BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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2020/08/14 拘り

 

 

 

そういえば、今はイベント限定のガチャが来ているんだっけ。

寝起きの目を擦りつつ、時間確認ついでに見た愛機のディスプレイにはあと四日限定で有料ガチャの提供割合が変動していると通知が出ていた。最近遊びに遊んでいるソーシャルゲームのものだ。

まだ胸元でむにゃむにゃ言っているつぐみを抱え込むように両腕を回し、つぐみの後頭部あたりでスマホを操作する。

俺は朝にそれほど弱くないが、反対につぐみは滅法弱いのだ。

今日は同じ布団のため問題ないが、別室で寝起きしている普段はどうにも苦労している。こういうシチュエーション、しっかり者の妹に叩き起こされる……などと、夏野あたりなら妄想しそうだが現実は斯くも色気のないものだった。

 

 

 

「……ほう?」

 

 

 

通知こそ流し見していたが肝心の詳細は今が初見だ。なるほどなるほど、ピックアップキャラクターはこいつらか。

悪くない…どころか中々俺得な内容に、思わず声が出てしまったほどだ。

 

 

 

「……んぅ??」

 

 

 

その声を聞いてか聞かずしてか、胸元の妹が薄目を開ける。まだ意識は覚醒していないのか、その両目は俺を見ているようで何も捉えちゃいなかったが。

まだ多少の余裕はあるし、焦って起こすこともない。そこそこにやんちゃな寝相から来る跳ねた後ろ髪を撫で付けつつ、宥めるように声をかけた。

 

 

 

「大丈夫、まだ起きる時間じゃないよ。」

 

「……んん……おやしゅ…む。」

 

「……また新しいつぐ語だな。」

 

 

 

無論そんな言語はない。

寝巻として着ている色褪せたシャツに顔を擦りつけながら、静かに再開する寝息。可愛いもんだ。起きている間は中々に口うるさい妹だが。

さて、肝心のガチャへ意識を戻そう。

……なるほど、今の有料通貨から考えるに二十連はできそうだ。どのみち毎日コツコツと無償で貯めた、所謂配布分の有料通貨なわけだしあまり重く考えることもないか…と気楽に押したボタン。結果は――

 

 

 

「……おぉっ!?おぉぉぉおお!?」

 

「んぇっ!?な、なに!?朝??がっこ!?」

 

「おぉぉぉぉおおおお!!!!!!!」

 

「お、にいちゃ、朝!?起き…遅刻!?」

 

「おおおお!!!!」

 

 

 

日頃の行為を神はちゃあんと見ているようで。

腕の中で妹がパニックを起こしてじたばたするほど、俺の全身からは興奮が迸っていたらしい。

なるほど、今は八月、季節は夏。

 

 

 

「水着もいいなぁ!!」

 

「おに…水着!?着てないよ!?ねえ何の話!?何の話っ!?」

 

 

 

つまりは、お目当てに一発で巡り合えたということさ。

 

 

 

**

 

 

 

「んもう!それで起こされたんだから!!」

 

「あはははっ、つぐも大変だ~。」

 

 

 

昼休み。学食で昼食を共にしているのは俺達兄妹と夏野とひぃ。同じ弁当を前にぷんすこ怒っているつぐみと対照的にげっそりな俺。

残り十五分で食べきるのは絶望的な量の昼食をがっつきつつヘラヘラ嗤うひぃと、一つのメロンパンをやたら時間をかけてちびちび食べる馬鹿、もとい夏野。

 

 

 

「僕だけ紹介酷くないっすかねぇ?」

 

「何の話だ。」

 

「や、何だか失礼なことを考えられていたような気がして…」

 

「……おかしな奴だな。そんなだから馬鹿とか言われるんだぞ、俺に。」

 

「羽沢てめぇ!!」

 

 

 

こいつは勝手にくっついてきたからいいとして、だ。愚痴るつぐみも大概だけども、ひぃなら俺の喜びをわかってくれるはずだ。何せ同じゲームをプレイする仲間なんだ。何なら今回のピックアップも興味を持っているかもしれない。

 

 

 

「で?つぐちゃん怒らせるって、どれだけ騒いだんだよ?」

 

「いや別に……ヤッターってくらいだけど。」

 

「お前が「ヤッター」って喜んでるとこ、想像できないんだけど…。」

 

「ぜ、全然そんなんじゃなかったでしょ!!「うおおおお」って、びっくりしたんだからぁ!」

 

 

 

ひぃが適度に流し続けたからか、今度はこっちに猛抗議。おのれ妹め、夏野を篭絡するつもりか。

 

 

 

「なあ、ひぃ。」

 

「んー?」

 

「今回のガチャ、見たか?」

 

「うん、みたよ。」

 

 

 

口の周りをだらしなく汚す桃髪の幼馴染へ声をかける。別に夏野とつぐみが話し始めて居心地が悪くなったとかそういうわけじゃない。

俺の問いかけに、視線を料理から外すことなく答えるひぃ。

 

 

 

「どう思う?」

 

「んぅ、特に推しじゃなかったし、いいかなーって。」

 

「……そうかぁ。」

 

「○○、当たったんでしょ?」

 

 

 

フォークとスプーンを動かす手は止めず、淡々と答える彼女だが…どうしてそうも予想がつくのか。いや、話の流れ的には読めるのか…?

兎にも角にも、そっちが話を進める気ならありがたい。スムーズに事実が共有できるってもんだ。

 

 

 

「ああ!イチオシの、"ローゼちゃん"がなァ!!」

 

「あはっ、よかったねぇ。ちょっと喜びすぎな気もするけど…。」

 

 

 

早速アプリを起動し、入手したばかりのそのキャラクターを見せびらかす。

ローゼちゃん。今絶賛プレイ中のソーシャルゲーム、"ビジネス音楽祭"に於いて俺が最も推しているキャラクターの一人である。

中学生ながら抜群のルックスとあざとい程の可愛らしさで世の男性を虜にする…という設定の小悪魔系美少女だ。よく猫耳や尻尾を装着している様が描かれるなど、わかりやすく可愛いを体現した子なのだ。

その水着仕様が今回のイベントの目玉。いつもより更に増した肌色の面積と、腕の間でぎゅうと押しつぶされるたわわな……いや、これ以上は言うまい。

 

 

 

「こりゃテンション上がるだろ…??」

 

「女の子の私に聞かれてもなぁ。…あ、夏野くーん。」

 

「あん?なに、ひまりちゃん。」

 

「これ!……ちょっとスマホ貸してね?…これ、どう思う?」

 

「なにこれ。……何…かのキャラクター?」

 

「そうそう!可愛い??」

 

「んー……。」

 

 

 

俺のスマホを手に取り、夏野に見せるように突き出すひぃ。必然的につぐみもその画面をのぞき込む形になるわけだが…反応はそれぞれ。

ひぃは悪い顔でニヤつきながら二人の様子を見ているし、つぐみは眉を顰めて画面と俺を見比べている。一方で夏野は暫く唸った後に一言、「犯罪集がする」とか抜かしやがった。

 

 

 

「夏野てめえ。」

 

「○○、お前これで朝からつぐちゃんの安眠妨害したのかよ。最低だな?」

 

「いいじゃねえか!可愛いんだよ!!」

 

「いーや、つぐちゃんの方が断然可愛いね!!」

 

「それはお前の趣味だろうが!!」

 

「大体何だこのおぱ…おっぱい強調しまくった水着とポーズは!誘ってんのか!?最高かよ!!」

 

「おっぱい言うな。それとお前はどっちのサイドでキレてんだ。」

 

 

 

男ならわかるだろうコレの良さが。そりゃもうテンションも鰻登りって……いや待て、つぐみさんは何をそんなに怒っていらっしゃるんでしょうか?

 

 

 

「お兄ちゃんも夏野君も…最低…。」

 

「ヒョッ!?つ、つぐちゃん??ど、どどどうして、僕まで…?」

 

「だって…女の子のそんなところばっかり見てるの…不純だもん。」

 

「…ち、ちがうよ?僕はそういうのじゃなくて…えっと…脚、とか…」

 

「そ、それもえっちだもん!!」

 

「エェー」

 

 

 

大概こういう場合は夏野がヘイトを集めてくれるので傍観者でいられる。惚れた弱みもあるのだろうが、露骨に動揺するあたりまだまだ未熟な変態である。

 

 

 

「未熟な変態って何だ。」

 

「○○?」

 

「ああいや、何でもない。こっちの話だ。」

 

「ふうん。……○○、ってさ。」

 

「ん。」

 

 

 

この僅かな騒ぎの間に完食したらしいひぃが、おしぼりを広げつついつものトーンで問う。つぐみと夏野はまだ泥仕合を繰り広げているし、下手につついて変態扱いされるのもごめんだ。

ひぃに向き直り、そのままの流れでスマホを回収する。

 

 

 

「その……んむ、どれくらいが、んんむ、好きなの?」

 

「お前、喋るのか口拭くのかどっちかにしろよ。」

 

「だってぇ、時間がもったいないなーって。」

 

「……結果全然拭けてねえじゃねえか。」

 

 

 

一生懸命に手を動かしたところで、汚れている個所もわかっていないのだろう。まだ左の口の端にクリームが残っている。

俺の指摘に、口を噤み拭くことに集中する。

 

 

 

「…とれた?」

 

「全然。」

 

「む。…………どう??」

 

「全く。」

 

「くっ。…………これでどう??」

 

「はぁぁ。」

 

「あーんっ!!どこが汚れてるのー!?」

 

 

 

幼馴染連中の中では一番の女子力を誇るといってもいい…が、鏡を持ち歩くという思考には至らなかったようだ。

やはり脳まで脂肪が詰まっているのか?涙目になっているひぃからおしぼりを引ったくり、空いている手でその丸顔を引き寄せる。

 

 

 

「………ほら、これでとれたぞ。…ったく、鏡くらい持ち歩けってんだ。」

 

「………!!」

 

「なんだよ。綺麗になったっての。」

 

「…ぇ、あ、うん。…えと、ありがと。」

 

 

 

顎に添える形になっている俺の左手に自分の右手を重ね、呆けた様子で宙を見つめている。

一体なんだってそんな赤い顔で……あっ。

現状を客観的にみると、この構図かなり恥ずかしいことになってないか?吐息もかかりそうな至近距離で、顎に手を添え見つめ合う男女。

これって、そういうことをおっ始めるような……!!恐ろしくて周囲も見渡せない心持のまま、そっと手を放し距離を戻す。同時にひぃも何かに気付いたように、恥ずかしそうに頬を染めながら前のめりの姿勢を戻した。

 

 

 

「ええと………その、さっき、何か言おうとしてなかったか?」

 

「え!?あ、ああ!!うん!!その……~~~~ッ!?」

 

「…どうした?」

 

 

 

気を紛らわせるためにと振った話題だというのに、思い出しながら口を開いたであろうひぃはそのまま固まってしまう。

今度は何に思い当たったというのか。

 

 

 

「……あぅ、えっと…ろ、ローゼちゃんって、中学生にしてはその……大きい、よね?」

 

「……おっ…じゃない、胸か?」

 

「…んぅ。」

 

「まあ…偽乳部分もでかいっぽいけど。」

 

 

 

ローゼちゃんはキャラを確立するための影の努力は惜しまない、まさに頑張り屋さん。そこもまた良いのだが。

 

 

 

「その……○○、は。……大きい方が、好き…なの??」

 

 

 

胸が、ということだろうな。そう訊かれるとどうか……って!!

特に意味も無く視線を降ろしたのがまずかった。ひぃも全くの無意識だろうが、自分の身を抱くように腕組みした彼女の、とっても豊満なそれは制服の上からでもわかる変形を見せていて。

 

 

 

「……ッ。」

 

 

 

慌てて視界を…つまりは顔を横に背ける。些か勢いが良すぎて筋が音を立てて痛んだが…これ以上見るのは、毒と判断したのだ。

いやしかし今日のひぃはどうした。妙に艶めかしいというかその肉付きが目に付くというか。ローゼちゃんめ、なんてタイミングで来てしまったんだ。ほんとありがとう。

 

 

 

「……えっと…ね?私、蘭よりも、おっきいん…だよ?だからその……ど、どうかなー…って。」

 

 

 

何がだ!!何がなんだ上原ひまり!!

顔を背けた先で興味津々に光る四つの目――要は夏野とつぐみだが――と相見えたのもあって、俺の動揺はピークに達する。

頭の中が何故かマシュマロの画像で埋め尽くされる中、俺が言えたのは何ともか細い一言だけだった。

 

 

 

「さ、サイズよりも……感触?だよ…な?」

 

 

 

**

 

 

 

「もう!お兄ちゃんは全く、もう!!」

 

 

 

無論、つぐみに"えっち"扱いされたのは言うまでもない。夏野には「スクラム組もうぜ!」と謎の提案をされ、真っ赤な顔のひぃには「変なこと聞いてごめんね」と謝られてしまった。

でもあれはもう仕方のない流れだと思うんだ。誘導尋問が過ぎるもの。

ったく、どんな顔してひぃと喋ればいいんだこれから…。

 

 

 

「……ところでつぐみ?」

 

「なあに。」

 

「……お前その(くだり)、蘭に話した?」

 

「……??どうしてそんなこと…。」

 

「そうだよなぁ…。」

 

 

 

わざわざそんな訳の分からないことするわけがない。俺に対して本気で怒っている様子からもわかるが、妹はソッチ方面にあまり耐性がないらしいし。

はて、ではどうして――

 

 

 

「それよりも……ね?」

 

「あん?」

 

「その……私、すごーく怒ってるの。」

 

「だ、だからごめんて。そもそもあれは、キャラクターに託けてひぃが始めた話だし…」

 

「男の人って…やっぱりおっきい方が……いいのかな。」

 

「……つぐみ?」

 

 

 

身内が真剣に気にしだすとなると、どうにも居心地が悪い。今までだって興味がなかったわけではないし、俺も然程隠していたわけでもない。

だが、あまりオープンに体の問題を話すというのも気が引けてしまうのだ。

だがしかし、目の前でそう……自分のサイズを確認するようににぎにぎしている姿を見ると……いかん、血の繋がった兄妹相手に何を考えているのだ、俺は。

 

 

 

「あー…その、つぐみはまだ、成長途中だよな?」

 

「なっ……て、どうして知ってるの!」

 

「そりゃまあ……お前、寝るとき下着――」

 

「!!い、ぁ…え…えっち!!お兄ちゃんのえっち!!」

 

 

 

シングルサイズのベッド。逃げ場もない空間で、直にくっついてりゃそりゃわかるっての。

それはそうと、蘭から来たあのチャットは何だったんだろう。

 

 

『○○』

『サイズより感触が大事って』

『ほんとう?』

 

 

――ううむ。考えたくはないが、あの二人のどちらかが密告(チク)ったんだろうなぁ。

…ひぃはそれどころじゃなさそうだし…夏野かなぁ。なら、明日は半殺しかなぁ。

 

 

 

「それはそれで、楽しみだなぁ…」

 

「な、何言ってるのっ!!お兄ちゃんの馬鹿ぁ!!」

 

 

 

…違うんだぞ?つぐみ。

 

 

 




うへぇ…。




<今回の設定更新>

〇〇:親父には怒られるものの、つぐみの要望で夜は一緒に寝ている。
   胸と尻に関しては並々ならぬこだわりがあるとか。
   最近はひまりと共通の音ゲーに熱中している。
   ロリコ…若い子が好き。

つぐみ:えっちなことは許しません。
    寝る時は素肌にキャミソール、その上に着ぐるみパジャマ。

夏野:ご存知歩くサンドバッグ。
   脚フェチ。

ひまり:食べ方にスピード感を感じる。
    主食をおかずに主食を食べるスタイルで、その手は居合の達人にも見えぬ
    程の速さで乱舞する。
    下ネタにはそこそこの耐性があるものの、少女漫画のようなシーンには弱
    い。

蘭:つぐみの愚痴のせいで知ってしまった。
  一安心らしい。
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