愛を食み、愛について考えてみた件

 

 

 

()ッ…!」

 

「!?…ち、千聖さんっ!?」

 

 

 

夕飯の完成を待ち、居間の炬燵でぬくぬくと寛いでいると台所の方から可愛らしい悲鳴が。嫁のピンチに焦らない夫はいない…それをまさに体現せんとばかりに声の発信元へ飛び込む…と。

 

 

 

「あぅぅ……ぅ?…ろうひはの?」

 

 

 

恐らくたった今切ったであろう左手の人差し指を咥え涙目でこちらを見る千聖さん。……いい。

右手に未だ握りしめたままの包丁が加害の凶器だとは思うが…まるで上目遣いで甘えるかのように視線を寄越してくる千聖さん(俺の嫁)がこんなにも破壊力抜群だとは。

 

 

 

「…怪我ですか?千聖さん。」

 

「うん……ぷぁっ。ちょっと手が滑っちゃって…でも、そんなに深くないから大丈夫よ。」

 

「いえいえそんな、浅くてもばい菌とか入ったら大変なんですよ!?」

 

「…今舐めたから平気よ。」

 

「だめです。ちゃんと消毒……私も舐めます。」

 

 

 

何か言いたそうな千聖さんだったが、ここまで私欲を正当化できる機会は無い。申し訳ないが存分に味合わせてもらわなくては。

そっと持ち上げた左手を手首の当たりから舐め上げる。切っているのは人差し指の先端だが、手のひら側面の手首から始まり、駆け上がる様に指先へ。それも、"右手"という一つの螺旋階段をゆっくり上る様に。

皮膚のきめ細やかさ、しっとり感、味、緊張と興奮からくる震え…その全てを、千聖さんの血という最高の調味料を頼りに舐め上げていく。一度通った道は途中で引き返さないのがポリシーだ。

自然と荒くなる息を隠そうともせずネットリ舌を進めていく中で、チラリと千聖さんの顔を盗み見る…どんなにソソる表情を…あっ。

 

 

 

「……んっ、……んふぅ……んぅっ?……んぁ…」

 

 

 

やばい。目を閉じ右手の包丁で口元を隠してはいるが、隠し切れない紅潮と吐息に混ざる小さな声。おまけにこの揺れは…視線を下にずらすと、何かを堪えるかのように内腿を擦り合わせてつつ震えている。これは……っ。

感 じ て い らっ しゃ る ――?

これはワンチャン食事前に本格的なメインディッシュが戴けると確信し、舌のうねりを強める。より艶めかしく、より触れる面積に緩急をつけ、より水音を響かせるように…。

換気扇の音のみが支配していた台所に、ぴちゃぴちゃ、ずるずると水音が混ざりはじめ、消え入りそうな途切れ途切れの声と荒い呼気。時たま敢えて強めに音を立てて、てらてらとその綺麗な肌を濡らしている液体を啜れば、呼応するように小さな肢体と金糸の髪が跳ねるように揺れる。

 

 

 

「っ!?……あ…はぁ…ん……っ。……っ!…んぅ……ッ!?」

 

 

 

はぁはぁと荒く繰り返される呼吸はどちらの物か。狂ったように甘美な蜜を啜り尽くさんとむしゃぶりつく者と、ただされるがままに身を震わせ悦びを受け止める者…その二人が織りなす熱はますますそのボルテージを上げ、やがて絶大なる頂点へと―――

 

 

 

「……ぅぅ」

 

「……れろぉ……んぅ?」

 

「…やだよぅ…。」

 

「……ち、千聖さん?」

 

「う、うぇぇ……もう、くすぐったいの…やだよぅ…。うぇえええぇぇ…!」

 

 

 

あれれー?おっかしいぞー?

気付けば泣き出してしまっていた千聖さん…いや、ちーちゃん。最近気づいたことだが、千聖さんは時々幼児退行することがある。勿論それはそれで可愛いのだが、この状態の千聖さん、非常に面倒臭い。

あと、何故かこういった興奮のピークで発動することが多く、ガン萎えを余儀なくされるのだ。テンションマックスがロリロリちーちゃんの登場により萎え萎えでしおしおなのである。私はしょんぼりするようなものをぶら下げちゃあいないが、そういうことなのである。

それに見た目は普段の千聖さんのまま、考えられないほど顔面を汚してギャン泣きしたりするので、それはそれはシュールな光景になる。歳上ということも相まって、最早介護の時が来たんじゃないかと不安になるレベルで。

……ただ一つ重大な問題があって。

 

 

 

「…っあー…。…く、くすぐったかったの?…泣くなってば…。」

 

「うわあぁぁぁあああん!!おトイレ行きたいのにぃ!!間に合わなくなっちゃうよぉおお!!!」

 

「と、トイレぇ?…勝手に行って来いよ…ったく…。」

 

 

 

私は、子供が大嫌いなのだ。勿論そこから来る子供の扱い下手さ加減もなかなかの物だが…。

 

 

 

「ぅぅぅうう……ひっく、ひっく……うえぇ……」

 

「……じゃあまず、切れたところ処置するから、トイレはちょっとだけ待ってて。」

 

「しょちぃ…??」

 

「ほら、指出す。……よし。」

 

「……ばんそぉこぉ…?」

 

「そう、絆創膏。」

 

「………うぇぇ…!」

 

「何故泣く。痛くないでしょ?」

 

「も…もっと…可愛いのが良かったんだもん……!ぱんださんのやつ…。」

 

「そんなもんウチにねえわ。早くトイレ行ってきな。」

 

「え……あ……といれ…?」

 

「そうだよ。行きたいんでしょ?」

 

 

 

気分的には小さな子にしゃがみ込んで視線を合わせている感じ。…ただ、心はまるで擦り合わせる気が無い。

今も色々邪魔された気がして少しイライラしてるし、さっさとトイレにでも何でも行って欲しい。可愛げの無さすぎる千聖さんを見ているのは正直辛い。

…と思ったのだが、トイレと聞いた千聖さんは自分の足元を不思議そうに見下ろしたかと思うと、また泣きそうな顔で顔を上げる。

 

 

 

「……どぉしよう…。」

 

「なにが。」

 

「……………間に合わなかっ」

 

「何?」

 

「…でちゃ」

 

「何だって?」

 

「……おふろいってくる。」

 

「そうしな。」

 

 

 

何となく動きと匂いで分かっていた。…が。

まぁ、これ以上は千聖さんの尊厳の為にも明記しないでおこう。

 

 

 

**

 

 

 

シャワーの音を遠巻きに聞きながら台所の床を掃除する。…千聖さんの聖水ともなれば、普段ならそれこそ舐め取りたい欲求が凄いのだが、今手元にあるのはただの水たまり。

…何やってるんだろう、私。

 

 

 

「最低だよね…。」

 

 

 

あれ程愛しているだの好きだの結婚するだの言っている割に、幼女化した千聖さんと触れ合った後はいつもこうだ。確かに放っておけば元に戻るのだが、その一時ですら千聖さんが千聖さんで無くなるのが許せないのだ。

結局私は、許容し包み込んでくれるお姉さん的な千聖さんに甘えていただけ…それを好きだとか愛し合って居るだとか勝手に言い張っていただけで…

 

 

 

「……こんなもんか。」

 

 

 

それは片づけをある程度終えたことに対して出た言葉だったのか、或いは千聖さんに対しての気持ちの…

 

 

 

「○○ちゃん。」

 

「へ?…あぁ、上がったの。」

 

 

 

後ろから聞こえた自分の名前を呼ぶ声に振り返る。髪からぽたぽたと水滴を垂らしつつ、甘拭きした体を押し付けるように抱きついてくる。

ドキリとしたが、今の千聖さんが()()()なのかわからない…その状況に、スッと冷静になれるのもまた私だった。

 

 

 

「…○○ちゃん。ごめんね。」

 

「………千聖……さん、でいいのかな。」

 

「…………私の裸、見飽きちゃった?」

 

「………布団へ、行きましょう。」

 

 

 

その日の夜は、いつもよりも激しく熱く、深く求め合う様にお互いの体を躍らせた。

嫌なことは目を背けるに限る。あやふやなものは、確かなもので塗りつぶしてしまえばいいのだ。

私が愛しているのはこの千聖さんただ一人なのだから。

 

 

 




賢者タイムってやつかぁ?




<今回の設定更新>

○○:相手によってころころ態度が変わる。
   子供が苦手な理由は、自分が子供の頃に受けた仕打ちにあるらしいが…。
   
千聖:何故か感情が昂ると幼児退行を起こす。(本人談)
   その間の記憶はぼんやりあるらしく、戻る時も自分の意思で戻る。
   今回は浴室に入ってすぐ戻ったらしい。

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